第35話「召喚術式発動」
僕は長く続く地下廊でフードを目深に被ったモノを見た。
ローブに覆われた全身は華奢で、容姿や性別も曖昧だ。しかしそれは普通に見ればの話であって、仮にも魔神の力が宿る僕からすればそれは一目で女だとわかった。
しかも人間じゃない。この感覚はエルフのものだ。
「そのフードが邪魔だね」
僕は彼女が被っていたフードに軽い風迅術式をかけて、無理やり捲り上げた。
フードの中には、長い耳をした美しい女性のエルフの顔があった。
彼女は無表情というよりも、どこか虚ろな雰囲気で僕を見つめている。まるで心ここにあらずといった具合に。
「……み、ミリアム少尉?」
そう呟いたのはリズだった。
ミリアム。確かラティス少尉を襲って姿を消した女性のエルフだったか。
「う、嘘。何でキミが……え……?」
「リズ。彼女は確かにミリアムだけど、ミリアムじゃないんだ」
「え? え? どういうこと……?」
「『中身』が違う――というより、何か別のものがミリアムの中に憑依している感じがするね」
すると、ミリアムと呼ばれたエルフは初めて口を開いた。
「私は……ミリアム・ステイシス少尉。帝国軍南方領の」
男と女の混じったような声がひどく耳障りだ。
「それは知っているよ。僕が知りたいのはミリアムのことじゃない。ギスラン、君のことだ」
「……お前は。お前は。何だ。何者だ。どこまで。何を知っている。どうやって。私を」
「やっぱり精神に異常をきたしているみたいだね。無理もない。何故なら、500年前に起こったとされるミラの血潮事件の犯人もまた君だからだ」
その時、リズの傍で横たわっていた眼鏡をかけたエルフが目を覚ました。
ぼんやりとした表情で辺りを見回して、ローブを羽織ったエルフの姿を見てぎょっとした顔になった。
「み、ミリアム!? あんた、無事だったの!?」
しかしミリアム少尉は答えない。彼女は親友の姿を見ようともしないまま僕のことを見つめていた。
「ギスラン。君はただの人間だ。出身は恐らく、あの魔術大国として名高いキアロ・ディルーナ王国。あの国の中でもかなり高名な魔術師だったはず。君の使う術式は魔術の域を超えた禁術。それを易々と使える人間はほとんどいないからね」
「……」
「ぎ、ギスラン? え? 彼女はミリアム、で……」
「ラティス少尉。テオくんの言うことを聞いてて」
ここから先はあまり他の者に聞かれたくはないんだけど、まあ仕方がない。
「そして君は何かの理由で自分の身体を捨て去り、魂魄を他の身体に憑依させる術式に成功した。そしてどれだけ長い時間かは知らないけど、他人の身体の中に潜んで暮らしてきたんだろうね。でも他人の身体は所詮は他人のもの。君はその負荷に耐えられず、徐々に精神を摩耗させていった」
僕は続ける。
「そんな時、類稀なる才能を持つ君を『誰かが見出した』。君の才能に気が付いた者がいたんだ。それが君の言う『女神』を指すのかどうかまではわからないけど」
ギスランはやはり微動だにしない。
完全に自意識がないわけはない。恐らくは用心深くこちらの様子を窺っているだけ。
「その人は君に言ったんだろうね。『エルフを使って末期の雫を造り上げろ』と」
「女神は私のすべてなり」
不気味な声でそれだけ言う。
「うん。だから君は帝国にやってきたんだ。恐らくは美を求めてエルフの奴隷を多数所持していたミラ・バルザックの話を聞きつけて。それがミラの血潮事件の発端」
「女神は私のすべてなり」
「そう、すべては女神さまのため。キアロ・ディルーナ王国で研究されていた魔力増幅機能を持つ魔導生物にエルフを喰わせれば、その瞳から一滴の紅い涙が流れ落ちる。それを末期の雫という」
「女神は私のすべてなり」
