2話
この神ノ島と呼ばれる島国は千年前まではどの国も平穏に暮らしていたのだが、それから千年後どこかの国の“后土”が更なる領土を欲し隣国に攻め込みその影響で少しずつ感染病の如く島全土に広がりそれから百年後、国が乱れ土地が荒らされ血で血を洗う戦国時代の幕を開けたのだ。
戦が始まり民の男は徴兵され戦場に出され男手が無くなった村は食物の収穫が十分に獲れず飢えで餓死する村人が続出し始めたり、戦で村畑などを燃やされて帰る家や家族を無くした者は犯罪者になるか耐え切れずに死ぬかである
そしてまた罪の無い村が襲われていた。
辺りは暗闇に閉ざされている静かな中一つ真っ赤な明かりと悲鳴が響いていた。
それは周囲に燃え盛る民家と泣け叫びながら逃げ惑う人々とその後ろから弱者を痛めるのに楽しく笑い略奪する盗賊たちがいた。
奴らは男と老人は殺し女と子供は犯して攫い奴隷として売る。
意識が略奪や女に夢中だった盗賊たちに突如、背中や頭などに何本かの矢が突き刺さり即死する者や痛みに絶叫する者がいた。
痛みに苦しむ盗賊の声に他に夢中だった奴らも異変に気づいた時には村の外側から大勢の足音と雄たけびと鎧が擦れる音が響き渡ってきた。
一人の盗賊が顔中キズだらけの大男に助けを求めに駆け寄ってきた。
「頭ッ!大変だ鬼の兵が攻めてきやがった!!」
「見張りは何をしてやがった!?」
「わ、分かんね気づいた時にはもう攻撃されて仲間が死んでいったんだ!」
「(クソックソックソが!役立たず共が!!)ッチ、仕方が無いこうなったら逃げるぞ。お前は生き残っている奴を集めろ」
慌てふためく手下を見ながら頭は声に出さずに役立たずの手下に罵声を浴びせながら指示を出した。
その指示に手下がまた慌て始めた。
「勘弁してくれ頭そんなことしてたら逃げ遅れて殺されちまうよ」
「安心しろ俺が少しの間だけ鬼の兵共の視線を逸らしておく。その間にお前は生き残りを集めて逃げろ、いいな?」
その言葉にまだ少し躊躇いながらも首を縦に振った。
「よし、なら後は頼んだぞ。行け」
手下が生き残りを捜しに走り去っていった。
「役立たずはせめて俺が逃げる時間ぐらい稼げよ」
それを見届け彼は小さく笑ったのである。
村の外には黒い鎧を着た兵に赤く“鬼”の文字が入った黒い旗を靡かせる集団がおり、その指揮官らしき人物が馬上から部下の報告を聞いていた。
「賊はほぼ殲滅にを完了し生き残りの村人の保護も終わりました」
「そうか、なら後は怪我人の治療と近くの村に移住の依頼をしておけ」
「は!」
走り去る部下を見送った彼は、鬼ノ国アスラ隊所属副長オルガ。
大きながたいに鍛えられた筋肉を持ち、頭に一本の角と左目に眼帯を付け顎には無精ひげを生やし、背中に大刀を背負っていた。
「後は隊長の方だけか」
彼は村の別の出入り口の方を見ながら呟いた。
盗賊の頭は一人で包囲の薄い裏の反対側の出口を目指して息を切らせながら走っていた。
「ハァハァ、早くここから逃げねとヤバイな。あっちがそろそろ終わりそうだな」
彼は今頃捕まっているか殺されているかと思われる手下の方向を視線をやり再び前方に視線を戻し、歩み始めたその時前から幾つかの火が灯った。
少し距離があるせいで松明の光だけでは顔は分からないがその集団は全員鎧と松明の光でチラチラと見える赤い“鬼”の文字の旗があった。
「な、何でこっちに鬼の兵がいるんだよ」
「それはお前みたいな奴を殺す為だよ。感謝しろよな」
彼の独り言に鬼の集団の中から返ってきてそこから幾人かの兵と馬に乗った青年が近づいてきた。
青年は黒髪を一本に束ねその髪の間からは二本の角が生え瞳は血のように赤く冷えた視線だ。
彼はの正体は、鬼ノ国侍大将アスラ隊隊長、名はアスラ。
彼は青年の二本の角を見て全身が震えながら呟いた。
「なんで鬼神がこんなところに・・・」
「何、簡単なをこだ。近頃頻繁に村々が賊に荒らされていると城までに報告が来て、俺は厄介ばらいされたんだよ」
アスラは呆れたように首を振りそして、賊の側まで近づいた。
「さて、悪しき賊よ今世を悔い改め来世があれば善人として生きろよ」
「し、死にたくな――ッ!?」
賊の頭はアスラから逃げようと動いた瞬間胸に鋭いモノが刺さりその正体はアスラが持っていた槍だ。
馬上からの心臓への一突きそれを理解した瞬間目の前が真っ暗になったのだった。
「お前等速やかに後処理を終え砦に帰還するぞ」
アスラは部下たちに命令を送り、盗賊事件はこれで終わったのだった。