3:約束
私は、慌てて穴を覗き込んだ。
さっきまでの警戒心は全く無かった。
その隙間から微かに見えるのは、少しつりあがった二重の気の強そうな目。
強引で、でもとても優しい、彼・・・明の目だった。
小さな隙間から見詰め合う。
心臓の音が徐々に静かになっていく気がした。
「未来、どうしてこんなところにいるんだ!」
「それはこっちの台詞よ!明、ここはどこなの?」
「わからない・・・俺はさっき目覚めて、そしたらお前の声がして・・・」
そこで、明は黙ってしまった。
明の手が、きゅうときつく私の手を握っていた。
不安なのは、お互い様のようだった。
そう分かったとたん、一瞬消えていた不安が膨れ上がってきて、カタカタと身体が震えた。
彼の存在を確認出来たのは嬉しいけど、これから何が起こるか分からない、いや、むしろ嫌な予感ばかりする。
そんなことに、私だけでなく、明が巻き込まれているという事実。
ふいに明の手が私の握った手の指をほぐした。
指と指が絡められて、貝殻つなぎになる。
震える私の手を、優しく握る。
彼は何も言わなった。
ただ、私の震えが止まるまでずっと手を握ってくれていた。
不器用な彼らしいと思って少し笑った。
「明・・・ありがとう」
「未来、こっから出るまで泣くなよ。俺が絶対、お前を守ってやるから。泣くなよ」
ぎゅっと、握る手に力が込められた。
ぎゅっと握り返して答える。
唇を噛んで、涙を堪える。
「絶対、ふたりでここから出よう」
小さな穴の中で、お互いの小指を交差した。
「約束だよ」
私たちは、誓いの歌を一緒に歌った。