「そして末期の雫を使って大規模な禁術……いや、もうその領域も越えている。これは魔法だ。末期の雫の魔力増幅効果は恐らく様々な場面で応用が利く。それを召喚術式で用いて、君は天蓋から天使を強引に召喚させた。それが人間やエルフを襲ったとされる天魔の正体」
僕はそう言いながらも地下廊に張り巡らされた術式を見る。
晦冥術式の系譜と思われるそれは、恐らくエルフにだけ作用する極めて強力な術式だ。
ギスランの意思1つだけでこの場にいるエルフはどれだけの力を持っていても、一瞬で無力化されてしまう。リューディオ学長レベルなら話は変わってくるかもしれないけど。
500年前に3000ものエルフが何も出来ずに末期の雫にされてしまった原因も恐らくはこれだろう。
ただ、少し疑問が残る。
「女神は、私のすべて……」
『これ』の力は強い。実際に術式が発動して、その凄まじい力を振るっているのもよくわかる。
だけど、それだけだ。
人間としては凄まじい才能を持っていたのは間違いないけど、僕たちのような魔族には到底及ばない。
娘に抱かれているエルフの女王と比べても、それほどの差異は感じられない。
『この程度の存在』がエルフたちの魔力耐性を突破して強引にねじ伏せることなど普通は出来ない。
そして、天蓋に住むとされる天使たちを強制的に召喚出来る術式ならなおさらのこと。そこまで高度な術式を編み出せるはずがないんだ。
天使たちは極めて強力な魔力耐性を持っている。エルフや竜族にも優るような圧倒的な耐性だ。そんな者たちを纏めて召喚した挙句、人間やエルフだけを襲うように仕向ける術式を少なくとも僕は知らない。
テネブラエには、魔力だけなら全力の僕と同等くらいの素質を持つ者もいる。
そんな彼らでも天使を自在に操るような術式などは知らないだろう。
となれば、是非ともその術式の真意を見極めたい。
「ねえ、ギスラン。君のエルフを自在に操る力の源はなんなんだい?」
「……女神は、私のすべてなり」
「話にならないな。少し『正気』に戻ろうか?」
僕はその場から駆け、まばたき1つの間も与えずにギスランの前に迫る。
精神も崩壊しかけていれば、反応も鈍い。やはり中身はただの人間か。
そう思いながら、彼女の頭を鷲掴みにした。
「ま……待って、待ってくださ……ミリアムを、殺さな、いで……」
地面に伏したラティスが懇願の声を上げてくる。
それには構わず、僕は術式を発動させた。
彼女の頭を掴んだ腕から闇色の魔力が溢れ出し、ミリアムの身体の中に入り込んだギスランの魂へと流し込む。
これは混濁した精神や記憶を強引に元の状態に戻す術式だ。晦冥術式は相手を洗脳することや、それを解除することにも使える。
禁術と同程度の晦冥術式から凄まじい魔力を流されて、ギスランは呻いた。
瞬間、ギスランの中にあった記憶のほんの一部が僕の中に流れ込んでくる。
――不敵に笑う貴族の老女。
――緑色の体表を持つ一つ目の不気味な化け物。
――敵意に満ちた眼差しでこちらを見つめてくる男。彼が手にしていた刃に身体が貫かれる。
――紅い輝き。刃に貫かれた身体から有り得ないほどの魔力が溢れ出し、天空に禍々しい魔法陣が現れ、その中から白い翼を持った者たちが――。
なるほど。これがミラの血潮事件の断片的な記憶か。
最初の老女は恐らくミラ・バルザックだろう。そして次に現れた化け物が末期の雫に関する魔導生物。
次の記憶はギスランがミラに憑依していた時のもの。
そして彼女の身体が死んだ時、術式が発動した。これが恐らく召喚術式の発動条件に関わるものだ。
そう納得した時、もう1つだけ不思議な光景が僕の脳裏に刻まれた。
――若い女がいた。逆光を浴びていてその顔はよく見えないが、彼女は柔らかな声で言う。
