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絡まれてる女の子を助けるのは男の仕事だ!・・・と思ったのに

前回のあらすじ:おじいさんは一般人だった。

「長々とつまらない話を聞かせて悪かったのう。」

「いえいえ、楽しかったですよ。」

「これはお礼じゃ受けとってくれい。」


 そういっておじいさんは金貨を差し出してきた。


「そんなにもらえませんよ。ギルドからも報酬として金貨1枚もらえるので。」

「かまわんかまわん。わざわざ話を聞きに来てくれた人には何かお礼をせんと気が済まんのじゃ。話を聞くついでにもう一つこの老人のわがままを聞いとくれんか。」

「そういうことでしたら、まあ。」


 おじいさんめっちゃいい人じゃん。ほんとこの町はいい人多すぎるわ。国中のいい人みんな集まってんじゃねぇの?


「それじゃあ、俺はこれで失礼します。」

「つまらない話じゃったと思うがここにはいつきてもええからの。」

「はい。」


 実際はそんなにつまらない話でもなかった。なんとこのおじいさんもう90歳を超えるらしくて、ここが村だったときから住んでるらしい。おかげで色々な話を聞けた。飢饉のときの話だったりこの国の現国王の話だったりとこの国に住んでいる人なら知っていて当たり前の出来事などだ。

 このおじいさんはすごく物知りのようなのでもしかしたらまた来ることがあるかもしれない。やはり亀の甲より年の劫ということか。


 この後は急いでギルドに行って宿に戻らなくては。夕飯が食べられなくなってしまう。今8時を少し過ぎたぐらいだから何かトラブルがない限り間に合うだろう。

 まあトラブルって言っても町中で起こるものだから1時間以上かかるとは思えないけどな。それにもうギルドがある通りまで来たし。

 ......あぁ、フラグ臭がする。


「ちょっと、やめてください!」


 ほら。路地裏でなにやら穏やかではない声がする。


「いい加減にしてください!急いでると言っているでしょう!」

「いいじゃねえか少しくらい。ちょっと俺たちの相手してくれるだけでいいからよ。」

「お前の相手してちょっとで済むわけねぇだろ。」

「ちげぇねぇ。」

「「ぎゃははははは!」」


 うっわ。いかにもなチンピラもいたもんだなおい。格好からして冒険者か。さっきこの町の人はみんないい人みたいなこと思ったけどやっぱり冒険者は粗暴なのがいるんだな。

 5人で1人の女の子囲んでやがる。ナンパぐらい1人でできないのかよ。だっさ。ってよく見りゃあの子は俺がこの世界に来た日に助けようとした赤髪の子じゃないか。

 さすがにこれも遊びとかなんかの大会ってことはないよな。

 というか誰も助けようとしないのか。見えるところであんなに大きな声出してんのに。

 やっぱりみんながみんな度が過ぎるほどに優しいってわけじゃないのか?......違うな。みんな最初は助けに行こうとして相手を見て躊躇してるって感じだ。

 これを見てから走ってどっかに行ってる人は警備兵かなんかを呼びに行ったとかかな。


 見て見ぬふりはしてないのに誰も助けに行かないのはそれだけあいつらが強いってことか?そんなに強そうには見えないが・・・。

 ああ、そうか。一般人にとっちゃ冒険者はみんな自分より圧倒的に格上か。冒険者は魔物と戦って生活してるんだもんな。そうじゃなくても刃物持ってる相手は怖いか。

 しゃーない。俺が行くか。ここで何もしないってのも後味悪いし。

 ・・・これひょっとしてテンプレじゃね?やべっ、がぜんやる気出てきた。


「おいそこのお前ら「やめろっつってんでしょうが!!」・・・は?」


 赤髪の子が叫んだかと思うと右足を男の股間めがけて・・・!?ぐあぁ。見てるこっちも痛ぇ。


「あたしはさっきから急いでるって言ってるでしょ!わかったらそこどきなさい。冒険者だかなんだか知らないけど1人でナンパもできない軟弱者が粋がってんじゃないわよ!」

「な、なんだとこのアマァ!いい気になってんじゃねえぞ!やっちまえ!」


 やべっ、あまりにも痛そうだったんで呆然としてたっ。このままじゃあの子が!


