かわいい女の子を助けて仲良くなるんだ!・・・と思ったのに
前回のあらすじ:女神さまに転生させてもらった。
気がつくと俺は森の中にいた。って前にもこんなシーンあったな。えっと、そうだ。確か神様の過失で死んじまって転生したんだった。
本当にここは異世界なのか?確かに日本じゃあまり見かけない木がたくさんあるけど。
異世界なら恩恵とやらが使えるだろう。まずは鑑定を試してみよう。......どうやるんだ?声に出してみるか。
「鑑定。」
......何も起きん。心の中で念じてみるか。
(俺を鑑定。)
途端目の前に画面の様なものが浮かんだ。
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Name:剣山 鉄
Job:旅人
Favor:変身、分身、生産、隠蔽、鑑定
Skill:武術LV6、芸術LV4
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これが鑑定か。触れたりは・・・できないか。というかこれ宙に浮かんでるっていうより目に浮かんでるって感じだな。
えっとなになに?Nameはそのまま名前だろう。Jobってのは職業か?俺は旅人なのかよ。
このFavorは多分恩恵のことだな。
Skillは今俺が持っているスキルが書いてあるのか。剣術じゃなくて武術なのは俺がいろいろな流派を習ってごちゃ混ぜにしてるからか?まあ実際に剣以外の武器も使えるしな。
生産系のスキルがないのは何故だ?一応少しは学ばないとだめということか?
次は他の恩恵を使ってみよう。鑑定は念じるだけで使えたから変身もおなじか?じゃあ......
(変身。)
「......どうだ?」
お、声が高くなって女っぽくなってる。しかもアニメ声。鏡がないのが悔やまれるな。想像通りならかなりの美少女になってるはずなんだが。
......ああ、このまま分身を使えばいいのか。これも念じるだけでいいのか?
(分身。)
そう念じた瞬間、俺の視界が二つになった。
「「うおっ、なにこれ気持ち悪っ!」」
声も二重になっている。これは慣れるのに相当練習いるな。
それはさておき俺の容姿は想像通りの美少女になっていた。しかし自分で言うのもなんだが俺の想像力ハンパねぇな。自分の体なのに一瞬見とれたぞ。
説明すると、身長は150後半でモデル体型、髪はショートヘアの黒。俺の中のボクっ子像そのものだ。ちょっと触ってみるか。
「「む、二人同時に動いてしまうな。」」
少し練習するか。こうか?いや、こうか。違うな。こんな感じで。お、少しできたぞ。じゃあ今度はこう。
「こんな感じか?」
できた!だが少し違和感あるな?自分で自分を見ながら動いてみるか。・・・すげぇ。なんか動きが女子っぽい。
ああそうか、これが違和感の原因か。見た目だけじゃなく動きも女っぽくなるんだな。よし、じゃあ改めて。
「......柔らけぇ。」
どこがとは言わない。いやだってさぁ、目の前に自分の思い通りに動く女がいるんだぜ?そりゃ男なら触るでしょ。どこがとは言わないが。
(変身解除。)
あ、俺ってこんなんなのな。前世の俺と同じ顔だ。やっぱ俺の容姿ってすげぇイケメンだよな。・・・ゴメン盛った。
本当は普通より少しイケメンだがイケメン補正はかからない程度って感じ。
服は学校の制服か。この世界じゃ多分浮くよな。なんとかして服をてにいれないと。
さて、改めてどうしようか。ここは異世界だろ?そろそろあのテンプレが起こるはずなんだが。
「キャーーー!!」
お、きたきた。さて、それでは異世界最初のテンプレ、消化しますか!
ふむ、確かに前世より少し、いやかなり身体能力が上がっているな。これならすぐ着きそうだ。
......いたな。つーかいつの間にか森から出ちまったよ。うわー女の子3人が厳つい男に囲まれてる。男は6人か。とりあえず離れて様子を見よう。
「さあ、もう逃げ場は無いぜ。」
「いやー!誰か助けてー!」
「へへへ、助けを呼んだって誰も来な「とうっ!」うげっ。」
「君たち大丈夫か?」
「えっと、あなたは......」
「待ってて。こいつら片付けるから。」
「えっ、ちょっ。」
様子を見るとか言ったが男のセリフがあまりにも悪役なんで出てきてしまった。こんな奴らは速攻で片付けるに限る。人質をとられたら厄介だからな。
「おらぁ!」
「ぐほぉ。」
あら、一撃で沈んだ。こいつら実は弱い?......いや、違うな。俺が強いのか。これなら人質とられる前に全員倒せるな。
「うらぁ!」
「うぼぁ」
「ちょっ、まっ「問答無用!」どぅるぁっ。」
「話を「誰が聞くかぁっ!」くぉぁっ」
「に、逃げ「させるかぁっ!」るぅぁっ。」
「これは違っ「知るかぁっ!」つぅうぇっ。」
ふう、終わった。
「さあ、これでもう大丈「キャーーー!!」夫......」
え?
「ちょっと、大丈夫!?お父さん!」
おとうさん?
「ちょっとあんた、なにしてくれてんのよ!」
「えっ、俺は君たちを助けようと。」
「余計なお世話よ!」
なにこのアウェイ感。助けたのに。しかもなんかこの子ら男達と知り合いっぽいぞ。どういうこと?