『浄化をしましょう。この世界のすべてを掃い、清めるのです。光に満ち溢れた世界は私たちだけのもの』
とても穏やかで聖女のような声音だった。ギスランはその場で跪き、頭を垂れた。その頭上からもう一度、優しい声がする。
『大丈夫です、私の言った通りのことをすれば何もかもが上手くいく』
『お、おお……女神、よ……女神よ。すべては貴女さまのもの。この身は、貴女さまのためにございまする』
『浄化をしましょう。ねえ、ギスラン?』
その言葉を最後まで聞いたと同時に僕の手は払いのけられた。
目の前にいるエルフの女の身体をした者は、さっきまでとは比べものにならないほどはっきりとした声で言った。
「貴様……私に何をした」
「狂いかけていた君の精神を修復したんだ。その時に500年前の記憶が流れ込んできたよ。ミラの血潮事件の真実も、末期の雫の造り方も、天魔の召喚のやり方もわかった。でも、どうしてもわからないものが視えた」
敵意を剥き出しにしてくるギスランを見つめながら続ける。
「最後にとても不思議な雰囲気の女性の姿が見えた。アレは誰だい?」
「貴様……貴様貴様、よくもよくもあのお方を……!!」
「神秘的な感じだったね。まるで聖王国の聖女を目前にしたかのような雰囲気の人だったよ」
「黙れ、黙れ黙れ!! 貴様如きがあのお方を語るな!!」
「彼女が君の言う女神、なのかな? 面白いね、詳しく聞かせてくれないかな?」
ギスランの身体から魔力が噴出した。すぐに僕に向かって放たれる。
炎と雷と闇。それらが複雑に入り組んだような形をした魔力の鏃が僕を貫こうとしてその場で消え去った。
「な、何故、何故効かぬ……!」
「本気で僕を殺したいなら禁術以上の複合術式を使いなよ。まあ、無理だろうけどね。その身体じゃもうこれ以上他の術式を使うことに耐えられないんでしょ?」
「くっ……!!」
ギスランが発動しているエルフをねじ伏せる術式はミリアムの身体に強い負荷を与えているはず。
それだけでも辛いはずなのに、更に僕を殺せるような術式を扱うことなんて出来るはずがない。
ギスランがエインラーナ女王陛下を見やった。彼女の身体に憑依するつもりなんだろうけどそれもさせない。
僕は一瞬の間に魔力で編み出したナイフをギスランの胸元に投げつけた。それが彼女の身体の中に深々と突き刺さって傷口を作った瞬間に消え去る。多量の血が溢れ出した。
「み、ミリアム……!!」
「さて、君たちにはこれから起こることは見てほしくないから、少し眠っていてくれるかい」
僕はその場でぱちりと指を鳴らした。
僕の後方から凄まじい魔力の波動が溢れ、瞬く間にリズと女王陛下とラティスを包み込む。
ただでさえギスランの術式のせいで弱っていた彼女らは一瞬で気を失って動かなくなった。
「ありがとう、レナ」
「何のこれしきのこと。もったいなきお言葉です」
「彼女たちに危害が加わらないように見守っておいてくれるかい」
「仰せのままに」
姿を現したメイド服姿のレナは優雅にお辞儀をしてみせた。
あらかじめ姿を消していた彼女を同行させていて正解だった。
ラティスやリズはともかく、エインラーナ女王陛下まで眠らせるのは今の僕の魔力では無理だから。
「貴様、貴様らは……何者だ……!」
「まあ、いいか。教えても」
僕は魔術を通して遠く離れた場所から誰かがこの場を盗み見ていないことを察して、笑った。
「僕は――いや、私の名はルシファー。テネブラエ魔族国を支える7柱の魔神のうちが1柱。魔王と言った方がわかりやすいか?」
「テネブラエ……ま、魔族……だと!!」
「故あって今はこのような成りをしている。人間のふりを続けるのはなかなか楽しいものだな、ギスランとやら。数々の人間やエルフの身体を移り住んできたお前にならこの気持ちもわかるのではないか?」
