ハイスペックなお家と、彼の過去
今回、後半からは胸くそ注意です。
またか、またこの浮遊感を味あわなきゃいけないのか…欝になりそうだ…
「ハル?」
「なんだネリィ?」
相変わらず腕に抱きついているネリィが言ってくる。
「あの【魔糸】…魔法使えないって…言ってた」
「あぁ〜あれか?気になるのか?」
「うん」
う〜ん。まぁ隠すほどのものでもないし、まだ暗闇が続きそうだしいいか。
「そうだな、ネリィは魔力がどこにあるか知ってるか?」
「うん…空気にある…魔素を…取り込んで…変換する」
「そう、それが魔力だ、一度魔素を取り込んで自分の体内で自分の魔素と混合させて魔法を発動させる。これが魔法の原理だ」
「うん…本で読んだ」
「そして、自分の魔素は絶え間なく自分の体を巡っている」
「…どういうこと?」
「これは本には書いてなかったか。この魔素はな神経を通って巡っていて、【魔糸】そして【完全操作】を使ってその魔素の活動を止めたんだよ」
「魔素を…止める?」
「そう、魔素が止まってしまえば空気中の魔素と混合できずに霧散する、よって魔法は発動できない。以上だ」
「…なら、魔法を発動してからでも…消せる?」
「う〜ん、出来ない事も無いんだが…その場合は絡まった複数の糸を解くようなめんどくさい作業になるんだよ」
魔法とは、糸を編み込んだ編み物のようなもので、解けないことはない…だが、失敗してしまえば霧散しかけた魔力がどう暴走するかわかったものではない。そういう精密なことを、戦闘中にできるかといえば否でもあり是でもある。
「それは…むずかしいね」
ネリィは苦笑いを浮かべながらそう言ってきた。
「そうだな」
その後、たわいのない話をした後、やっと出口が見えた。
体が光に包まれ、気が付けばそこはどこかの部屋の一室であった。
「どこだここ?また転移ミスか?」
「分からない…とりあえず…【我神の下僕なり、我の声を聞き届けたまえ】…【呼応】」
にしても、この魔法は相手がどんな状況でも話ができるのか?だとしたら、随分と迷惑だな。
「ずるっ…ずるずるずる、んぐ、はぁ、食事中になんだよ」
いま、食事してんのかよ…てかラーメンか?あの外国風の容姿で、ラーメンを食ってたらさぞシュールだろうな
「おいネイ、ここはどこだ?」
「そこかい?そこは君たちのために用意した屋敷さ」
「屋敷だと?」
最初にいた部屋を出ると、そこは廊下だった。長い廊下があり左に6つ扉があり、右に2つ扉があった。そして、右側の中央は吹き抜けになっていて、左右に階段がついている。階段を下りると大きめの扉がありそこは、外につながっていた。
「そう、いきなり、無一文で放り出されても困るでしょ?」
「そうだな、俺なら時空を超えて殴りに行く自信がある」
「…君ならやりかねないからやめて、ほんとに」
まぁ、なんにせよ家があるのはそれだけでありがたいものだ。おれたちは、階段と階段の中心のところの扉を開いた。そこはリビングのような開けた場所でソファーとテーブルが置いてある。ソファーって、この世界にあるのか…ちなみに、アルクルの世界にはなかった。
「えっと…あぁそうそう、屋敷の説明だったね。一階はリビング、浴室、キッチン、食材倉庫、雑多や武器などを置いておく倉庫があって、地下室への階段もあるよ」
「おいおい、食料庫が一階にあって大丈夫なのか?」
「大丈夫、その屋敷には俺が【付与魔法】を使って色々魔改造してあるから、たとえば倉庫には温度調節、各部屋には防音、屋敷自体には不朽と再構築、認識阻害の付与がしてある」
「至れり尽くせりだな」
「だろ〜?感謝しろよ?その家、その世界で売ったら文化遺産どころじゃないからな」
「そこまでか」
てか、屋敷が文化遺産って変だな。
