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魔法を使うんだ!・・・と思ったのに

前回のあらすじ:この町の人はみんなやさしいかも

 ギルドに戻ってくると先ほどよりも随分と人が増えていた。酒場もほぼ満席でみんな酒を飲んでいる。

 かと思うと掲示板を見ていて、これから依頼に向かうような人たちもいる。


 ギルドはこの時間帯がピークなのだろうか。だがカウンターにはあまり人がいない。

 とにかく依頼完了の報告をしよう。


「依頼報告に来たんだけど。」

「随分遅かったわね、テツ。」

「イタルトさんと少し話をしててね。ここの仕事が終わったら今度は武器屋で働くことになったんだ。はいこれ依頼完了書。」

「確かにイタルトさんのものね。ギルドカードを出して。」


 ギルドカードを渡すとサリーは依頼を受けるときと同じ魔道具に差し込んだ。


「依頼を受けるときに聞き忘れたんだが、もし失敗したらどうなるんだ?」

「依頼失敗はギルドポイントの低下と報酬額の2倍の罰金よ。」

「ギルドポイント?」

「ギルドポイントとは依頼を完遂するとその依頼の難易度に応じてあなたに入る得点のことよ。ギルドポイントが増えるとそれにふさわしいランクになるわ。ちなみにギルドポイントがマイナスになるとギルドから除名されるから気を付けて。」

「除名されるともう二度とギルドには戻れないのか?」

「1度除名された人もう一度ギルドに加盟するにはそれ相応の試験があるわ。それをクリアすれば入れるわよ。はいこれギルドカードと報酬金。報酬金は銀貨と銅貨どっちがいい?」

「銀貨で。」


 返ってきたきたギルドカードには当然Requestの欄は空白になっていた。


「ギルドポイントはどこで見るんだ?」

「裏面に記載してあるわ。」


 裏にも書いてあったのか。見落としてた。裏面を見ると左上にGP:15と書いてあった。


「今の依頼で15ポイント入ったのか?」

「今回の依頼で入ったのは5ポイントよ。10ポイントは元々入ってるの。さすがに最初の依頼失敗ですぐに除名じゃかわいそうでしょ。」

「これ、何ポイントになったらランク2に上がるんだ?」

「ランク2になるためには20ポイント。ランク3になるためには100ポイント必要よ。ちなみに2つ以上下のランクの依頼を受けてもポイントは入らないから。」


 ランク1は初心者中の初心者ということか。ランク3になるためのポイントが多いのはランクの低い依頼を受ける人がいなくならないようにか?


「じゃあ俺はあと1つ依頼をクリアしたらランク2か。」

「そうとは限らないわ。普通ランク1の依頼は1ポイントか2ポイントしか入らないもの。今回のはお父さん、つまり町長からの依頼だったから特別だったの。またそういう依頼でもない限り次の依頼でランク2になるのは無理ね。」


 そうだったのか。どうりでおかしいと思った。こんなに早くランクが上がったんじゃランク1や2のやつがすぐいなくなるもんな。


「これからもう一軒受ける?」

「いや、今日はもう宿に戻るよ。いろいろ考えたいこともあるし。」

「それじゃ、また明日。」

「ああ、また明日。」


 ギルドを出た俺はまっすぐに宿へ向かった。さっきも言った通り考えたいことがあるからな。


 宿に着いた俺はなけなしの金で食事を済ますと部屋に戻ってさっそく考え事をしていた。ちなみにこの宿の食事は普通にうまい。よく異世界物のラノベにある舌の肥えた日本人には食べられないものではなくおいしいパスタだった。


 さて、まずは俺のステータスのことからだ。鑑定結果を見てみよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Name:剣山 鉄

Job:冒険者

Favor:変身、分身、生産、隠蔽、鑑定

Skill:武術LV6、芸術LV4、詳細鑑定LV10

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 最初に見てほしいのはJobである。冒険者になっている。どういう仕組みか知らないが職業を変更したときに勝手に更新されるらしい。


 次にSkillの欄だ。いつの間にか詳細鑑定なるものが表示されている。俺はこんなスキルを覚えた記憶はない。ということは、鑑定を使いまくった結果覚えた鑑定の派生というところではないだろうか。

 こういうものは使ってみるに限る。


(詳細鑑定。)