「ふ……ふざけるなぁッ!!」
再びいくつもの攻性術式が放たれる。
それらはすべて私の眼前で弾かれた。
「無理はするな、ギスラン。そのままでは身体が耐えられないと言っただろう」
「我が至高の女神のお姿を魔神如きが覗き見るなど……!!」
「見えてしまったものは仕方がない。今はそのような些事などどうでもいい。私の質問に答えてもらおうか」
「……ぐぅっ! くぅぅっ!!」
ギスランは歯軋りをしながら天を仰いだ。しかし何も起きることはない。
「実体を持たない浮動生命体。それが今のお前だな? 他の身体に逃げられぬように簡易な術式を張った。もはやここから逃れることは出来んぞ」
恨みがましい目付きで睨みつけてくるエルフの身体。
まだ年若い。リズよりやや年上で、軍人でありながらもエルフとしては子供と言っても差し支えないほど華奢な身体。
だが、私の推測が正しければその身体はもう――。
「数年前から帝国内でエルフを誘拐し、徐々に規模を拡大。そして3年前にお前はこのミルディアナの地へとやってきた。そのミリアム・ステイシスの身体を使って」
「……」
「そして少しずつエルフを集めて末期の雫へと変えていった。その元凶となった魔導生物とやらを私にも見せてみろ。奥にいるのだろう?」
警戒するギスランの背後に回り込む。普通の人間ほどの反射神経しかない相手にはわけがわからなかっただろう。
その耳元で囁いた。
「さあ、案内してもらおうか」
ギスランは歯軋りをしながらも、私に背中を押されながら奥の大広間へと向かった。
そこにいたのは醜悪で巨大な化け物だった。
まるで緑色の芋虫が肥大化したような体躯で、尖端には大きな一つ目があり、その下の腹部には人間など1人、2人は楽に呑み込めるほどの巨大な口があった。
そんな自然界に発生したとは思えないような生物が魔法陣の上に鎮座している。
奴らは不気味な呻き声を上げるだけでその場から動こうとしない。いや、正確に言えば動けないのだろう。
魔法陣の上から動くことが出来ず、ただエルフの血肉を求めるだけの存在。ロカの伽噺に出てきた化け物の正体はこれか。
これらは間違いなく人工的に造られた魔導生物。
主な用途は捕食した相手の魔力を体内で高速に循環させ、蓄えた魔力を爆発的に増幅させること。やがて凝縮された魔力の塊が一滴の紅い涙となる。それが末期の雫の正体だ。
元々高純度な魔力を持つエルフの身体からいくつもの末期の雫を造り上げれば、莫大な魔力を得ることが出来るだろう。
広間にいるだけで2体。
地下廊からこの広間に来るまでいくつかの牢屋があったが、中身はすべて空だった。
恐らくもう生き残っているエルフはいない。
「……くくっ。くくくくくっ」
「何がおかしい?」
不意に笑い始めたギスランは不気味な声で言った。
「たとえ貴様が何者であろうとも、もはや白翼の召喚は止められぬ。これは運命だ」
「そうだな。天魔を呼び出す術式の発動条件は既に予想がついている」
私はギスランから腕を離し、真正面から向き合った。
「そのミリアムとやらのエルフの身体……もはや長くはないな?」
「何故、それを知る」
「年老いた女領主であったミラは末期の雫を使って若返った。それは人間だったからだ。だが、エルフが使えば違う。『何百もの同胞の血を一身に飲み込んだその身体』は強い魔力に蝕まれ、もはや明日をも知れぬ身だろう?」
人間を若返らせたという末期の雫。
だが、エルフは人間とは似ているようでまったく違う身体だ。人間には効果的に作用したとしても、エルフもそうだとは限らない。
そして末期の雫とは、人間も摂取し続ければいずれは赤子になって死んでしまうに違いない劇薬のようなもの。
