第28話「要人警護」
リューディオ学長の部屋に戻ると、意外な光景を目にした。
「お、テオではないか? お前もランベール中将に呼ばれたのかー?」
「ロカ? それにみんなも……一体どうしたんだい?」
リズを除く特待生のみんなが集まっていた。
「授業が終わったら急に呼び出されたんだよ。オレはお前と違って何もしてねえんだけどな」
「俺も同じく」
「余も何もしとらんぞ?」
「私だって何もしてないわよ……はぁ、むさ苦しい空間ね。せめてリズがいればもう少しだけ空気が美味しくなるのに」
そして当のリューディオ学長は執務机で頬杖を付きながら僕の方を見つめていた。
まいったな、これ。どうすればいいんだ。
とりあえず僕は懐に入れておいた学長の紋章を投げて返す。受け取った学長は「ご苦労さまでした」と呟いた。
「どうでしたか、テオドール。貴方の知りたかった情報が載っていたでしょう」
「途中までは面白かったけどね。これからってところで読めなくしたの学長なのかな?」
「いえ、アレは正真正銘私が産まれる以前に書かれた本物です。そして私が初めて閲覧した時には既に読めなくなっていました」
他のみんながきょとんとした顔をしている中、僕は続ける。
「学長はあの事件についてどこまで知ってるんだい?」
「少なくともあの簡易的記録以上のことは知っていますよ。もちろん破られてしまった部分の情報も含めて」
「情報源は?」
「……その前に1つだけ言っておきましょう。ここに特待生諸君を集めたのはほかでもありません。近日中に、極秘裏に開催されるとある会談で要人の警護についてもらうためなのです」
「要人警護?」
「エルフの女王が来るらしいぜ」
僕の疑問にジュリアンが答える。
ツェフテ・アリアの現女王が来るのか。
「そう、ツェフテ・アリア王国の現女王であらせられるエインラーナ・キルフィニスカ陛下がこのミルディアナ領軍部へとご来訪なさるのです。私は反対したのですが、このままでは埒が明かないといった理由でね」
肩を竦めるリューディオ先生の態度に僕は溜息を吐いて言う。
「学長、本気で言ってるのかな? 女王だろうがなんだろうが、この国に来た時点で『末期の雫』にされてもおかしくないよ」
「来訪の件は半年近く前から何度も書簡でのやり取りをしてきました。女王陛下のお考えは1つ。危険でもなんでもいいから調査をさせろ、とのことでした」
「この事件にはとんでもない化け物が関わっている可能性がある。記録に残っていたことが確かなら、恐らくエルフの戦闘能力がいくら高くても太刀打ちできないものだと思う」
「ええ、そうでしょうね。そしてそれは女王陛下ご自身が身を以てご存じのはずです。何故なら彼女もまたあの事件に関わっているのですから。情報源の正体もこれでわかって頂けたでしょう?」
エルフの現女王も500歳程度なのか。
数少ない生き証人となれば、話を聞く価値は高い。
もっとも、失踪事件の解決に来るわけだからそんな時間はなさそうだけど。
「女王陛下はとうの昔にツェフテ・アリアの王都を発ち、今現在は国境付近の宿場町にいらっしゃるかと思われます。私としましては一刻も早く体調を崩してそのまま王都へととんぼ返りして頂きたい気持ちでいっぱいなのですが」
「竜でも見ればびっくりして帰ってくださるんじゃない? そこのチビをけしかけてみたらどうかしら?」
「んだとてめえ。頭から丸呑みにしてやろうか!?」
「やってみたら? お腹を裂いて出てきてあげるから。汚い臓物をさらけ出して死ねばいいのよ」
「よさんか、お前ら」
シャウラとジュリアンのやり取りをキースが諌めた。