 ・・・何も起きないだと?使い方を間違っているのかもしれん。他に考えられる使い方は・・・。鑑定結果を鑑定してみるか。


(冒険者を詳細鑑定。)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

冒険者

冒険者ギルドに登録していてギルドから依頼を受け報酬をもらい暮らしている。

他のギルドと兼職している人もいる。

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 なるほど鑑定結果の詳細を知るためのスキルなのか。これは便利そうだな。念のため詳細鑑定も鑑定しておくか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

詳細鑑定

鑑定で出た結果をさらに詳しく鑑定するスキル。

詳細鑑定のレベルよりレベルの高いものは調べられない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 思った通りの効果だな。詳細鑑定よりレベルの高いスキルは鑑定できないみたいだけど、俺の詳細鑑定のレベルは10みたいだから関係ないな。詳細鑑定も生産系のスキルなのか、それとも恩恵の派生だからレベル10なのか。まあどっちにしろレベル10なのはありがたいな。

 ついでだから気になってた生産についても鑑定してみるか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

生産

生産系のスキルを取得すると同時にレベルが10になる。

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 ふーん。1度スキルを覚えないと効果がないのか。とすると課題はどうやってスキルを覚えるかだな。


 他のスキルや恩恵は気になったときに調べるとして、次はこの世界の通貨についてだ。この世界というよりもこの国かな。

 先ほどギルドで貰った報酬額は銀貨2枚だった。渡すときに銀貨か銅貨か聞いてきたことからどちらかがどちらかの上位なんだろう。

 武器屋に行くときに出店や屋台を見るに、銅貨が日本でいう100円、銀貨が1000円のようだ。この宿では1食銅貨5枚から銀貨2枚であることからたぶん正しいだろう。

 まだ見たことはないがたぶんテンプレ通りに金貨や白金貨などもあるんだろう。


 今日分かったことはこれくらいだな。まだまだこの世界についてわからないことが多すぎる。かといってあまり人に聞いて常識を知らなすぎることを疑われても困るしな。どこかに図書館みたいなところはないかな。そういうところでこの世界の常識について学べたらいいんだけど。

 とりあえず明日の朝ギルドに行ってサリーに聞いてみるか。

 さて夜も遅いし少し鍛錬したら寝るか。さぼったらすぐに鈍るからな。






 次の日の朝、早朝の鍛錬を終えた俺は早速ギルドに来ていた。サリーに聞いたところによるとギルドからそう離れてないところに子供向けの本から魔物図鑑など大人たちが使う本までそろっている建物があるらしい。

 今日の午前中はそこでこの世界の常識について学ぼうと思う。6時間もあれば大体のことは理解できるだろう。


 さあ着いたぞ。まずは何を読もうか。

 お、おあつらえ向きに『この世界の国々1』なんて本があるな。......ちょっとご都合主義過ぎやしないか?まあいいか。内容は、っと。


『この世界は5つの大陸と無数の島々からできている。この本では1番大きいアーズ大陸について説明しよう。この国、ルイント王国がある大陸である。この大陸は世界の中心とも言われ、世界中から色々なものが流れてくる。この大陸ではルイント王国が発行したルイント製の硬貨が使われている。価値の低いものから順に銅貨、銀貨、金貨、白金貨、王金貨だ。銀貨は銅貨の10倍、金貨は銀貨の10倍、白金貨は金貨の100倍、王金貨は白金貨の100倍の価値を持っている。他の大陸では大陸中全ての国が同じ硬貨使っているなんてことはないからこの国がいかに素晴らしいかがわかるだろう。そもそもこの国は..』


 そこから先はしばらく国自慢が続いている。この本の筆者は随分とこの国が好きなんだな。

 この本を読んでわかったことは、この国がルイント王国であること。ルイント王国はアーズ大陸で1番でかいこと。この国には奴隷がいること。この国には人間以外にエルフとドワーフと獣人が住んでいるがその人口は少ないこと。ルイント王国は今年で建国から200年になること。ぐらいかな。


 題名にこの世界の国々なんて書いておいてルイント王国に事以外ほとんど書いてないじゃないか。でもまあおかげでこの国の常識は大体わかった。


 他にめぼししい本はないかな。ん?これは・・・カレンダーか?形はちょっと違うけどたぶんそうだ。

 へえ。1週間は9日なのか。順にアレフ、ダレット、ダアト、テット、ラメド、ヌン、ペー、レーシュ、タヴだ。1年は思った通り10か月あるようだ。ケテルから始まりコクマー、ビナー、ケセド、ゲブラー、ティファレト、ネツァク、ホド、イェソド、マルクトと続くらしい。


