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世界最強の魔王ですが誰も討伐しにきてくれないので、勇者育成機関に潜入することにしました。  作者: 両道 渡
第1章 『末期の雫編』

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第41話「元老院会議」

 エルベリア帝国の首都アグレア。

 南方領のミルディアナからちょうど北に位置するその大都市の一角に、元老院会議を行なうための豪奢ごうしゃな施設がある。

 幾重もの魔術結界を張り、誰が襲ってきても戦う力を持たない元老院議員を傷つけることさえ出来ない警備体制を敷いていた。


 そこに集まった元老院議員たちはおよそ20名弱。

 そのいずれもが公爵家を筆頭とした名門の家柄の者ばかりである。

 彼らは一様に不機嫌な様子を見せながら長テーブルに連なっていた。


 それに構うことなく、帝国軍ミルディアナ領総司令官リューディオ・ランベールが口を開いた。


「えー。今回はお忙しいところをお集まり頂き、誠にありがとうございます」

「どういうことなのだ、ランベール中将。元老院会議の予定は遅くとも1ヵ月前には知らせるべきであろうが。それを僅か7日で召集をかけるだなどと常軌を逸しておるわ。冗談はその長い耳だけにしておけ」


 下卑た笑い声が上がるが、リューディオは涼しい顔で言った。


「申し訳ございません。しかし此度は書簡にしたためた通り、緊急の会議となります。どうかご容赦願いたい」

「ふん、ミルディアナ領が化け物たちに襲われたというあの件か」

「左様。既にご存じの方が大半でしょうが、事の経緯を説明させて頂きます」


 天魔がミルディアナ領を襲撃した事件から約半月後。

 リューディオは帝国の中でも最も位の高い元老院議員だけを集めて、緊急の会議を開いたのだ。


 本来ならばこの場にはエルベリア帝国の皇帝と宰相も参加するところなのだが、皇帝の体調が芳しくない上に緊急の会議とあっては公務に差し支えるため不在となっている。

 そしてリューディオが帝国で起こっていたエルフの失踪事件の顛末を語り終えると、早速野次が飛んできた。


「その天魔とやらの襲撃で多数の犠牲者が出たようだな? ミルディアナ軍の力も地に堕ちたものよ」


 違いないという言葉が続く中、座椅子に腰かけていた1人のエルフの女性が口を開いた。


「まったくその通り。ミルディアナ軍はまったく使い物にもならなかった。何故なら、汝らのようにエルフを蔑視する者が多い故。反エルフ主義者がのさばった結果に他ならぬ」


 ツェフテ・アリア王国のエインラーナ・キルフィニスカ女王が言ったことに貴族たちは反感の声を上げる。


「エルフを蔑視している? とんでもない。我らは既に同盟関係にありましょう」

「そうですとも。エルフに爵位を与え、エルフに将校の位を与え、エルフの奴隷を廃止させ――エルフにとっては至れり尽くせりの優遇をしていると自負しておりますが」


 にこにことした笑みを浮かべてくる貴族たちを見つめるエインラーナの瞳は氷のように冷たい。

 彼女は目の前にいる人物の心の中を読んでしまう。エルフの王族のみに伝わる特性のようなもので貴族の中でもそれを知っている者は多い。

 だが、彼女のそれはもはや本音を察するだとかいう範疇のものではない。その者が何を考えているのか、鮮明に理解することが出来るのだ。


「いかにも優遇されているな。だが、そのせいで汝らの逆恨みは後が絶えぬ。このままではいずれ同盟関係に綻びが生じてしまっても無理からぬこと」


 耳を疑うような発言に元老院議員たちは激怒した。


「なっ、何を言うか!? 我らがどれほどエルフに譲歩したかも知らずに!!」

「逆恨みだと!? 馬鹿を言え! この明らかな優遇制度は我ら人間の誇りを侮辱しているものだ! このエルベリア帝国は我ら人間のものであって貴様らのものではないのだぞ!!」


