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殺人鬼の更正転移  作者: Iria
6/19

間違い転移と遥の受難…

転移の魔法を受けて、穴に落ちてから数分…まだ俺たちは落ち続けていた。どんだけ長いんだよ。


この、落ち続けていることによる浮遊感、一寸先も見渡せないほどの暗闇、感じるのは落ちた瞬間に俺の腕に抱き着いて来たネリィの感触だけだ…どうやらネリィは暗闇が怖いらしい…ネリィと俺はよく似ている容姿云々ではなく、心…人としてのあり方がだ。しかし、俺は年を経るごとに歪んでしまった…ネリィには幸福な未来がおとずれるといいな。


「大丈夫か?ネリィ?」

「…大丈夫」


一層強く腕を抱きしめながらそういった。


「そう言えば、今から行く世界のことをネリィは聞いているのか?」

「一応…アルス様からじゃ…ないけど」

「それじゃあ、誰から?」

「知識神…ティファニー=オルクル様」

「?」

「オルクル様は…私に優しくしてくれた…一人」


【閲覧】で調べた時のあの加護の奴か。称号でも知識神の友人って書いてたな。


「どんな奴だったんだ?」

「…んーと?…引きこもり?」

「…は?」

「…部屋からは出なくて…ずっと、本読んでる」

「…よく仲良くなれたな」

「…本、借りに行ったら…仲良くなれた」


案外いい奴なのか?いや、でもネイのような奴が神だしな。


「そいつに、あっちの世界の知識を教えてもらったのか?」

「…そう」

「どんな感じだった?」

「?…教えてもらってないの?」

「いや、あっちに着いたらその世界の知識を与えられるらしい」

「なら…あっちについてからの…お楽しみ」

「…そっか、俺も会ってみたいな…知識神とやらに」

「きっと…会えるよ」

「そうだな」


話が終わった頃、目の前に眩しい光が広がった。


「やっとか」


長かった転落に辟易しながらも、内心喜びを隠せずに口角が上がるのを感じていた。


「さぁ、いくぞネリィ!」

「…うん!」


そして、俺たちは光に包まれた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


目を開けると、そこはまたしても城の中のような内装だった。ネイの家のように神殿のようではなくこっちは、THE・城という感じだ。状況を確認すると次には、膨大な量の知識が送り込まれてきた。頭の痛さに顔をしかめながらも現状把握に努めた。


「にしても広いな…ネリィ、大丈夫か?」

「大丈夫」


いまだに、手は繋いでいるが震えは止まったらしい。さて、改めて周囲を見渡す。城のような内装、仰々しい玉座、その椅子から立って仁王立ちしている人物…あれが魔人というやつか…側頭部から黒い角を生やし紫色の髪、赤褐色の肌、今入ってきた情報と一致する。その男は驚愕に顔を歪めながらもこちらを凝視していた。

そして、玉座とは逆方向、入口の扉のある方には神々しい鎧を身に纏ったイケメンがいる。金色の髪をした短髪をした青年で、あれが勇者というものらしい、3年前に召喚されたらしいがどうしてこんなところに?


「おい!魔王!この後に及んでまだ、仲間を呼ぶ気か!なんて卑怯な奴だ!」

「まて、勇者。こやつはお主の仲間ではないのか?」

「貴様!ふざけているのか!俺の仲間は…もう…糞っ!」

「そうだな、貴様の仲間は我が配下が潰したはずだ」

「そうだ!貴様のせいでタウルにハーミー、ミリーは!絶対に許さんぞ!魔王 ベエル!」

「ちっ!話を聞かん小僧だ!いいだろうそれならのぞみ通り…灰にしてくれるわっ!こいっ!勇者 アーサーよ!」


長い話が終わったと思ったら今度は戦闘が始まった。う〜ん、これはどうしたものか、この世界の英雄と魔王の決闘だしな…手を出すのはどうなんだ?などと考えているとネリィが袖を引っ張ってきた。


「ん?どうしたんだ?ネリィ?」


ネリィは微妙な表情をしてこう言った。


「ここ、私の知ってる知識と…合わない」


ん?どういうことだ、ネリィの知識と合わない世界?それって…つまり…


「違うところに転移した?」

「そう…かも」


俺は今すぐにでも膝をついて頭を抱えたい思いだったがなんとか抑えてネリィに聞いた。


「なぁ、ネリィ…ネイは呼べるか?」

「呼べる…けど…周りうるさい」


ふむ、周りが関係あるのかないのかは知らないけど、うるさいって言うなら仕方ないな。


「なぁネリィ…ここで人を殺したら処罰の対象に入るか?」

「当たり前」

「そうか…はぁ。めんどくさ」


でもまぁ仕方がない、人殺しによる【審判】はかなりきついらしいしな。ここは我慢だ。


「しょうがない、とりあえず動きを止めるか」


勇者と魔王の激闘…こんな絵本の山場にもなりそうな場面を止めるのは心苦しいが、仕方が無い。


(【魔糸】発動)


【魔糸】とは、【完全操作】を習得した時に編み出したスキル、魔力を細い糸状に編み、鋭さはピアノ線を超え、強度は俺のいた世界の技術では絶対に切れないし傷つかないほどだ、それに魔力の質で【魔糸】の性質も変わる。しかも元は魔力だ、【完全操作】で操ることも可能だ。その【魔糸】を100本ほど編み出し部屋中に張り巡らせた。


「むっ!?」

「なんだ!?」


勇者と魔王が所狭しと動き回っていたおかげで【魔糸】が大量に絡みついてしまってた。そして、遥は魔力の質を変えた…毛糸のような性質からクモの巣のように…遥は勇者と魔王に絡みついた【魔糸】を【完全操作】で操った。蜘蛛の巣に飛び込んだ虫のような状態に…


「くそ!動けん!なんだこれは!」

「ちくしょう!卑怯だぞ魔王!配下を使って捕縛するとは!」

「貴様の目は節穴か!我まで捕縛する配下がいるか!」

「む、それもそうだな、なら貴様達は誰なんだ! 」


むー?まだうるさいな…どうしたものかな?


