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幕間「メイド妻とのひととき」

「あのさ、レナ? そろそろ離れてくれない?」

「嫌ですぅ、ルシファーさまの入学祝いとして私の熱い抱擁1時間分をまだ30分しか消化しておりませんもの。それと口調もちゃんとしてください、ちゃんと!」


 ベッドの上に腰かける僕の上に座る形になったレナはご機嫌な様子で言った。


「ふぅ……わかったわかった。好きにしろ」

「はい、好きにします。では、卑猥なことをしてもいいですか?」

「それはやめてくれ」

「ルシファーさまの意地悪ぅ。では、今は抱擁だけで我慢致しますね」


 ……またそれだけじゃ物足りなくなるんだろうな。


「またそれだけじゃ物足りなくして差し上げます。ふふふ」


 もう思考はすべて読まれている。自分がいかに単純なことしか考えていないかを嫌でもわからせられるとは。

 何かと色々台無しだが、私は今日の試験のことを聞いてみることにした。


「お前はどう思う。あのジュリアンという竜のことは」

「私はルシファーさまの仕草の1つ1つに見惚れていて、それどころではありませんでした。素敵です、あ・な・た」


 頼むから耳元で囁かないでくれ。吐息を吹きかけるな。もうお前の柔らかい感触と甘い香りだけで堪えるのに精いっぱいなんだから。


「真面目に聞いている。どうだった」

「私も真面目なのですが……人間やエルフに混じってトカゲがいるとしか」

「ふっ、お前にとってはあのような逸材もトカゲ扱いか。実力の差を知っても諦めずに戦おうとしたあの熱意はなかなかのものだったがな」


「竜など所詮は大昔に人によって大半が滅ぼされてしまった憐れな生き物だとしか思いません。むしろ、そんな下等生物がルシファーさまに戦いを挑もうなどと笑止千万です。私があの場で姿を現していたら潰していました」

「やめてやれ。将来有望な芽をむな」


 私はレナの頭を優しく撫でながら、切り出した。


「で、あのエルフ。リューディオ・ランベールと言ったか。アレはどうだ」

「底知れない力を持っているのはわかりましたが、愚昧極まる私にはそれ以上の判断は出来かねます」


 レナは奥ゆかしそうに見えながら、物事をはっきり言う女だ。どんなに認めたくないことでも事実であれば素直に肯定する。

 たとえば、いつもいがみ合っているルミエルともしも真剣に殺し合えば自分に勝ち目などないという最大の屈辱も平気で口にする。

 そんな女をして底知れないと言わしめるのだから、それだけでもあのエルフの男に価値はあろうというもの。


「確か、帰り際に聞いたところでは中将と呼ばれていたな、あのエルフは。軍の中でも相当な功績を上げたのだろう」

「昔では考えられないことですね。もっとも、今は帝国と南方のエルフの国の『ツェフテ・アリア王国』は同盟関係を結んでいますし、帝国内でのエルフ差別もだいぶ薄まったのではないかと思いますけれど」


 以前は軍でどのような功績を上げても、人間以外の種族は決して将校にはなれなかったそうだ。それがだいぶ緩和されているということか。


「でも、あの男からはわずかに人間の気配が感じられました。恐らく純血のエルフではないのでしょう」


 レナの推測通り、私もそのような気配を感じた。

 ハーフエルフ、か。人間とエルフの同盟関係が出来てから100年。別に珍しい存在でもないかもしれない。


「何にしろ、生徒も学長も面白そうな奴らばかりだ。しばらくは共に一生徒として過ごしてみるのも悪くないやもしれん」

「ルシファーさまが学長の立場ならまだしも、あのような子供たちと一緒に学ぶなど納得できません……」


 レナは少し拗ねたような言い方をしながら、私の首筋に頭を押し付けてきた。それをぽんぽんと撫でる。


「一時の余興だ。長くても2、3年で終わる――まばたきのような時間ではないか」

「む~……ルシファーさまは至高の王なのですよ。尊い存在なのです。それなのに」

「ここでは1人の人間だ」


 あのエルフ娘には少し勘付かれた可能性はあるかもしれんが……。

 いや、しかしまさかテネブラエの魔神の中でも最高位であるこの私が人間に化けて軍学校に入り込むことまでは予想出来まい。


 無理にでも人間として通させてもらおう。

 レナが抱擁を強くしてきた。不機嫌な証だ。私も至って単純だが、レナもこれはこれでなかなか単純でわかりやすい女だ。実に可愛らしい。


「そういえば、入学試験で剣術からなる3種目で首席となったのはお前が最初で最後だったらしいな」

「そうみたいですね……」


 物凄くどうでもよさそうだ。本当にもう帝国のことなどカケラほどの興味もないのだろう。


「何だ、嬉しくないのか? 此度の試験で私もお前と同じ成績を収めた。歴史上で私とお前だけがこの偉業を成し遂げたのだぞ?」


 その言葉にレナはぴくっと反応する。


「歴史上で私と、ルシファーさまだけ!? お、お揃い!? お揃いですね!?」

「ああ、そうだな。どうだ、夫と妻に相応しい間柄ではないか」


「はい! そう考えると、とっても嬉しいです! ルシファーさまとお揃い……恐悦至極でございます」

「お前は本当に優秀だな。よし、褒美をやろう。何がいい?」


 答えを聞く前にベッドに彼女を押し倒した。もうそろそろ我慢の限界だ。こうして冷静を装って喋っているのも辛い。


「で、では、ルシファーさまのお時間を頂けませんか……?」


 間近にあるレナの愛らしい顔が朱に染まる。


「いいだろう、昨日の続きをしてやる」


 今夜は部屋に魔力を張って、防音効果は完璧にしてある。これならどんなに音が出てもいぶかしがられまい。

 少し乱暴にしたところで構わないだろう、レナ?

 彼女のメイド服に手をかけ、素肌の熱と柔らかさを感じたあたりで興奮のあまりに我を忘れた。

本日、作品のタイトルを変更致しました。

内容は何も変わっていませんし、今後に影響することもございませんのでご安心(?)ください。

次回は初めての他の人物視点によるお話となって、この軍学校入学編も終わります。

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