 そろそろ止めるべきか。

 リューディオが口を開こうとした時、会議室の一番奥。椅子には座らず、壁に背を預けて立っていた長身の男が言った。


「鎮まられよ」


 腹の底に響くような威厳のある言葉に、誰もがそちらへと目を向ける。

 元老院議員たちは口々に言った。


「クロード・デュラス将軍……!」

「戦の大英雄……!」


 クロードと呼ばれたその男はエルベリア帝国軍の証でもある黒い鎧を身に纏っていた。

 金髪に碧眼。よわいは30にも満たず、まるで彫刻をそのまま人間にしたかのように整った顔立ちをしている。


 しかし、まだ若さを失っていないその顔は無表情に近く、近づきがたい雰囲気に満ちていた。

 彼はその鋭い瞳をエインラーナへと向けた。


「エインラーナ・キルフィニスカ女王陛下。此度の議題は差別問題の追及に非ず。余計な発言は会議の妨げとなる。厳に慎まれよ」

「……そうだな。失礼した」


「ランベール中将。経緯の説明を再開しろ」

「はっ」


 リューディオはすぐに応じた。

 事件の概要をすべて説明し終えた時、元老院議員の誰もが顔色を驚愕に染めていた。


「――高等魔法院の地下で、緑色の体表を持つ奇怪な生物を発見しました。生存していたのは2体のみ。先にご説明申し上げた通りこの生物が末期の雫を造り上げていたのです」

「高等魔法院でそのようなことが……!?」


「にわかには信じられん! その生物とやらを見せてみろ!」

「無理です。体長は5メートル近く。どうやってこの場まで運んでくればよろしいのでしょうか。ただでさえ危険な化け物だというのに」


 元老院議員たちの誰もが信じられないといった様子で動揺を示していた。

 無理もないだろう。ここにいる者のほとんどは恐らくミラの血潮事件のことすら知らない。あの事件はそれほどまでに隠匿され、風化された事件なのだ。

 事件風化の『最大の要因ともなった』エインラーナが付け加える。


「妾も事件の後、その生物を間近で見た。人間には興味を持たないが、エルフである妾を見た瞬間取って喰らおうという動きを見せてきたぞ。魔法陣の上から動けない故、何事も起こらなかったがな」

「そ、その生物とは一体何なのです!? 普通の生き物ではおよそ考えられませんぞ!」


「それは妾の方が問いたいこと。だが、推測が正しければ恐らくは彼の魔術大国キアロ・ディルーナ王国で造られた魔導生物であろうな。『末期の雫を排出するためだけ』に生きているその姿は正に生物兵器そのもの」

「魔導生物……! 帝国ではもうあの生物たちは導入されてはおらんが……」


 議員の1人が呟くと、リューディオも頷いた。


「ええ。魔導生物は少なくともここ300年以上は帝国に輸入されてはいません。しかもアレを製造する過程では様々な非人道的行為が行なわれています。もはや彼の国との国交も薄れ、条文こそ形骸化してしまいましたが、300年前には時の皇帝陛下が輸入を禁ずると明言していますね」


「では、密かにそのような生物が持ち込まれたというわけか。過去に同じ特徴を持った魔導生物の輸入記録はあるのか?」

「私は軍部へと配属された後、過去の様々な文献を調べました。当然、過去に魔術大国との間で『正式に』取引された魔導生物のリストも把握していますが、そのような特徴を持つものは存在しませんでした」


 リューディオは更に続ける。


「件のミリアム・ステイシス少尉は今回の黒幕と目されるギスランに憑依されていましたが、彼女自体に魔術大国との繋がりは確認できませんでした。ですが、今回のエルフ失踪事件はミルディアナ以外でも起きている。それはつまり、他の領地においても彼の魔導生物が密かに飼われている可能性があるということになります」