いつもならロカが止めるところだと思ったけど、彼女はそんな会話など聞いていないかのように顎に手を当てて考え込んでいた。
やがて口を開く。
「ランベール中将よ。仮にエルフの女王がこの地にやってきたとして、そうも易々と何者かにかどわかされるものなのか?」
「……貴女がたは高等魔法院についてはご存じですか?」
学長の言葉にロカとシャウラはお互いの顔を見合わせた。
「質問に質問で返されるとはな。……この前、見学に行かされたのは覚えているがそれだけだな。どんなところなのかはようわからん」
「私も。魔術に関わった道具を展示してあるだけの退屈な場所だったわ」
「まあ、そうでしょうね。キース、ジュリアン、貴方がたはどうですか」
キースとジュリアンは頷いた。
「はっ! 高等魔法院とは、帝国の各所に設置された魔導技術の研究機関であります! 特にこのミルディアナの街の中央地区に存在する高等魔法院は帝国でも一、二を争うほどの敷地面積を誇る施設です」
「オレも知ってるぜ。入学する前にも実際に行ってみたけどよ、流石に学術都市とか魔術都市って言われてるだけあってなかなか優秀そうな職員が結構いたな。高等魔法院は研究の他にも、魔術の管理をしてるって話を聞いたこともあるぜ」
「その通り。高等魔法院では、ある一定の区画の中で使われた禁術相当の魔術を感知する機能があります。たとえばの話になりますが、今ここで禁術が使われたならばただちに高等魔法院がそれを察知することが出来るようになっています」
僕が補足することにした。
「資料の中に書かれていた禁術の正体は恐らく強制転移術式。しかもかなりの広範囲にわたる強大なものだね。そんなものをこの街で使えば、高等魔法院が即座に使用場所を突き止めて転移先も把握することが出来る」
学長が頷いた。
「彼が言うように、そのようなものを街中で使えるはずがないのですよ。……普通ならね」
「……ふむ? 確かに一理ある気がするな。して、高等魔法院とエルフの女王の話には何の繋がりがあるのだ?」
「そう、普通ならやらない。しかし私は確信しています。敵はエルフの女王が来ると知ったら必ず動くと。ならばどうするべきか。答えを言いましょう。私は彼女を撒き餌に使うつもりでいます」
学長のとんでもない発言に僕以外の全員が驚愕の表情を浮かべた。
「じょ、女王を撒き餌に使う!? 貴方、本気でそんなこと言ってるの!?」
「正気の上での発言か? いささか冗談が過ぎると思うのだがな」
「流石に俺もその作戦には賛同できません! 事件解決の糸口を掴むためとは言え、あまりにも常軌を逸しています!」
「……イカレてるぜ、あんた」
「はっはっは! よく言われますよ。しかし貴方はどう思いますか、テオドール」
特待生のみんなが僕を見てくる。
僕は思案しながら言った。
「ジュリアンに賛成かな。リューディオ学長は頭がおかしいと思うよ」
「おや? では賛同頂けないと?」
「いやいや、僕は面白ければ何でもいいから。でも、リューディオ学長は平気なのかな? 仮にも女王さまを餌にするなんてさ」
「散々足止めしても踏み込んでくると言って聞かない以上、『役に立ってもらわなければいけない』と思っていますよ」
「いいね、その考え。僕は乗ってもいいよ。他のみんなはどうだか知らないけど。でも、その黒幕はエルフの女王が来訪することまで知ってるのかい?」
「軍部の中にいる反エルフ派の将校たちに事前に情報を渡しています。あくまで意図せずに機密が漏れてしまったという体で」
