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ゴンドラと飛行船  作者: クロスピース
3/3

沈んでしまった宝物②

 潜水していられる時間は、1回で約3分が限界だ。

 2階の柱にくくりつけたロープを持ちながら、水に浸かりきった1階まで潜っていく。


 階段を下り、周りを見渡す。

 思ったより物が多い。

 階段を降りた先、居間と思われる部屋の壁にたくさんの写真が掛かっている。

 1枚目の写真は、10年いや20年ほど前のものだろうか、齢50くらいの男と女が写っている。

 男がギターを弾き、女はピアノを弾きながら歌ってる。

 じいさんと5年位前に死んだばあさんだな。


 2枚目の写真は、随分古い。十代位の青年が草原の中で笑ってる。

 まだ草原があるってことは、50年以上前だ。

 ということは、この写真の青年はじいさんか?

 結構なイケメンだ。もしかしたら、これが探し物かもしれない。


 とりあえず、1度に全ての物を運べる量じゃない。

 目につくものを持って行こう。 

 まずは、居間にある写真からだ。

 

 かき集めて二階に引き上げて、じいさんに見せると、じいさんは手に取り、嬉しそうに声を上げた。


 「おお!懐かしいのぉ!」



 おっ、もしかしてもう帰れるか?

 「良かったな。いきなり当たりか?」


 潜水服の水抜きを始め、早々に脱ごうとしたが、じいさんに止められた。


 「懐かしい…が、これではないのぉ。」


 ふぅ。

 まぁ、そんな簡単には見つからないよな。


 「わかったもう一回行ってくる。」


 再度一階へと潜り、居間を見渡す。ギターだ。

 弦は完全に錆びているが、母材は、生きているようだ。

 これは、建物の基礎となる木と同じ物が使われているな。

 水に浸かっても脆くならない特殊な木だ。


 とりあえず右手にギターを取り、近くにあった小箱を左脇に抱え、ロープを手繰り二階へと戻った。 


 小箱を空けると紙切れが1枚だけ。

 ギターは、爺さんに渡すと、弦を張り替え、思い出の曲とやらを弾いてくれた。

 「写真のころよく婆さんと弾いた曲だ。」

 「どうだ?いい曲じゃろ?」

 ご機嫌だ。しかし探し物はこれでもないという。


 結局あらかた1階の居間にあった物は引き上げてきたが、当たりはなかった。

 まぁ、最初の一部屋で帰れるとは思ってなかったけどな。


 じいさんのつくったカラスガニのパスタを食べ、思い出の曲とやらをもう2,3曲聞かされたあと、2つ目、3つ目の部屋を探した。


 そして、日が暮れるころには、結局最後の5部屋目を探していた。


 「じいさん、これ以上はもう無理だ。」

 「ドでかい家具と食器類、カーペット位しか残ってないぜ。」

 

 「そうか。」

 「いや、リーフ、すまんな…。ようやく見つかったよ。」


 「あん?そうすると、この杖が探し物だったのか?」

 

 俺は、最後に持ってきた、古ぼけた杖をじいさんに差し出した。

 

 

 じいさんは、杖を手に取り、引き上げてきた物を指し、ニヤリと笑った。


 「すまんな。リーフ。これら全部がわしの思い出の品じゃ。」


 何だって?


 「おい。じじい。嵌めやがったな。」


 「まあまて、代わりにこの中で飛びっきりいいものをやろう。」


 じいさんは、小箱の中から1枚の紙切れを取り出した。


 「宝の地図じゃ。」


 「わしはもう随分と生きた。」

 「わしにはもういらん。」

 「欲しかったものは手に入ったし、家族や愛したものはすでに思い出に変わった。

 何かを求めるのは若者の特権だ。」


 「今日お前さんが持ってきてくれたものより、たくさんの宝物が見つかるよう祈ってるよ。」

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