「そ、そんな馬鹿な!!」


「今もなお魔術大国との繋がりが深い者がいるとでも言うのか!? その失踪事件はいつどこで起きているんだ? 徹底的に調べ上げろ!」

「もちろんそうさせて頂くつもりですが、かなりの時間がかかるものと予想されます」


 エインラーナがダメ押しをする。


「現在、貴国はルーガル王国への支援の準備をしているな。北方と東方の2大軍隊が総出で行なうものと聞き及んでいる。しばらくはまともな調査が行なえるとは思えぬ」


 すぐに元老院議員たちが答える。


「獣人たちの相手もまたキアロ・ディルーナ王国ですな……。此度の件もまた彼の国が関係しているとすれば、尚更ルーガルへの肩入れも進もうというもの」

「帝国の調査はもとより、一刻も早く2国間の戦に介入し速やかにキアロ・ディルーナ王国を制圧。後に、そのギスランとやらのことも調べ上げればよろしいのでは?」

「うむ、それはそうだ。特に今回は北方と東方の2大元帥の大軍勢が揃っておる。ゼナンとの戦で疲弊したとは言え、キアロをとす程度であればすぐにでも出来るはず」


 結局は戦の話にすり替わるのか。エインラーナはそう言いたげな表情のまま腕を組んで溜息を吐いた。

 エルベリア帝国がルーガル王国に肩入れする理由は、虐げられる獣人の保護――という大義名分を掲げてはいるものの実際には利権が深く絡んでいる。

 元老院議員たちの関心事はもはや終焉したエルフたちの失踪から、早くも次の戦へと移り変わってしまった。


 というよりも、高等魔法院の不祥事については禁忌だ。不用意に何か言ってしまえば自分の首がどうなるかわかったものではない。

 それほどにあの機関については機密性が高く、不可侵的なのだ。軍部のみならず元老院、そして皇帝の許可がなければ、いかなる理由があろうともその機密に触れようとすることは許されない。

 それがたとえ、軍部の総司令官であったとしても。


 その時、黙して聞いていたクロード・デュラス将軍が言った。


「ランベール中将。いくつか訊きたい」

「はっ。どのようなことでも」


「此度のエルフ失踪事件は終結したと言えるか」

「恐らくは。もう1度同じようなことを考える輩が出てきてもおかしくはありませんが、現在の情勢を考えると彼の魔術大国がギスランと同等の力を持つ魔術師を帝国に送る理由は薄い。よって、しばらくは何もないと考えても差し支えないでしょう」


「高等魔法院について、貴公はどう考える」

「……早急に陛下にお伺いを立て、一刻も早く内部の腐敗を止めねばと。あくまでも私見ですが」


 自分の半分の年齢にも満たない相手に対して、リューディオは少しだけ気圧される。

 先のゼナン竜王国との戦では自分を含め5人の英雄と呼ばれる者たちがいた。


 その中でも最年少でありながら他の者の追随を許さず、単独で最前線へと斬り込み、たった1度の敗戦もなく、数多くの強大な竜族や竜人たちを相手にかすり傷1つ負わなかった戦の救世主。