「すみませんでした!」
俺はいま、とてつもない罪悪感に苛まれている。
時は20分前に遡る。
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「あの、ちょっと。」
「何よ!」
「どういうことか説明してくてくれませんか。」
「はぁ!?誰がするもんですか!」
「いいわ。」
「ちょっと。そんなことよりみんなの手当てしないと。」
「大丈夫よ。6人共気絶してるだけみたいだし、彼も悪気があってやったわけじゃないみたいだし。」
「......わかったわよ。」
どうやら茶髪の子が説明してくれるようだ。俺に突っかかってくる赤髪の子は不満そうだけどな。
「あたしはあの子と一緒にみんなの手当てをしてるわ。」
さっき悲鳴を上げた桃色の髪の子は会話に混ざらずに男たちの手当てをしている。
桃色の髪とかあるんだな。さすが異世界。
「さて、まずは自己紹介をしましょうか。私はサリー。この近くの町に住んでいるわ。」
「俺は鉄。旅人で最近はこの辺を旅してる。」
「旅人?それにしては荷物が少ないわね。」
「俺は荷物を持たずに現地で調達するサバイバル的な旅をしているからな。」
「そう。それで、何を聞きたいの?」
「君たちとあの男たちは知り合いなのか?」
「ええ、同じ町に住む知り合いよ。そのうち1人は私の親ね。」
「じゃあなんで追われていたんだ?」
「今、町ではとある大会が行われているのよ。」
「大会?」
「男と女10人ずつにチームを分けて男が女を追いかけるゲームよ。女チームが全員捕まれば男チームの勝ち。1人でも残れば女チームの勝ち。ちなみに勝った方には賞金が入るわ。」
まじかよ。なんだよそれは。じゃあ何か、俺は普通にゲームを楽しんでた一般人を殴ったり蹴ったりしちまったのか!?そりゃ余計なお世話どころかただの迷惑だよな。
「大会は12時までだからもうそろそろ終りね。」
「え、ということは......」
「残っているのは私たちだけのはずだからあなたが来なければ彼らの勝ちだったわ。このことを知ったら町の男たちは怒り出しそうね。」
それは嫌だな。仕方ない諦めて違う町へ行くか。
「だからって逃がしはしないわよ。何も悪いことをしていない人を殴って気絶させたんだから町に来て多少の罪滅ぼしをしてもらうわ。」
「ですよねー。」
そんなことを話しているとどこからかカーンカーンと鐘の音のようなものが聞こえてきた。
「大会が終わったわね。さあ町へ行くわよ。」
「はい。って男の人たちは?」
「私たちが一人ずつ背負うからあなたは残りの3人を運びなさい。」
「え、一人で3人も?」
「できるでしょ、男の子なんだから。1人背負って片手に1人ずつ。」
まじかよくそっ。でもまあ気絶させちまったのは俺だしできるだけ頑張るか。
「よいしょっと。」
あれ、以外と軽い。これも神様が身体能力上げてくれたおかげか。
「あら、結構力持ちなのね。本当にできるとは思わなかったわ。」
「結構鍛えてるからな。」
これは本当だ。毎日稽古を繰り返していたからな。おそらく神様の強化なしでも軽くとは言わないが持てただろう。
「それじゃあついてきて。町は向こうよ。」
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そんなわけで、町へ行き事情を説明すると当然の如く町の男たちが怒っているのである。それもすっごく。
町に着くまでに聞いたところによると大会の賞金とやらは4人家族が1年間普通に暮らせる程の金額らしい。それが勝ったチーム1人1人に当たるそうだ。
そんな金額を催し物如きに使うなよと思うだろう。俺も思った。だがどうやらこの祭りは国王誕生祭という祭りで開催が義務付けられているんだとか。
なので今日、この国の村以外の大きな町はどこもお祭り騒ぎらしい。
そんな祭りに水を差したわけで......
「馬鹿野郎!謝って許される問題じゃねぇんだ!」
「俺はこの日のために1年前から走りこんでんんだぞ!」
「俺なんか借金の返済にこの金全部つぎ込む予定だったんだ!」
と、このように皆さん怒りが収まらないようです。・・・しまった。彼らの怒りに押されてつい敬語になってしまった。
「まあまあみんな、もういいじゃないか。彼も悪気があってやったわけじゃないようだし、反省もしているようだ。」
「しかしよう、町長。」
この優しい人は俺が気絶させてしまった1人でサリーの父さんだ。セリフが似てるあたり本当に親子なんだな。そして、男の1人が言ったように町長でもある。
俺にいきなり殴られたのに俺をかばってくれるとてもできた人だ。
「もし本当に娘達が盗賊や魔物に襲われていたらと思うと彼の判断は間違ってなかったと思うよ。まあ話も聞かずにいきなり攻撃して来たのはちょっとやりすぎだけど。」
「本当にすみません。」
「それでも納得できないというなら彼に1か月間無償で働いてもらうのはどうだろう。」
え、何それ聞いてない。
「そりゃいいな。」
「ああ、逃した賞金の分きっちり働いてもらおう。」
なんですとー!これはまずい。何とかして回避せねば。
「あの、俺お金持ってないんで、宿借りられないですし。」
「宿の手配は私がしてあげよう。」
「ですが日用品や食事代などは。」
「それは自分で稼いでくれ。まあ3日分のお金は上げよう。勤務時間は昼の12時から6時間だ。それ以外の時間で金稼ぎをすればいい。」
前言撤回。この人結構シビアだ。