第二話 新しい入居者
大学の授業にもそろそろ慣れてきた。
今日は、私の知っている、本で読んだことがある内容とほとんど一緒で、少々退屈だ。
寝てしまいそうになって、これでは失礼と思って、目を覚ますために別の本を読みだした。
先生が私を指してきたが、特に問題なく返答できた。
半分寝てそうな学生を指して、間違えるはずが、簡単に答えてしまい、先生も予定外だったようだ。
なんとか授業は眠らずに終了できた。
授業後、1人の男子学生がXXXXXさんに近づいてくる。
「XXXXXさん、さっきの授業の返答すごかったね。あんなにスラスラ回答するなんて、びっくりしたよ。いったいどんな本で勉強してるの。」
話してきた学生は、いきなりXXXXXさんのかばんを覗いている。
「あっ、ちょっと、いやよ。勝手に開けないで。それは関係ない本よ。」
学生が強引にかばんを覗いたら、そこには見慣れないものがあった。
オープンリールのテープレコーダーが録音をおこなっているのだ。
「なんだー、授業聞いてないふりして、しっかり録音してるんじゃないか。」
「ええっ!なにこれ。知らないわ。私のじゃないわ。」
「ずいぶんクラシックな道具を使うんだね。オープンリールのテープレコーダーなんて初めて見たかな。
まあ、一生懸命やってるってことだから、そんなに秘密にすることないよ。」
「とにかく私まったく知りませんし、失礼します。もう帰ります。」
XXXXXさんが怒って校舎から出ようとすると、背の高い黒服の男性が声をかけてきた。
たぶん留学生の説明会で見た覚えがある人だ。
「XXXXXさん良かったら帰りは車乗っていかない。送るよ。」
「ちょっと変なことがあったし、何かあるといやだわ。
もし送ってもらえるのなら、助かります。
私の家の場所、ご説明しないと。」
「ああ。XXXXXさんの家なら知ってますよ。
まあ、安心して寝ていてくれればいいですから。」
「私の家知ってるの。いつの間に?すごくご近所なのかしら。
でもそれより何だか眠くなってきた。。。。」(ZooZooZoo~)
しばらくして、走行中の車の中で目が覚めた。
「あ~、お目覚めですか。もうすぐ着きますからね。」
「ああ、このへんでいいかな。
こんなとこまで送ってくれて、ありがとう。助かったわ。じゃあまたね。」
車を降りて家に歩いていくと、いつの間にか、近所にお弁当屋が出来ていた。
店先では、魚などの乾きものを売っている。
しかし、なんだか見たことないような、大きな魚が多い。
魚の名前は何かと思うと、AとかBとか書いてある。
とりあえずEを1つ買ってみた。タイに似ているようで、少し口先が細いような違う魚だ。
店員のおばさんは、何にも言わず、特に愛想はよくないが業務的にうっすらと笑みをうかべている。
いつの間に近所にこんな店ができていたのだろうか。
全く気付かなかったわ。
足はさっさと家へと向かう。
しかし何か変な感じがしてきた。
いつまでたっても家へ着かないのだ。
もうちょっとと思って歩いているうちに、見慣れない太い通りまで出てきてしまった。
私まだ寝ぼけてるのかしら。
いや、変だわ。私の家の近所と似ているけど違う場所みたいよ。
車で送ってくれたはいいけど、間違って変な場所に来ちゃったみたいだわ。
ここどこなのかしら。
しばらく歩いてみるが、少し違和感がある。何かへんだ。
気のせいか、日本語でない言葉の人が多くないか。
いや気のせいじゃない、すれ違う人がみな日本語でない言葉を話している。
もしかしてここ外国?
「すいません。ここ日本ですか。」
「何言ってるんだよ。お姉さん大丈夫?ここはYXY国の人が多い、YXYタウンだよ。」
「YXYタウン?
そんなとこに来ちゃったの。」
唖然として少し行くと、前方遠くから人影が現れた。
徐々に近づいてきたのはかわいい服装の小柄な女の子で、歩いてきて、私の目の前で止まった。。
「XXXXXさんですね。C.Lです。YXY国から来ました。
今度、同じおうちの203号室に住むことになりましたので、
よろしくお願いします。
XXXXXさんに早く会いたいと言ったんですけど、こんなところまでお連れしてしまい、
お疲れ様でした。」
「何が何だか状況がよく分からないんですが、
203号室の新しい入居者なんですね。
よろしくお願いします。
まずは早くお家へ帰して頂けるかしら。」
「分かりました。
ミスターP、送って差し上げて。」
さっき車でここに連れてきた黒服の男性はミスターPさんというC.Lさんの召使いのような人らしい。
「あのテープレコーダーを私のかばんに入れたのはあなたなの。」
「失礼しました。ちょうど良い大きさのものがなく、少々大きいものになりました。」
「この手のことにはわりと慣れてるんですけど、もうやめて下さい。」
召使いがいつも付いているなんて、相当のお嬢様なのかしら。
見かけによらず、かなり強引ね。
でも、悪気は無いようだし、友達になれば面白い人なのかもしれない。
がんばろう。良いことがたくさんありますように。