 そして創造の大女神オルフェリアが造ったとされる『神剣しんけん』を振るうことが出来るたった1人の選ばれし者。


 故に大英雄と称される男、それこそがクロード・デュラス将軍その人だった。

 公爵位であり、階級はその年齢では異例の大将。あと少しばかり歳を重ねていれば間違いなく元帥の地位になっていたであろう。


 リューディオが知る中でも間違いなく最強の人物である。

 歴戦の猛者どころの話ではない。もはや戦神に匹敵する彼の眼光の鋭さには、リューディオでさえ身震いせずにはいられないのだ。


 それはもちろんリューディオだけではなかった。

 この場にクロードの眼光を目の前にして恐怖心を覚えない者などいるわけがない。

 誰もが若造に過ぎないはずの彼の発言を恐れ、身を硬くしている。


「では、最後に問おう。この場にそのギスランという輩と共謀した者はいるか」


 一気にその場がざわついた。

 クロードは無表情を崩さず、リューディオを睨みつけている。


 ミルディアナ領総司令官は緊張感を覚えながらも、エルフの女王へと目配せをする。

 彼女が肩を竦めたのを見届けてから、ゆっくりと頭を横に振った。


「完全に否定出来るとまでは言いませんが、いないと思われます」

「そうか。私からは以上だ」


 それだけ告げて、クロードはまた口を閉ざした。

 その後の元老院会議は粛々と進められ、閉幕となった。




 帝都アグレアの元老院会議場。

 既に人気ひとけがなくなった会場の玄関に、その男は立っていた。

 彼はこちらに気付くなり、久しぶりに顔を合わせる友人に対して笑いかけることさえしないまま言った。


「リューディオ。元老院会議の場では話せなかったことの続きをするぞ」

「……貴方のその性急さはどうにかならないものですか、クロード。たまには談笑するくらいの時間をですね」

「時間が惜しい。私も西方の総司令官の座につく者として、あまり長くこの場にいられるわけではない」


 公共の場以外では、共に姓ではなく名前で呼び合う。

 リューディオとクロードは旧知の仲だった。戦友であり親友とすら言えるだろう。

 そんな2人を見て、エルフの現女王は笑った。


「リューディオの親友と聞いてはいたが、本当に堅物なのだな。汝もへらへらしていないで、少しはこの大英雄殿を見習ったらどうだ?」

「私はせめて愛想良くいたいものです。ただでさえ嫌われている身ですからね」


 苦笑しながらもリューディオは本題へと入ることにした。


「ギスランと背後にいる者の話、ですね」

「そうだ。お前の話した事実と照らし合わせれば、帝国軍内部に協力者がいたとしてもギスランとやらの単独での犯行が不可能なのは言うまでもない。そもそも、お前はあの場でどこまで明かした? まだ言っていないことがあるのだろう?」


 エインラーナは口を挟まずに事の成り行きを見守っている。

 ――100年前のエルベリア帝国とツェフテ・アリア王国の同盟関係締結時。

 表向きには一切発表されていない出来事があった。


 それは『エルベリア帝国とツェフテアリア王国の両国において、ミラの血潮事件に関するすべての記録を破棄すること』だった。

 100年前の時点でほとんどの者はその存在すら知らなかった事件の必要以上の隠匿が何故必要だったのか。


 帝国とツェフテ・アリアの同盟締結は、人間とエルフの融和へと繋がる。

 両者の関係を少しでも近付け、親愛なる隣人とするためには『エルフを使った儀式を行なえば、極めて精度の高い魔力増幅効果が得られるナニカを造り出すことが出来る』という事実を公に知られることだけは何としてでも避けなければならなかったからだ。


 この話を初めて聞いた時、リューディオは憤ったものだった。

 黒幕の正体すら掴めなかった上、起こった事件そのものの隠蔽を行なえば再び何者かが同じようなことをしでかす可能性を捨て切れなかったからだ。

 そして図らずも、その杞憂であれば良かったことがとある者の手によって現実となった。リューディオはそれを告げる。


「『女神』と呼ばれる何かが事件に関与しています」

「何だ、それは。何かの比喩か?」

「わかりません。ですから、元老院会議の場で発言するのは控えました。余計なことを言って、私利私欲のことしか頭にないご老人方の脳味噌を混乱させるわけにもいきませんからね」


「……キルフィニスカ女王陛下には、その女神とやらに心当たりは」

「わからぬよ。500年前はどれだけ調べ上げても何もわからず、今回になってようやく黒幕の尻尾を捕まえたと思えばそのまま尾が切れたようなものだ」


「では、その女神とやらの情報はどこで掴んだのだ、リューディオ」

「精神が崩壊しかかっていたギスランが度々口にしていた言葉です。彼は女神に固執していたと。……そして」


 リューディオは続きを告げた。


「此度の失踪事件の解明に尽力してくれた頼もしい我が軍学校の生徒がもたらしてくれた情報でもあります。特に――『彼』がいなければ、今頃私はこの世にいなかったでしょうね」

「それは何者だ」


「今年、軍学校に入学を果たしたばかりの少年。名はテオドール。軍学校で3種の入学試験すべてで首席の座となり、その後に私が特待生のみに課していた特別な試験を瞬く間に解き明かした逸材です」

