1:目覚め
こちら側に、わたし
向こう側に、あなた
目が覚めれば、冷たいコンクリートの壁によりかかっていた。
涙が一筋、頬を伝っていた。
何か、とても悲しい夢を見たような気がする。
薄っすらと目を開けてみると薄暗い部屋に、鉄格子の窓から伸びる光の筋が3本。
見回すと、そこは映画なんかでしか見たことのない、そう、丁度牢獄のような場所。
頭の中では、夢じゃないかと考えながらも、背中から伝わる冷たさに嫌な汗が流れる。
じわりじわりと恐怖が滲む。
「私の、部屋じゃ・・・ない」
腰を上げようとした私は何かに動きを阻止された。
左腕が・・・ない。
いや、正確にはコンクリートの壁に開いた直径10センチほどの穴に私の左腕は突っ込まれていた。
どれだけ引っ張っても抜けない。
手首が何かに固定されている。
冷たい、金属に巻かれているような感覚。
穴に突っ込まれている左の手首は、穴の中で手錠で固定されているのだ。
それも、電気椅子なんかに付いている様な太い金属の輪で。
これじゃ、本当の囚人みたいじゃない!
現実ではありえない風景に、混乱する。
でも、肌に感じる寒気や、流れる汗や、手首の金属の触れる感覚は確かなもののように思う。
怖いから大声を出すことも、穴を覗き込むこともできない。
ただ呆然とコンクリートに背中を預けて、辺りを見回した。
震える唇をこじ開けて、静寂に溶け込ますような、消えるような小さな声で呟いた。
「ここは、どこ?」