「思い切ったことをしたね。でも、流石にエルフの女王にまでは手を出せないんじゃない? 警備が堅固なことくらいわかるでしょ?」
「必ず乗ってきますよ。乗らざるを得ない形になるでしょう。女王陛下は帝国軍の内部に強い疑惑を抱いていますから、必ず藪をつつくことになる」
確信している学長の言葉に質問を投げかけたのはキースだった。
「ランベール中将閣下。黒幕には帝国軍の者が含まれているのですか」
「ええ。元々この地方の出身ではない貴方にはわからないかと思いますが、反エルフ派の軍人は想像以上に多いのです。そして彼らは、先のゼナン竜王国との戦で雄々しく戦って散華された元帥閣下の後任を、私のようなハーフエルフが継いだことが我慢ならないようです」
「なんという……!」
絶句するキース。
リューディオ学長が大々的に調査を出来ないのは、こういう理由があってのことなんだろう。
「さて、どうでしょう。私の力になってはくれませんか。別に私のためでなくても構いませんがね。さらわれたエルフが気の毒だとか、エルフの女王が悪漢の手に落ちるのは見ていられないだとかそういう理由でも構いませんが」
「学長。もっと『ミラ』のことについて教えれば、みんなも協力的になってくれるんじゃないかな?」
「そうですねぇ……。あまり知られたくない話ではありますが、協力を頼む以上、話さないわけにもいきませんか。では、皆さんしばらく昔話に付き合って頂けますかね。この後に私が話すことはくれぐれも口外しないように」
そう前置きをしてから、リューディオ学長はミラの血潮事件について語っていく。
僕が読んだ簡易的記録に載っていたものと同じことが語られていき、特待生たちの誰もが真剣な顔をしてそれを聞いていた。
「――さて、ミラが惨殺された理由ですが、これについては私にもわかりません。軍部の暴走か、はたまた被害を免れていたエルフが復讐せんがために先走った行動をしたのか。いくら調べても惨殺した者の正体も理由もわからない。ここまでで質問は?」
みんな情報を呑み込むのが精いっぱいなのか、手を挙げる者はいない。
「では、続きを話しましょう。当時の情報は整理されてはいるものの前後関係が不明瞭なものも数多くありますが――ミラの惨殺が起こった前後、つまり時をほぼ同じくして天空を舞う白い翼を持った化け物が現れます。これが先に述べた天魔と呼ばれる者の正体であり、人間とエルフのみが発症すると言われている白翼恐怖症の根本的な原因です」
「天魔とは一体何者なのでしょうか?」
「不明です。ですが、天使に酷似したそれは破壊衝動にのみ囚われた異形の化け物であったと言われていますね。その天魔の大軍が帝国の東方領付近に発生し、その場を散々荒らし回ったのですが……その一部は人間には見向きもせずに、エルフの国であるツェフテ・アリア王国へと飛来しました」
「帝国とエルフの里だけを狙ったのであるか? 我がルーガル王国には、そのような化け物が現れたという話は伝わってはおらんぞ。エルフのみを食す化け物の話なら、確かテオにも伝えたはずだが」
「ほう? エルフのみを食す、ですか。それは初耳ですね。少なくとも、出現した天魔は人間も襲っていましたが」
地理的に考えれば、天魔が帝国の東方領で発生したのだとすれば、南方領の更に南に位置するツェフテ・アリアよりも、獣人たちの住まうルーガル王国の方が近い。
破壊衝動に囚われて理性が無くなっていただけなら、被害はむしろ帝国やその近くのルーガルに集中するはず。でも実際には多くの天魔がわざわざ遠方のツェフテ・アリアを狙った。
果たしてその行動の意味は何だろう?