「大変優秀な男だぞ。妾は帝国の軍学校の歴史にそこまで詳しくはないが、500年前の勇者と並ぶ腕前を持つとされるあやつとギスランが話していたのを見てつくづく感じさせられた。歴史上アレに並び立つような人間はいなかったであろうとな」


 言外に500年前の勇者以上であったと言うエインラーナ。


「仰る通りで。彼がいてくれて助かりました」

「その男は何者だ。それほどの腕前を持つのであれば、入学以前から一目置かれていたのではないか」

「調査によると、どうやら帝国の西方領――しかも、貴方の守護するグランデンからやってきた、とのことですが?」


 皮肉を込めたように言うリューディオに向けて、クロードは眉根をしかめた。


「馬鹿げたことを言うな。そんな人間がいれば必ずや噂になる。私はおろか、軍部の耳に入らぬはずがない」

「でしょうねぇ。いやまったく、不思議な少年としか言いようがないですよ。しかも彼は面白いことを言っていました。『どうすれば勇者になれるのか?』と」


「……勇者だと?」

「ええ。最後にこの帝国よりテネブラエの魔族殲滅に向かった勇者は500年前のレナさまです。彼女は結局、帰ってこなかった。そしてテネブラエから戦が仕掛けられるようなこともなくなっていき――今となっては彼の国に何度も勇者が派遣され、そのことごとくが帰還することが叶わなかったことを知る者すらいない」


 愉快そうに告げるリューディオは更に続けた。


「しかも、彼はこうも言っていました。魔族に対して恨みはないのか、と。当然他の生徒たちの反応は薄く、それを知った彼はえらくがっかりとした様子でしたよ。まるで人間が魔族を恨んでいるのは当たり前とでも言いたげでした」

「くふふ! それではまるで今までどこかに軟禁でもされていて、つい最近初めて外に出て現実を知ったような素振りだな。実に面白い」


 エインラーナもまた面白そうに笑う。


「……テネブラエ魔族国か」


 そう呟いて、クロードは遥か西方の地を眺める。


「クロード、貴方は彼の国については何も知らないのでしょう?」

「ああ。国境付近で小競り合いがあったのも数十年前の話だ。以降はそのような事態には一度も陥っていない。然るに私はずっとこう考えていた。魔族の中でも最上位に値する魔王と呼ばれた者たちは今もなお生きており、強い統率力を以てして眷属たちを厳しく律しているのではないかとな」


「私も魔族のことについては文献で得た知識しかありません。それもせいぜい数百年前のものです。魔王――最上位の魔神たちはそれよりも遥か昔、このエルベリア帝国建国以前から存在していたとも言われている。途方もない話ですよ」

「此度の失踪事件、あるいは魔族が関わっている可能性も捨て切れぬのではあるまいか」


 リューディオは否定しなかった。というよりも出来なかった。

 テネブラエ魔族国はこの帝国と同等の面積を持つ大国であり、ほとんどの魔族たちがそこで暮らしている。


 そしてその頂点に立つ魔王と呼ばれる存在が7柱いて、彼らはとても強大な力を有している――いくら文献を漁っても出てくる情報はその程度。

 彼らが他の種族に対してどのような感情を抱いているのかもわからない。中には特に凶悪な思想を持つ魔神もいるらしいが、詳しいことは何もわかっていない。


「魔族に関しては、あまり気にしなくても良いと思うがな」


 不意にそう言ったのはエインラーナだった。


「キルフィニスカ女王陛下。何か根拠があっての発言か?」

「ふむ……根拠か。特にはないな。妾の勘だ」


 含みを持たせたような言い回しだったが、金髪の将はそれ以上の言及はしなかった。


「女王陛下の勘の強さは馬鹿には出来ませんからね。今回は当たっていることを願っておきましょう。今の帝国の情勢を鑑みれば、今やどうやって暮らしているのかすらわからない魔族に対してまで警戒を持つほどの余裕はありませんから」


 その後、将校2名とエルフの女王はしばらく会話を交わした後に解散することとなった。

今日の夜にエピローグを投稿します。

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[気になる点] 魔神だとか魔王だとか言ってるがどっち?!魔王なの?!魔神なの?!
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