好きで好きで好きで好きで愛しています
「や、やめてくれ」
手足を縛られ椅子にくくりつけられ身動きがひとつ取れない少年。その声は震えている。
「何を言ってるの?あ、もしかして愛を求めているのね」
「何を言って……」
「ごめんなさいね、私の悪い癖。ふふっ。あなたの反応を見ているとどうしても意地悪したくなっちゃうの。でもあなたにやめてくれって言われたら大人しくそうするね。私も好き///……やっぱり少し恥ずかしい。でも愛を伝えないとあなたは寂しくなっちゃうものね。だからやめてくれって言ったのよね?早く愛を伝えてくれと。可愛い。そういう所も好きです。……やっぱり気恥しいよ///」
早口で少女はそう言った。唖然として言葉が出ない。身に覚えのない少女にいったい何を言われていたのだろうか。
「あなたと話していると体が火照っちゃう。あ、今の勘違いしたでしょー?もう、変態。でもそういう意味でもあるけど……。でも今の恥ずかしくなっちゃうって意味で……でもしたくないわけじゃないからね?」
そう言うと彼女は体を少年に向き合わせ膝の上に座り体重を預ける。
「重くない?これでもあなたが負担にならないように体重調整したんだよ?理想体重だと思うんだけどどうかな??余計に好きになっちゃった?それなら好きって言ってくれてもいいのに。恥ずかしがり屋さんなんだから。もぉ」
そう言うと可愛らしげに不貞腐れる。これが普通の光景だったらだ。少年からしたら手足を縛られ身動き取れない状態にされ知らない愛を伝えられ今となっては抱きしめられている。湧き上がる感情は恐怖だ。
「ねぇキスしよ?」
綺麗で長い黒髪の少女が甘えてくる。ただそんな簡単に知らない人とする訳にはいかないのだ。
「ご、ごめん。君とはできない」
少女の目が見開かれる。その黒に染った目に写っている自分の姿がとても情けない。
「何かあったの?もしかして私じゃ不満?」
その黒い目に写っていたはずの自分の姿が見えなくなる。その代わりに写りだしたのは怒りという感情。
「もしかしてほかの女なの?ほかの女がいいからそう言ってるの?嫌なわけないよね?私が好きだもんね?何が嫌なの?あなたのためにあなたのことを考えてあなたのことをこんなにも想いあなたのためにひたすら努力してあなたのために準備を重ねてあなたのために魂を悪魔に売るような思いでッ!」
そう言って彼女が懐からカッターを取り出す。カチッカチッとゆっくりと愛を込めるように刃をだしていく。
「やっぱりだめだったのかな?もうこれ以上あなたがおかしくなる前に。ごめんね。どんな風になっても好きだから。私もすぐに後を追うから。すこし苦しい思いさせちゃうけどあとは楽だから。楽しいはずだから。一緒に永遠をすごそうね///」
妙に冷静だった。たしかに恐怖心は募るばかりでむしろ冷静なのがおかしいぐらいだ。普通なら発狂しててもおかしくないだろう。ただ、今は生命本能が勝っていた。もちろん警報のランプは鳴りっぱなしだ。危ないと。だからこそ行動を取るべきだと思った。
「んっ」
唇が重なり色っぽい声が彼女から漏れる。その声に魂を持ってかれるような思いをしながらも続ける。そして長い長いキスを終えると彼女が真っ赤にした顔をこちらへ向け口を開く。
「あの、その、ごめんなさい。私ったらてっきり。冗談だったなんて。やっぱりそうよね。私たちは愛し合っているのに私ったら勘違いで。でもあなたも冗談が過ぎます。でも嬉しかった。好きです。好きで好きで好きで好きで愛しています。あの、その、もっとしよ??」
そう言うとさらに唇を重ねる。魂が持ってかれるような感覚に眉をしかめながらもただひたすらにキスを続ける。そして相手の舌が入ってくる。それに合わせるように舌と舌を合わせ心地良さを感じる。人間なのだ。恐怖心があっても気持ちいいものはそう思ってしまうもんなのだ。
「顔がとろけてるよ?ふふっ。興奮しちゃった?その、私はもう興奮してるけどもしあなたがしたいならいいんだよ?あ、でも身動き出来ないよね。じゃあ私がしてあげる。今日は私に全部任せて??あなたの魂が受けいれてくれたら私も解くから。それまではもうちょっと我慢してね?」
見抜かれていた。ただもう、止まれないところまで来ていた。そのままされるがままに快楽を感じていく。…………魂はあっさりと彼女という異物を受け入れていく。
読んでいただきありがとうございました!もしお時間がありましたら他の作品も読んで頂けたらと思います!!