「おい勇者、少しの間黙っているのと喉を焼かれて喋れなくなるの…どっちがいいかな?」

「うぐっ!」


【威圧】を強めにかけ勇者に話をした。


「き…さま、なに…も…のだ」

「答える義理はない、いいから黙ってろ」


面倒になって勇者の頭に蹴りを入れた、数メートル飛んでいった勇者は壁にぶつかり気絶した。


「さて、次は魔王だか…」

「貴様らが何者なのかは知らんし、我では太刀打ちできないことも分かってる…口答えはしないさ」

「うんうん、お利口でよろしい。じゃあネリィ、ちゃっちゃとやってくれ」

「分かった…【我神の下僕なり、我の声を聞き届けたまえ】…【呼応コール】!」


ネリィを中心に展開していた魔術陣が縮小し、手のひらに収まり、光の玉となった。


「ん?もしも〜し?もうヘルプですか?意外とヘタレだねは〜るちゃん」

「おい!この駄神!実体が無いからって言いたい放題言いやがって!大体今回はテメーのせいだぞ!」

「ハル…口が悪い」

「ん?あぁすまん」

「ぎゃははははっ!お前もネリィに頭が上がらないようだな」


畜生!ネイの野郎、今回のもわざとやったんじゃねぇだろうな。


「あぁ〜おもしれ、で?俺のせいってなんだ?」

「アルス様…転移先…間違えた?」

「転移先?お前達いまクレシオンにいるんじゃないのか?」

「いや、いまはアルクルって場所だが?」

「アルクル…あぁ〜あの世界か!えっ!お前ら今アルクルにいんの?」

「…そう」

「…あぁ、ちょっと待ってくれ…」


そういって、ネイの方から何かをいじる音が聞こえた。


「…分かったぞ、原因が…」

「で?その原因は?」

「俺のミスだ(´>∀<`)ゝ」

「…」

「…」


こいつ、どんだけ人様をミスなんかで何回狂わせたら気が済むんだ…もう怒りを通り越して呆れるわ。


「…ネイ」

「…アルス様」

「な〜に?」

「いい加減に「しろ!」「してください!」」

「すいませんでしたっ!」


呼応コール】ごしにも聞こえるほど、土下座をした音が聞こえた。


「あははは、にしてもそこがどこだか良く分かったね?

「お前がくれた特典でこの世界のことが分かったんだよ」

「えっ!発動しちゃったの?あの特典?」

「ん?そりゃあな」


どう言う意味だ?発動したらまずかったのか?…いや、待てよ。たしか、転移した先のこと世界の情報を付与する特典だったな。まさか…


「おいネイ。まさか、もう一度発動しないとか言わないよな?」

「!?」


俺は、【呼応コール】ごしに話しているネイの肩が震えた姿を幻視した。


「…That's right!( •̀∀•́ )b」


…なんだろう…すごく殴りたい。


「いや、目の前にいるとしたらともかく、ここまで離れると流石に難しいんだよ」

「あぁ?転移をミスったのはお前だろうが!」

「ほんっとごめん!代わりに埋め合わせをしてをくから」

「埋め合わせ?」

「そう、その名も【知識欲】と言う称号だよ」

「ん?なんだそれ?」

「この称号はね見たり触れたりしたものの理を理解するという称号なんだよ」

「ほう…それはそれは」


いま、俺の顔を見られたら怖がられること必須だろう…現に魔王の顔が褐色から蒼白にまで変わっているからな。


「ハル…大丈夫…私がいるから」


ネリィがそう言ってくる。本当になんでネイの従者なんかやってんだろうね。


「そうだな。ありがとう、ネリィ」


俺がネリィの頭を撫ででやると目を細めて俯いた。


「ちっ!リア充爆発しろ!」


ネイがなんか言っているが…あっちでなんかあったのか?


「で?話はまとまった訳だが…元の転移先には行けるのか?」

「(ぶつぶつ)…はっ!…あぁ、行けるぞ。すぐにでも行くか?」

「あぁ、そうだな」


と、その前に…解除。魔王と勇者を絡めとっていた【魔糸】を消してやった。


「ふう、やっと動ける…てか、魔法も使えなくなるってどうなってんだ?その糸」

「さぁな、さぁもういいぞネイ…次はミスるなよ」

「OKっ!流石にもう間違えないさ」


そして…また、足元に穴が空き俺達は落ちて行った。

そして、魔王城に残ったのは呆然としている魔王と気絶している勇者だけだった。

やっと、メインストーリーに進むことができます。なかなか、面倒な茶番でしたが、実際魔王と勇者は強いです。ただ、ハルが強すぎただけです。基本でき次第投稿していますので不定期になりますが、次回も見ていただけると嬉しいです。

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