女神様は絶世の美女だ!・・・と思ったのに
気がつくと俺は真っ白な部屋にいた。周りが全て白いので詳しくは分からないが、おそらく立方体だろう。ここは死後の世界と言うやつだろうか。
・・・我ながら冷静だな。とりあえず......
「知らない天井だ。」
「目が覚めましたか。」
「うぉっ」
びびった。俺の他にも誰かいたのか。全然気配感じなかった。何者だ?声からして女っぽいけど。
「突然ですが、あなたは死にました。」
「......あぁ、うん。やっぱりか。」
もしかしたら病院かもとか思ったけど、やっぱ死んでたか。
「あまり驚かないのですね。」
「なんとなくそんな気はしたからな。」
「そうですか。それより、そろそろこちらを向いてくれませんか?」
「ああ。」
俺は振り返り絶句した。なぜなら......
「ああ、やっとこちらを向いてくれましたか。」
そこには誰もいなかったのだから。比喩でもなんでもない。向こう側の壁が見えるだけなのだ。
ただ声だけが聞こえる。
「あんた、何だ?」
「何だとは失礼ですね。これでも神ですよ?」
「神、ねぇ。それは死神的な何かか?」
「......言うに事欠いて死神ですか。」
「違うのか?」
「違います。」
死神じゃないのか。てっきり死んじまった俺を迎えにきたものだと。
「私は生と創造の女神です。死の神とは対極の位置にいますね。」
「生と創造か。そりゃまた随分と凄そうな神様じゃないか。」
「凄いですし偉いですよ。あなたちに分かりやすく言うと創造神でしょうか。」
そりゃまた凄い神様だ。しかし、どうにも信じられないな。なにより姿を見せないのが胡散臭い。
「そんな偉い神様が俺に何の用ですか?」
とりあえず下手に出て様子を見るか。
「申し訳ありませんでした!!」
「・・・は?」
何だこいつ。いきなり謝りやがった。というか、ここまで考えないようにしてたけど一つの可能性が浮上してきたぞ。
「あなたが死んでしまったのは私のミスです。」
これは・・・やっぱりあれか?よくラノベである神様が間違いで人殺しちゃってお詫びに異世界へ転生ってやつか?
いや、まだ他の可能性もある。だいたいこいつが本当に神かどうかもわかんないんだ。
「本当に申し訳ありません。」
「そんなことよりも一ついいですか?」
「そ、そんなこと、ですか。」
「あなた本当に神ですか?」
「最初にそう言ったではありませんか。」
「では証拠を見せてください。姿も見せない相手の話を信じることは出来ません。」
さあ、どう来る。
「証拠、ですか。」
「はい。」
「何をすれば信じて貰えるでしょうか。」
「そうですね。では、俺を女にしてみてください。」
これは神でもなければ無理だろう。
「はい、出来ました。」
「え?」
「御自分の体をご覧ください。」
慌てて体を見ると、なるほど確かに女の体だ。
いくら鍛えていると言っても足元が見えないほど胸筋はない。なにより筋肉はこんなに柔らかくない。っていうかでかいな。
「信じていただけましたか?」
「ああ、信じたからとりあえず元に戻してくれ。」
「はい。」
「姿は見せてくれないのか?」
「神は固有の肉体をもちません。神とは概念ですから見ることは出来ませんよ。」
なんとなく説得力があるな。くそう。テンプレ的には女神は絶世の美人の筈なのに。
「ですが信者の体を借りて顕現することはできますよ。」
「へぇ。」
じゃあ容姿はその信者のひとによるのか。
「で?俺が死んだのはあんたのミスだって?」
「はい。」
「俺は何で死んじまったんだ?」
多分これもテンプレ通りなんだろう。
「実はその日、私は信者の体を借りて現世に顕現していたのです。」
ああ、それで生死の管理ができなかったとかか?
「私は久しぶりの顕現でドライブを楽しんでいました。しかし、日頃の激務で運転中に眠気が襲ってきたのです。人間は睡眠が必要だということをすっかり忘れていた私はそのまま眠ってしまいました。」
ん?雲行きが怪しくなってきたぞ。
「あろうことか私はそのまま居眠り運転をして事故を起こしてしまったのです。」
おい、それってまさか。
「私はあなたを引き殺してしまったのです。」