「はぁ!」

「どぅえ!」


 ・・・へ?


「はっ!ふっ!やっ!」


 なんだあの子。明らかに何か武術に精通している動きだ。ちょっと鑑定してみるか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Name:シェリー

Job:武闘家

Favoa:剛力

Skill:体術LV6、無魔法LV2

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 体術LV6!アスリートみたいな町長さんですらLV2だったのに...。しかもJobが武闘家になってる。どっかの道場の娘さんとかか?おまけに恩恵まで持ってる。剛力って名前からして力が強くなるんだろうな。

 こりゃ俺が出張るまでもなかったな。この子十分強いし。


「鬱陶しいったらありゃしない。女に飢えてるんだったら娼館にでも行ってなさいよ。ったく。で、あんたはなんなのよ。」

「へ?あ、いや俺は...。そう。君が困ってると思って。」

「よけいなお世話よ。ってあんた一昨日の。」

「覚えてたんだ。」

「そりゃ覚えてるわよ。いきなり出てきたかと思えば男チームの人たちみんな気絶させるんだから。忘れるわけないわ。」

「その節はどうもすみませんでした。」

「もういいわ。おかげで賞金もゲットできたし。」


 どうやらそんなに怒ってはいないようだ。


「そんなに強いならあの時も男たちを倒して逃げればよかったんじゃないか?」

「あの大会は触られたら即失格なの。そんなことしたらすぐ触られるわ。」

「へぇ。」


 随分と男が有利に作られている大会だったんだな。


「じゃ、あたし急いでるから。」

「そうか。それじゃ。」


 そういって彼女は群衆の中に消えて行ってしまった。・・・この男達どうしよう。さっき誰かが警備兵の詰所の方に走って行ってたからそのうち誰か来るだろう。俺はギルドに行かなくては。


 ギルドに着くと昨日同様冒険者がたくさんいた。だが、今日は掲示板には誰もいないようだ。受付嬢と話をしていたり机を囲んで何か話をしていたりとその様子は様々だ。

 サリーのところには誰もいないようなのでそこに依頼完了の報告をしに行こう。


「はいこれ依頼完了書。あのおじいさんすごい物知りなんだな。知らないことがいろいろと聞けて結構楽しかったよ。」

「セキさんはこの町ができる前から住んでるらしいからね。この町の生き字引よ。わからないことがあったらセキさんに聞くといいわ。」


 あ、そういえば名前聞くの忘れてたな。セキさんというのか。今後も行くことあるかもしれないし覚えておこう。


「はいギルドカード。これで依頼完了よ。」

「どうも。」


 さて、急いで宿に戻らなくては。夕飯が俺を待っている。これ以上トラブルに巻き込まれても困るしな。


 宿の戻った俺は時間ギリギリに駆け込んだことに怒られながらも急いで夕飯を食べ終え、部屋で今日起こったことについて考えている。

 まずはスキルについてだ。魔力操作と魔力感知を覚えたときに生産の恩恵を使用するかどうか選択肢があったということは、何もなくいきなり覚えた詳細鑑定は生産系のスキルではないことになる。とすると、なぜ詳細鑑定を覚えたか。これはどうにもわからん。今は鑑定を複数回使用すると自動で覚えるということにしておくしかないか。


 しかし魔力感知は生産系のスキルで詳細鑑定は生産系のスキルではないとなると、ますます生産系のスキルかどうかの判定がわからなくなるな。

 あと、LV10のスキルをいくつか覚えたから隠蔽を使えるようにしておいた方がいいか。ついでに隠蔽を詳細鑑定。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

隠蔽

自分のステータスを好きなように変えることができる。ただし取得していないスキルは表示できない。

鑑定の恩恵で鑑定された場合はステータスを変えていることが相手にわかる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 どうやらステータスを変えれるらしい。やってみるか。・・・どうやるんだ?これも念じるだけか?


