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WALL  作者: 小空
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2:壁の向こう側

少しの間、何も出来なかった。

自由な右手で膝を抱えて、出来るだけ小さくなって壁に身体を預けていた。

不思議と涙は出ない。

人間は、こんなにも不意に予想だにしない事柄が起きると涙を流すことすら忘れるらしい。

ただ、得体の知れない恐怖、不気味さ、これから自分はどうなるの?

最悪の想像だけがぐるりぐるりと脳内で展開されていく。

誘拐?だとしたら、何時?

私は(あきら)の部屋で、いつもと同じように・・・。

そこまで来て、私の関心は一転した。

「そうだ、明・・・!」

自分の心配をしてる場合じゃない!

私と一緒にいた、彼氏のことで頭がいっぱいになる。

私がこんなところにいるって事は、彼は無事じゃないかもしれない。

何があったの?

きのうの夜、一体何があったの?

頭がぐちゃぐちゃになって、狂ってしまいそうだった。

「いや・・・!誰か、誰か・・・」

すがるように伸ばした左手。

指をピンと張って、出来るだけ遠くに。


ふいに、何かが左の指先に触れた。

心臓が飛び出しそうだった。

さっきまで精一杯伸ばしていた指をぐっと、握る。

ドキドキドキドキドキドキドキドキ。

物音の無い部屋だけに、自分の鼓動が異常に大きく聞えた。

何?誰!?

私の左手に不気味に残る生暖かさ。

感触と温度から、動物・・・十中八九人間だろうと思った。

ただ問題は、それが私の「味方」なのか「敵」なのか、ということ。

もう一度触れてみようか、いや、危険すぎるんじゃないか。


とりあえず、落ち着こう。

そう思って、スッと息を吸い込んだ瞬間!

私の身体は再び、飛び上がった。

ギュッと握った左手を、掴むように大きな手に包み込まれた。

また、心臓が煩い音を響かせる。

その音を掻き消すように、聞き慣れた声がした。


「・・・未来(みき)?」


私の名前が、小さな穴の隙間から飛び出すように静寂の部屋に響いた。

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