たまたま人間とエルフだけを好む習性だった? では、何故人間の血が半分入っている獣人たちを襲いにいかないのか。
もしくはエルフを強く好んで襲う習性だった? それなら合点は行く。しかし、この事件の問題点はもっと大きなところにある。それは。
「……リューディオ学長。天使と天魔の区別は曖昧だっていう認識で合ってるかな?」
「天使に酷似した、という『証言』があるのみです。が、逆に言えば酷似しているだけでまったくの別物であると主張する者が多かったと聞きますね」
「極論を言っていいかな? 僕はその天魔というナニカは誰かしらの手によって強制的に召喚された『天使そのもの』であって、エルフを狙ったのはその召喚者の思惑通りだった。つまり天使は何者かに操られていたと解釈しているんだけど」
「テオドール。その発言はこの場のみで留めてください。外でそんな発言をすれば、最悪の場合極刑に処されます」
「それはやっぱりアレかな? 天使は帝国を創造したとされる大女神さまの使いという神聖かつ絶対なものであるから、世俗の者などに操られるわけがない。侮辱するのも大概にしろということかい?」
「お察しの通り。頭の固い人間が聞けば口を開けたまま固まってしまいますよ。……今のキースのように、ね」
ふとキースを見ると、本当に口を開けたまま固まっていた。いつもは引き締まっている精悍な顔が台無しだ。
「て、テオドール。お前は何という罰当たりことを……! お前自身が言うように天使とは創造の大女神さまの御使いだぞ!? 悪しきを裁き、邪なる者には決して屈しない神聖なる存在を貶めんとする発言は流石の俺でも容認できん!」
「ごめんごめん、悪かったよ」
うん……邪なる者に屈した天使が身近にいるんだ。僕の第一夫人で。ルミエルっていうんだけどね。彼女を前にしたらキースはどんな顔をするんだろうか。
とは言え、ルミエルは堕天こそしたものの別に僕が操ったわけではないし、狂っているわけでもない。その天魔とかいうものと比べるのは僕にとってもあまり面白い話じゃないんだけど。
テネブラエに乗り込んできた天使たちはルミエルを除いて1人残らず殲滅した。
もちろん攻め込んできた者だけしかいないはずはない。ルミエルと長く過ごしている間に彼女たちの話も聞いたが、テネブラエ殲滅戦に参戦していなかった者も多いらしい。
結局天使がテネブラエに乗り込んできたのはあの時が最初で最後だった。それ以降、ルミエルはずっと僕のもとにいたからかつての仲間たちがどう過ごしてきたかはわからない。
そう考えると、やっぱり天魔は天使であると思う。彼女らは並の術式に操られたりはしないほどの強い魔力耐性を誇っているけど、たとえばすべての始まりとも言える末期の雫を使って召喚されたとなれば……。
「さて、攻め込まれたツェフテ・アリア王国は幸か不幸か戦の下準備をしていました。完全に不意打ちの形で襲撃されこそしたものの、それこそ戦える者は全員が天魔に立ち向かい数多くの犠牲を出しながらも殲滅に成功したのです」
「じゃあ、黒幕とやらの思惑通りには行かなかったのかしら?」
「恐らくは。と言うのも、黒幕の正体はもとより目的すら不明なままですからね」
「何だ? 結局未解決なのかよ?」
「そうです。この事件では誰が何の目的を持ってこのような真似をしたのかがわかっていません。魔術大国の客人という最重要人物のことは徹底的に調べられましたが、結局謎を解き明かすことはできなかったのです」
ロカはつまらなそうに鼻を鳴らした。
「ふん。キアロの蛮族なら何をやらかしても不思議ではあるまいな」
「そうね。あいつらは野蛮だもの。獣人だけじゃなくて、魔力の才能がないというだけで同胞すら取って殺すようなことを平気でするような連中だから」
僕は続けて訊ねる。
「学長。僕が見た本のページが破られていたことについてはどう説明するんだい?」
「……あの本の続きには、末期の雫の製造方法が書かれていたようです。そして東方領で起こったとされる大暴風の真実も」
「中将の話が本当なら、末期の雫を造った場所はどう考えても廃墟だよな。造り方って言われると……オレには魔術で何かしたんだろうってしか言えねえが」
「末期の雫についてはこれ以上のことは私から伝えることは出来ません。と言いますのも、完全な製造方法についてはわかっていないのです。『大暴風』のせいでね」