「エルフの誘拐が始まったのはミリアムがまだ軍学校にすら通っていない時。つまりお前は彼女が幼少の頃から既にその身体に憑依し、いくつもの末期の雫を体内に取り込んでいた。ミリアムが病弱だったのは度重なる魔力の塊の摂取に身体が拒絶反応を起こしていたからだろう」
エルフが飲んだ時の副作用に関しては推測にしか過ぎなかったが、このギスランという者の行動を考えれば合点がいく。
ギスランは明らかに事を急いている。
「天魔召喚術式の発動条件は、末期の雫を飲んだ者の死。だからお前は大胆な行動をしでかしたのだ。ミリアムからラティスへ。ラティスからリーゼメリアへ。リーゼメリアからエインラーナへ。こうも立て続けに憑依を起こせば必ず自分の存在へと辿り着く者がいる。その者に末期の雫を飲んだ自らの身体を殺害させることによって天魔召喚へと至る。それがお前の描いた道筋だ」
リズが憑依されたあたりでそのことには気付いていた。
彼女を巻き込み、その母親をも末期の雫の材料とする。そしてその事態を重く見たリューディオ・ランベールがこの場に乗り込んでくるよう仕向けたのだ。
あわよくばあの男をも材料に出来るかもしれないと考えたか、あるいは天魔を用いて殺害しようとしたか。
たとえあのハーフエルフがどのように動いても、ミリアムの身体は既に限界に達している。
その場で殺されてしまえばそれでよし。あの男が真相に気付いてミリアムの身体から自分を引き剥がそうとしても、ミリアムの身体はすぐに事切れて術式が発動する。
「……そう。白翼の浄化は止められぬのだ。魔神ともなればなおのこと。すぐにでも飛来してくる白翼たちの一撃は魔族の身体を容易に貫通する。貴様もまた死ぬのだ、哀れな魔神よ」
「それでいい」
「何だと?」
「私は暇潰しにこの国にやってきたのだ。500年前のエルフの失踪と天魔の襲来。そのどれもが私にとっては単なる退屈しのぎに過ぎない。せいぜい私を楽しませてみせるがいい」
私は右腕でミリアム――ギスランの胸を貫き、心臓を抉り取った。
一瞬の出来事に呆けているギスランが顔をしかめた瞬間、手にした心臓を握る。
「っ……!」
「もはや魂魄を他の身体に移すことも出来んな。愚かなる魔術師よ」
手にしていた心臓を潰した。
その瞬間、淡い靄のようなものが彼女の身体から抜け出た。
私はそれを手に絡ませる。
「この靄がお前の正体か。500年という永き旅路も今ここで潰える。潔く散るがいい」
靄を業炎術式で炙るとギスランの魂魄が断末魔の悲鳴を上げる。幽体に近かった存在がその場で泡のように溶けて消えた。そしてミリアムもまた絶命する。
まさしくそれを合図としたかのように、膨大な魔力がその場に満ち溢れ天井を貫いて遥か天空へと昇っていった。
爆発的な魔力だ。これはもはや禁術すら超えている。
その凄まじい衝撃によって高等魔法院の崩落が始まった。それは建物全体に及んでいるようだ。
これで『あの男の力を封印していた水晶』も砕け散っただろう。いくらアレが頑強な封印術式を使っていたとしても、この魔力の圧倒的な奔流に耐えられるはずもない。
即座に簡易な結界を張って崩落してきた石材を弾き飛ばす。
こんなことはしなくても私は平気だが、この目の前にいる化け物共は生かしておかねばならない。すべてを解決するためにも。500年前と現在の真実を他の者が知るためにも。
「レナ。エルフを全員外へ出しておけ」
「はっ!」
「他のエルフは適当に放り出しておけばいいが、リズとエインラーナの傍からは決して離れるな。彼女たちを害する者は誰であっても排除しろ」
「お任せを」
レナがエルフたちに強制転移術式を使ったのを確認した後、私も自らの身体を風迅術式で包み込んで一気に建物の外へと飛び上がった。
次回は本編+幕間のため2回更新です。