「さて、次は2階だな。2階は、部屋が8部屋あって、うち2部屋が大部屋となっていて、違いは大きさが二倍ってところだけだな」
「それでも十分に広すぎるだろ」
「広いに越したことはないだろ?人恋しくなったら誰か雇えばいいさ」
「…まぁ検討しておくわ」
「さて、次は地下室だ、地下室は魔法錬成室、錬金室、調合室、薬草保管室、そして、小部屋が2部屋。」
「なんのための小部屋だよ」
「さぁ?スペースが余ったから適当につけておいた」
「えらく適当だな」
まぁ、それを加味してもかなり設備がいい。錬金や調合などはアルクルの知識にもあったからあとは方法がわかれば作れし、魔法錬成だって、これからすることには必要になるからな。
「そして庭は屋敷から半径500mは認識阻害の魔法がかかっているから適当にイジリな」
「俺は、ガーデニングはできないぞ?」
「まぁ、何事もトライだよ?少年」
とりあえず庭は放置だな。
「それで?ここから近くの街はどこだ?」
「ん?今お前らどこにいる?」
「リビングだが?」
「それなら外を見てみろ」
「外?」
言われたとおりリビングにある窓から外を見るとそこまで遠くない距離に城壁が見えた、ここか歩いて5~10ぐらいか?
「結構近くなんだな」
「まぁ、近すぎず遠すぎずを考えた配置だからな」
「まぁいいさ、街に行くのは明日になりそうだしな」
「?なんでだ?」
「【呼応】の魔法ってかなり魔力使うだろう」
「おぉ、よくわかったな」
「そりゃあね、ネリィの顔色が優れないからな」
「あぁ、それもそうだな、じゃあそろそろ切るか」
「そうしてくれると助かるよ」
「それじゃ、次に連絡するときは教会に来いよ」
「へいへい、それじゃあな」
「さようなら…アルス様」
「君たちの人生に幸福があらんことを祈ってるよ」
神が祈るって誰にだよ。まぁ、それよりもだ、
「ネリィ、先に休むか?」
「…大丈夫」
大丈夫そうな顔じゃないんたが…
「ダメだ、休め。そして、起きてからこの世界のことを教えてくれ」
「…分かった」
素直に頷くネリィの頭を撫で笑いながら言った。
「よしっ!そうと決まれば部屋割りだな。ネリィはどの部屋がいい?」
「ハルと…同じ…部屋」
「は?」
「私は監視者…対象から一時として離れては…いけない」
「おぉう」
妙に迫力のある顔でそう言われてしまう。しかしなぁ…
「だいじょうぶ…」
「なにが?」
「ハルは…変なことをするひとじゃ…ないから」
「うぅん」
そこまで言われてしまったら仕方が無いな。まぁ、歳の差的にも妹みたいなものだし、大丈夫だろ。
「じゃあ、日当たりのいい左の大部屋を使うか?」
「うん…そうする」
「よし、じゃあおぶるからこっち来い」
フラフラしているネリィをおんぶしながら扉をあけて、二階へと上がって行く。
「…あったかい」
ネリィがそう呟いたが、次には寝息が聞こえてきた。
(なんだかんだで、疲れてたのかねぇ?)
階段を上がり左にある扉を開けると、そこには広くも服や、小さなテーブル、ティーセット、そして大きめのベットが置かれていた。
(やっぱり広いな。家具もそんなになくていいな。これなら、二人いても大丈夫か)
俺は、狭いところが苦手だ…狭いところに行くと我慢できないほどではないが、理性のタガが外れてしまう。
(さて、ネリィを寝かせるか)
ネリィをベットに寝かせながら、やっと一息ついた。
(さて、とりあえず今日はネリィから世界の常識を聞いて、食事をして、風呂に入って、あぁ、後ステータスも見ないとな)
そんなことを考えながら、少し眠ろうと意識を手放し、夢の世界へ落ちていった。
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……お前なんかいらない……
……なんであなたなんかを産んだのかしら……
……なにあのこ、きもちわるいわね......