 お、こっちには『魔法入門 魔力編』なんて本もあるぞ。やっぱ異世界来たら魔法は使いたいよな。読んでみるか。女神様によると俺は魔力もチート級らしいからな。

 

『この本を開いて魔法を学ぼうとしているあなた。まずはあなたに魔力があるかどうか確認しましょう。魔力がなければ魔法を使うことができません。ここから先は魔力の有無を確認してから読みましょう。』


 俺は魔力を持ってるはずだ。女神様の話を信じるならな。


『魔力はありましたか?それではまず魔力を感知するところから始めましょう。魔力はあなたの中の血液のように体中を巡っています。自分の体の内側に意識を向けてみてください。魔力感知が得意な人ならすぐに体の中に廻っている魔力に気が付くでしょう。』


 精神集中か。それなら得意だ。武術の鍛錬では意識を自分の内側に向けることがよくあるからな。瞑想とか。それでは。・・・・・・む?今何かあったような...。普段なら集中できていないと戒めるところだが、これが魔力か?もう1度。・・・・・・あった。今度ははっきり感じられる。体の中で何かが動いてる。これが魔力か。


 うう、気持ち悪いな。1度気が付くと全身を動き回ってるのがわかる。魔法使う人はずっとこんな感じなのか?なんかこう、あれだ。寝起きの力が入らない状態で無理やり力を入れようとしたときみたいな感じだ。最近は鍛錬のおかげか寝起きでも力が入るからこの感じは久しぶりだな。


『そう、それが魔力です。あなたは今全身を流れる魔力を感じているはずです。今度はその魔力を腕に集めてみましょう。腕に気を集中して力を込める感じです。しかし実際に力を込めてはいけません。あくまで自然体で力を込めようとする感覚だけでいいのです。そうすると体の中の魔力が腕に集まってくるはずです。』


 自然体で体に力を込める感じか。なんだか魔力の扱いには武術と通じるところがあるな。それじゃあこの気持ち悪いのが腕に集まるように。

 よし、こんなもんか。全身の気持ち悪さはなくなったな。その分腕が変な感じになったけど。もうこれは言葉じゃ表せないな。とにかく何かが変なんだ。


『できましたか?それでは今度は今腕に集まっている魔力を外へ放出してみましょう。息を吐く感覚です。このとき注意しなくてはならないのは魔力を出し過ぎないようにすることです。体の中の魔力がなくなると魔力枯渇の状態になり意識を失ってしまいます。普通の状態ならば1,2時間程寝ていれば治りますが、空気中の魔力が少ない場所やなんらかの原因で魔力が回復できない状態だと命にかかわります。魔力を持つ人にとって魔力とは生命活動するために必要不可欠なものなのです。それを踏まえてあまり使い過ぎないようにしましょう。』


 魔力がなくなると気絶するのか。残りの魔力量に気を付けて魔法を使わないとな。

 で、えーっと呼吸する感じだっけ。こう、か?あ、なんか今腕の中からなんか抜けていった。でもまだまだ余ってるな。一応できたってことでいいのか?


『腕の中から魔力が抜けていく感じがしたら成功です。あなたはこれで魔力を扱うことができるようになりました。この本ではここまでできるようになれば終了です。魔法が使いたい方は次の巻でお会いしましょう。』


 え、これで終わり!?魔法使えてないじゃん。あ、でも魔力編って書いてあるから魔力を使えるようになったら終わりなのか?次の巻って書いてあるからたぶん続編があるんだろうな。それを読めば今度こそ魔法を使えるようになるか?

 ってそれよりもこの気持ち悪いの何とかならないのかよ。これの治し方ぐらい書いておいてくれてもいいのに。

 しょうがないこのままにするか。そのうち慣れるだろうし。全身気持ち悪いよりも腕だけ気持ち悪い方がいいから常に魔力を集めとかないとな。結構大変なんだぞこれ。


 カーン、カーン


 やべっ、長居し過ぎた。早くギルドに戻らないと。

一応銅貨は100円、銀貨は1000円、金貨は1万円、白金貨は100万円、王金貨は1億円となっていますがそんなに覚える必要はありません。

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