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「レイフ氏。これは一体、何があったのでござるか」


アルトらはアンドレイによる時空間魔法によって転移し屋敷の前に着いた。だが目の前には血を纏った馬車に、血糊の付いた神父服。只ならぬ光景にアルトは疑問しかなかった。


「すまないアルトくん。道中、黒装束の連中に襲撃を受けてね。我々には被害が無かったものの、運転手が一人犠牲になってしまった」


エリーから聞いた新しい子が早く来たい、などというそんな可愛い理由はどこにも無かった。


「エリーくんには、悪い事をした。あまり大声で言えないため、嘘をついて貰っ…た……」


「レイフ氏!」


緊張の糸が切れたのかレイフが倒れる。直ぐさまアルトはレイフを元へ駆け寄り馬車からゆっくりと下ろす。


「大丈夫でござるか!?」


「あぁ、私よりも馬車の中にいるエヴァを先に休ませてやってくれ」


「わかったでござる。アンドレイ、馬車からその子を下すんだ」


「承知しました、ご主人」


アンドレイは馬車に乗り、眠っているエヴァを抱え屋敷の中に入っていった。


「エリーはレイフ氏に回復魔法を。悪いがレイフ氏、少し事情を聞かせてもらうでござる」


「あぁ、私からも話しておきたい事がある」


エリーはレイフに回復魔法をかけ、客間へと案内した。


「レイフ氏、襲撃を行った者に何か、心当たりがありますか?」


レイフは頭を抱えながら、記憶を辿っていた。何度も襲われた、死にかけた事だってある。だが、連中の情報は一つも掴んでいなかった。


「すまない、何度か襲われたことがあるのだが」


そうですか……とアルトは小さく呟いた。無い情報を引き出すことを無駄だと判断したアルトは襲撃された状況を詳しく聞く事にした。


「では、レイフ氏。襲撃のこと詳しくお聞きしたいでござるよ」


「あぁ…わかった。あの時、我々は馬車で屋敷へと向かっていた。途中、破裂音が響いて馬車が急に止まり、外を見ると黒装束の連中が馬車を取り囲んで逃げ場が無かった。だが、エヴァが戦ってくれたお陰で何とか逃げる事ができた。一応、幻惑魔法をかけて走っていたので、着けられてはいないはずだ」


「なるほど……何か黒装束とは会話しましたか?」


「私ではなく、エヴァが話をしていたのだが。そうだな、たしか連中はエヴァのことを霊廟の守護者とか言っていたな」


黒装束、破裂音、霊廟の守護者。それぞれのキーワードに何処かで聞いた事がある単語なのだが。アルトは思い出せずにいた。


「それほどの死線を潜り抜けきたのだ。さぞお疲れでしょう。今日は拙者、エリー、アンドレイの三人しかおりませんが戦力としては十分です。護衛は我々に任せてレイフ氏はゆっくりお休みになって下さい」


「いや、待ってくれ。まだ話があるエヴァのことだ」


寝室まで案内しようとしたが、レイフはまだ話があるらしい。再び席に着きアルトはレイフのことを見ると目を逸らしてエヴァのことを語り始めた。


「エヴァは呪われている」


アルトはレイフの話に眉をひそめ、どういう意図で彼女が呪われていると言ったのか気になった。


「それはどういう……」


「彼女の右腕には何か良からぬものが宿っている。何度か、目にしているが人間の腕とは程遠い。まるで、獣のような腕をしていた。彼女自身、優しい子なのだが自分で感情を制御できないところがある。もし断るのならーーーー」


「心配ご無用ですぞ、レイフ氏。拙者はエヴァっちのこと獣なんて、これっぽっちも思ってないでござるよ。その右手のお陰でレイフ氏も生きてここにいる。力強く優しい力なのだと拙者は思いたい。それにデュフwww黒髪幼女など、まさにキタコレなので。断る気などさらさら無いのでござるよ」


気持ち悪い口調と笑顔でレイフの不安を消したアルト。

その笑顔に嘘偽りはなく、本気でエヴァを守ってくれるのであろう。


「そうか……本当に君が引き取ってくれて良かった。私は彼女に何もできなかった、してやれなかった。君ならエヴァを救ってくれる。君なら彼女を笑顔にできる」


レイフは泣いていた。たった一人の子供すら救えない自分の不甲斐無さ、他人に押し付けてしまう罪悪感。だが何より彼女、エヴァを理解してくれる人がいることにやっと彼女に救いが来たのだと思うばかりであった。


「さぁ、レイフ氏。着替えてゆっくり休むでござる。エヴァっちのことは拙者たちに任せておくでござるよ」


「あぁ…ありがとう、ありがとう」


それしか言えなかった。言葉だけじゃ足りない。だが、それしか出来なかった。


(レイフ氏、貴方はそこまであの子のことを思ってくださったのですね)


アルトは思った、エヴァはレイフが居ただけでも救いだったのだろう。赤の他人のはずなのに親のように接したレイフ。


(きっと貴方が居たから、彼女はここまで生きてこられた。生き続けたいと思ってくれた。だから、何もできなかったなど思わないでほしい。むしろ貴方はここまで彼女を守ってきた。だから次は『俺』たちの番だ)


レイフを寝室まで送り、アルトは自分の部屋に戻った。


「アンドレイ」


「何でしょうか、ご主人」


「情報屋に取引を。幾ら金をかねても構わん。奴らを探し出せ」


「御意に」


静かな怒り。あの二人をここまで追い詰めた連中に最悪の最期を。


「待っていろ、次は貴様らの番だ」

ポイント、ブクマありがとうございます。

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