(隠蔽)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Name:剣山 鉄

Job:冒険者

Favor:変身、分身、生産、隠蔽、鑑定

Skill:武術LV6、芸術LV4、魔力操作LV10、魔力感知LV10、詳細鑑定LV10

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ここまでは鑑定と変わらないな。試しに名前を変えてみようか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Name:剣山 鉄 → テツ   Yes/No

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 おお、こんな風になるのか。当然Yesで。この調子でどんどん変えていこう。

 まずはLV10のスキルをLV4にするか。あとこんなに恩恵を持っているのも変かな?今まで出会った恩恵持ちはみんな1個しか持ってなかったし。

 あ、鑑定がなくて詳細鑑定があるのはおかしいか。じゃあ詳細鑑定は表示しないようにしよう。

 こんな感じかな。では鑑定を。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Name(隠蔽):テツ

Job:冒険者

Favor(隠蔽):分身

Skill(隠蔽):武術LV6,芸術LV4、魔力操作LV4、魔力感知LV4

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 こんもんでいいかな。このくらいだったらもし誰かに鑑定されても怪しまれないだろう。女神様の話によるとLV9で国宝級らしいからな。LV10を持っているなんて知れたらどうなるかわかんないし。


 あ、今生産の恩恵のデメリットが思い浮かんだ。これ一気にLV10になったからLV4のときの実力がわかんない。まいったな。どうしよう。とりあえず使ってみるか。

 ・・・お?どういうわけかLV4のときの出力が分かる!なんというご都合主義な恩恵なんだ隠蔽は。これはラッキーだったな。


 あとはスキルのレベルについてだ。夕方に出会ったシェリーは自分より明らかに体格のいい男をぶっとばしていた。これは剛力の恩恵もあるんだろうが体術スキルがLV6なのが大きいと思う。普通であればあんな細腕で人がぶっ飛ぶほど強く殴ったら腕のほうが折れてしまう。


 そこで仮説を立てよう。スキルはレベルが上がるにつれて、そのスキルを使えるように体に何らかの変化を与えるのではないか。

 そう思った理由は魔力操作だ。魔力操作LV10を覚えた途端に集中しなければ動かせなかった魔力が特に何をしなくとも思ったように動かせるようになった。しかも髪の毛1本1本にしっかりとだ。

 ついさっき知ったばかりのものをあたかもずっと前から知っていたかのように扱うなど、いくら俺でもそうそうできない。それが今までいた世界にはないものならなおさらだ。

 そんなものがこんなに簡単に扱えるなど何かの要因によって体が順応させられたとしか思えない。その何かとはタイミング的に考えておそらくスキルだろう。


 ではどのように体を変化させているのか。そのまま筋肉の量を増やしたり強度を上げているわけではないだろう。そうであればシェリーはムキムキのマッチョでなければおかしい。

 だが前世の世界では体格を変えずに力だけを増やすなどほとんど不可能だ。しかもあんな細腕で人が吹き飛ぶほどの力など絶対無理と断言してもいい。

 ではなぜできるのか。それは前世の世界に無くこの世界にあるものが関係していると思う。

 そう、魔力だ。いや、もしかしたら俺が知らないだけで前世にも魔力などが存在したかもしれないが、それを考えたらきりがない。


 この世界のスキルはレベルが上がるとそのレベルに応じて魔力で体を強化しているのではないだろうか。そしてそれはそのスキルの保持者が意識してするのではなくスキルが勝手に補助しているのだと思う。でなければ魔力操作LV10を覚えてすぐに効果が出るのはおかしい。

 その魔力は元々持っていたものなのかスキルのレベルが上がると魔力が増えそれを使うかはわからないがそう考えるといろいろと納得がいく。

 シェリーがあんな細い腕で人をぶっ飛ばせるのもスキルによって力が上がっていたからだ。逆に町長さんがアスリートみたいに筋肉ついていても俺の蹴り1発で気絶してしまったのは、俺はLV6の強化で町長さんはLV2の強化しかなかったからだろう。


 今はこの仮説を立証する方法はないがそんなに間違ってないはずだ。そしてこの仮説があっているならば能動的に魔力で身体強化をすることもできると思う。

 今日の寝る前の鍛錬で少し試してみるか。魔力操作も練習したいし。これからは魔力に関する鍛錬の時間が増えそうだ。

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