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プロローグ

あらすじのとこで大体言いたいことを書いてしまった…

例えば、あのカフェでスマホをいじっている彼女。綺麗に髪を整えていて、服装もさっぱりしている。

拡大してみる。

目の下には、化粧でおさえきれていない隈が薄っすらとみえる。爪にはマニキュアが塗られていない…スマホを見る目は苛立っていて、人間関係に問題でもありそうな顔だ。


「人間観察もそのくらいにしとけ、有沢」


息は白く、喉は乾いていた。双眼鏡を町にむけていた僕は、先輩のほうをみた。

「先輩は見ておかなくていいんですか?」

僕は、先輩に、ありったけの非難をこめて、訊ねる。

「今回は、新規のお客さんなんだから、手抜きは駄目でしょう」

先輩は、「うーん…」と言葉を濁した。

「そうなんだけど、、ねぇー。あの客、なんか、」

「…気に入らない?」

「…まぁ、贅沢もいえないか。」

先輩は、「双眼鏡貸して」と、僕の双眼鏡を指差した。

妙な客。その感じ方を、僕は真っ向から否定することはできなかった。


話は、少し前に遡る。



僕がいつものように、出前でとったピザをダラダラ噛んでいると、滅多なことじゃならない事務所の電話が勢いよくなりだした。先輩は、ちょっとした話し合いに出掛けていたから、先輩には、音に驚いて無様に椅子から落ちた自分の姿を、見られなくて済んだ。

「はい。どちら様ですか」

僕が電話をとると、いきなり、

「君は、ヤマザキか?」

と、たずねてきた。これは不躾な!と思い、

「僕はパンじゃありません。山崎は、ただ今外出中です。お名前とご用件をどうぞ」

「…だ。治安維持を頼みたい。」

「具体的な範囲と程度をお願いします。…。」

マニュアル通りの会話を続けたあと、僕は、新規客に、面会の約束を取り付けた。ちょっとした工夫だ。893みたいな人たちにお世話にならない為の。それも、少し嫌がられると思っていたけど、すんなりとれたから、僕としてはラッキーだった。…こういう、顔がわれたり、スケジュールを調整しなきゃいけない面倒ごとは、ビジネスマンには嫌われるから。

電話をきったあとで、少しおかしいことに気がついた。なんで、先輩の名前を知っていたのだろう。先輩は、顧客には、ほとんど名乗らないのに。



ちなみに、僕の先輩の名前は「山崎」と書いて、「やまさき」と読む。こんな業務日誌を誰が読むんだろうって感じだけど。


…一応ね。…


そう、これは、僕のアルバイト先である、「ハッピーエンドメイカーズ」の業務日誌だ。こんな形で使うことになるとは思ってもみなかった。今読み返してみると、頭を抱えたくなるような恥ずかしい勘違いやら、若気の至りやら、黒歴史の詰め合わせみたいになっているけど、それでも僕にとって、この会社から得たものは大きかったと思う。あの時、誰もが迷い、選択することを極度に恐れていた。今は少し、ましになっていると思いたい。


このOLのことは、今でも覚えている。僕達は、彼女に悪い事をしてしまった。多分、一生忘れられないくらいのトラウマを、彼女にうえつけてしまったかもしれない。だから、僕の業務日誌は彼女の話から始めることにした。




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