......みちゃだめよ、たたられるわ......
俺は、望まれない子だった...
虐待が始まったのは生後3ヶ月を過ぎた頃だ。飯は残飯...一日一食食べられればマシなほうだった。この頃はまだいないものとして扱わられるくらいで、死ぬか生きるかのギリギリでいつも生かされていた。
歳が1歳を過ぎた頃から...父が暴力を振るってきた。最初は俺をどけるために少し蹴るだけだったが。すぐにエスカレートしていき、まるでボールを扱うように蹴りを入れてくる...不運だったのは俺の成長スピード、そして異常なまでの回復力をもっていたことだ。
2ヶ月の頃に自意識が生まれ。4ヶ月の頃には自分が何をされているのかを理解した。...理解しているからこそ、抗え無かった...毎日毎日、怨みを積み重ねながら耐え続けた。
母は毎日のように、俺のことを罵倒した
...お前なんかいらない...
...生むんじゃなかった...
...気味の悪い子...
毎日毎日聞き続けているうちに、俺は感情を捨てた。
大きくなり、親達から虐待を受けながらも学校に通えた。だが...そこでもいじめが起きた...
そして俺が壊れたのは、4歳過ぎの頃だった。動物に好かれやすい俺は、中庭で猫と遊んでいた...その時パチンコから帰ってきた父がこっちまで来て...猫を蹴り飛ばした...曰く、「俺の前にいたから蹴っただけだ」と、そして俺は初めて父を殴った。しかし、身長と子供の腕力という途方も無い壁が俺を邪魔した。
父は殴りかかってきた俺をいつも通りに蹴り飛ばした...いや、蹴り飛ばそうとした。猫が父に噛みついたのだ、噛み付かれた父は激怒し、猫を摘み上げ家の中へと持っていった。俺は必死に父を追いかけた。父が入っていったキッチンのほうへ行くと...父が猫をレンジへ入れていた。もちろん俺は止めた!
「父さん!やめて!」
「うるさい!もとあと言えばお前のせいだぞ!」
「僕の...せい?」
父は俺を振り払いながらそう言った。
「そうだ!お前が生きていなければコイツが俺に噛み付いてくることはなかった!お前が生きていなければコイツは死ぬことはなかったんだ!」
「僕のせい?」
「そう!これはお前に対するバツだ!しっかり見ているといいさ!」
そういうと、父は猫をレンジの中へ入れ、摘みを回した。
(やだ、やだやだやだやだやだ!みたくない!)
頭を押さえうずくまっている俺の髪を父は掴んで、持ち上げた。そして、目を強引に開かせた。嗤いながら。
「いいか、これはお前に対するバツなんだ。しっかりと見ておけ。お前が生きているせいでこいつは死ぬんだ。」
レンジが ジジッ と、機械的に音を立てる。俺は必死に父に抵抗した、だが、もがけばもがくほど目に指が食い込んでくる。
「やめてよ...やめて...父さん...なんでもいうことを聞くから...お願いします。お願いします。お願いします」
何度も何度も何度も何度も懇願した。...でも、父は嗤いながら言う。
「何を当たり前のことを言っているんだ...お前は死ぬまで俺達の奴隷だろう」
「ミャー!」
猫が喉が裂けるほど鳴いた...だが、
パンッ
虚しいほど簡単に、そして静かに...猫は弾けた...
「うぅ、うぁぁぁぁああぁぁあぁ!」
「あはははははは!」
絶叫と嗤いがこだました。
「ふぅ、掃除しておけよ。奴隷くん」
(殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してヤル殺シテルコロシテヤルコロシテヤル...絶対に!殺してやる!)
そしてつぎの日、俺は父親を............
お読みいただきありがとうございます。今回、中途半端なところで終わりましたが、別に話を考えていないからとかではないのでご安心を。次話でこの話の続きは書きませんのであらかじめご了承ください。