「大暴風のせい、というのはどういうことかな? アレは天魔発生の比喩だと思っていたけど」
「大暴風は確かに起きました。局所的に、凄まじい破壊力を持ったものがすべてを破壊した。人為的にね」
「まさか」
そこで僕は思い至る。何故、大暴風が起こったのかということを。
「末期の雫の存在や製造方法、そして天魔の襲来を隠すための証拠隠滅だね? しかも、それは『帝国軍主体によって行なわれた』」
「仰る通り。そしてそれは件の廃墟――つまりバルザック領付近を中心に起こりました。あの地域では、もはや廃墟など最初からなかったかのように復興が進んで今では小さな町があるくらいです」
「しょ、少々お待ちください、ランベール中将閣下。大暴風が起こったとは言え、地下深くにあった部屋まで壊されたということでしょうか?」
「逆に考えてください。地下にあったものの証拠隠滅のために『大暴風』と称する何かを起こして周囲一帯を根こそぎ破壊したのです。そうすることによって、エルフの失踪から始まる『ミラの血潮事件』を強引に風化させることにしたのだと。そして後年、このことを知る者はほとんどいなくなった」
「そして、その大暴風とやらを起こしたのはギュスターヴ・リッター中将という認識でいいのかな?」
「ええ、彼は辿り着いてしまったのでしょう。末期の雫の製造方法と天魔襲来の真実に。結果、自国の領土を破壊してでも真実が公になることを防いだ。当時の帝国軍全体がどこまで関与していたかはわかりませんがね」
リューディオ学長が言い終えると、しばらく誰も何も言わなかった。
「以上がミラの血潮事件の大まかな全容です。そして、その惨劇が再び起きようとしている。改めて言いましょう。貴方がたの力を貸してください」
「ふっ、ランベール中将も性格が悪いな。ここまで聞いた以上、断りたくても断れるはずがないであろうに」
「性格の悪いエルフの女の子は好きだけど、いくらエルフでも男はやっぱり嫌ね」
「申し訳ない。他の特待生たちはともかく、貴女たちは部外者ですからね……今のところは」
最後の言葉尻を妙に強める学長を見て、ロカは笑う。
「ここで断ると余の命が危ぶまれるだけに留まらず、我が祖国への助力も水泡と帰してしまうかもしれぬか。よかろう、余も出来るだけの力を以て協力する。しかし余はこの地で死ぬわけにはいかんから、本当に身の危険を感じたら逃げるぞ?」
「ロカに同じく。私は彼女の護衛にして奴隷でもあるから。命を引き換えになんて出来ないわよ?」
「そこはわかっていますよ。貴女たちにそこまで危険なことをやらせようとは思っていません」
獣人娘たちが了承を告げた後、ジュリアンが言った。
「それじゃ、帝国出身の俺たちは酷使して死んだらそのまま使い捨てにしたいって言ってるように聞こえるぜ?」
「いやぁ、よくわかっていますねぇジュリアン。もちろんそうですとも。最前線に身を投じて、すべてをなげうって解決へと導いてください。そこで死んだら貴方はそれまでの器ということになります」
「ハッ。おもしれえ。いいよ、乗ってやるぜ」
学長はジュリアンの扱い方をよくわかっているようだ。
「さて、キース。貴方はどうします? この場にいる人物の中で帝国の貴族出身は貴方だけです。それ相応の配慮はしてもいいですが?」
「……俺には守らねばならんものがあります。この場で死ぬわけにはいきません」
「では降りますか」
「引き受けます。俺は聖炎を引き継ぎしレルミット家が嫡男。無様に犬死にするつもりは毛頭ありません。それに末期の雫だか何だかわかりませんが、そんなものを造り、尚且つ悪用せんとする者がいる。断じて許すわけにはいかん! 全身全霊を以て任務に臨む所存です!」
「貴方ならそう言ってくれると思いましたよ」
正義感の強いキースならこんな話を聞かされたら黙っているわけにはいかないだろう。
「これでこの場にいる全員が参加することになったのだな? しかし、ランベール中将よ。リズはどうするつもりなのだ? そもそも何故あいつだけ呼ばぬのか」
「私なりの考えがあってのことです。ちなみに彼女には今回の女王来訪の件については一切知らせていません。貴方がたからも決して漏らさぬようお願いします」
「リズ抜きでやるの? はぁ……つまらないわね」
その後、僕たちはエルフの女王の謁見場所や警備の配置などについて教え込まれた。
次回は違う人物視点でこの物語の要の話となります。





