ようやく転移と神様事情
ネリィを慰めてから数分後、ようやく落ち着いてきた。ネリィも最初の無表情に戻っていた。
「いやぁ〜いいものを見せてもらったよ。似た経験をした者同士何か感じたのかな?にしても、さすがハルくんだね見事な手際だ、そうやってハーレムでも作るのかな?ん?」
そう言ってくる、俺はネリィから手を離して
「…【我、無から有を作り、我の知識は凶器なり】」
魔法を詠唱してメスを作り出した。そして、ニヤニヤと笑っているネイの鼻っ柱目掛けて投擲した…が、
「【審判】…GUILTY」
そう聞こえた途端、頭に痛みが走った!その痛みはまるで頭の中で複数の虫が蠢いているかのような痛みだ。
「うっ…ぐっ!」
俺はたまらず、床に転がり頭を押さえたまま蹲った。
痛みは数秒間続き、痛みは消えた。
「なんだ…いまの」
「いまのが、【審判】のスキルだよ♪ハールちゃん♪」
「ハル…神様に…攻撃は…だめ」
そうか、いまのが【審判】スキルか。少しネイに殺意を向けただけなのにあの痛みか。
「てことで、分ったかな?【審判】の凄さが?」
「文字通り痛いほどわかったよ。こんなの、廃人になるレベルだぞ…」
「ハル…大丈夫?」
「やった本人がそれを言うか!?」
「でも…規則だから」
床に座ったままの俺の頭をネリィが撫ででくる。
「…ありがと」
「…ん」
ふと、ネイのほうを見ると…またニヤニヤしてやがった
「いやぁ、初々しいねぇ〜俺にもあんな頃があったなぁ〜…髪があった時だけど…」
ネイがまだそんなことを言っている。いい加減諦めろよ
「そう言えば…アルス様…髪…どうしたの?」
「それがさぁ〜聞いてくれよネリィ!こいつがさ、俺がちょっとハルをいじっただけでさ、殺された挙句髪まで刈っていきやがったんだよぉ〜(しくしく)」
「あぁ?ちょっと待て!いじっただけって…お前、鼻を無くすことがちょっとだけだと思ってんのか!?」
「…はな?」
「思ってます!(`・ω・´)」
「てめぇ、神だからって何やってもいいと思うなよ!」
「神様だからいいんだも〜ん」
「んだとゴラァ!」
「…二人とも」
ネイと口撃を繰り広げているところに、底冷えする様な声がとどいた。ネイと一緒に声のする方を見てみると、相変わらず無表情だけどいつもより威圧感のある雰囲気でネリィが見上げていた。
「…二人とも…正座」
「いや、ちょっと待ってネリィ、俺は悪くないぞ、むしろ殺された分ひがいし「アルス様も…正座」…ハイ」
ネイ…お前神様だろうが…
「…なんでこうなったか…分かる?」
「はい先生!」
「…なに?…アルス様」
「ハルちゃんが俺の髪を切ったからだと思います」
なんていうか、傍から見ると子供に叱られている親みたいでシュールだな。
「…ハル?」
「ん?なんだ?」
「なんで…アルス様の…髪を切った…の?殺して…まで」
ふむ…なぜかと言われたら憂さ晴らしとしか言いようがないんだが。それを言ったらまた、【審判】をくらいそうだしな。ここは、三十六計逃げるに如かずだな。
「これはな、俺の恩返しなんだ」
「…恩返し?」
「はぁ?お前何言ってんの?どうせあの時はうさば「アルス様…うるさい」…スイマセン」
「で?…ハル、どういうこと?」
「簡単なことだよネイの髪型が似合ってなかったから切ってあげただけだよ。一度殺したのも、コイツが逃げるからだ。だから、感謝はされど怒られるいわれはないよ」
(そんなことで、殺されてたまるか!)
ネイはそう思ったが言葉にできなかった。なぜならネリィはほかの神たちと交友が深いのだ。特に、女神がやばい、あいつは他の神との交流が広いし、情報を広げる早さが半端ではないのだ。
(今回のことがバレたら…百年は弄られる!ちくしょう…俺、神様なのに…)
「だ…そうですよ…アルス様」
「うぐっ」
「だけど…殺すのは…やりすぎ」
「むっ」
「だから…二人とも謝る」
え〜そうきたか、確にそれが一番早いが…なんか釈然としない!ネイだって嫌だろうに…
「すいませんでしたぁー!」
………えぇ〜、そんなにネリィが怖いのか?従者なのに…しかし、まぁいいか、ネイのこんな必死な姿も見れたし、ネリィが今にもスキルを使いそうだし。
「いや、こっちこそ悪かったな、流石に殺すのはやり過ぎだったよ」
「うん…一件落着」
ほんと疲れる。
「さて、そろそろ、転移をはじめるか」
「そうだな、ネリィは挨拶とかいいのか?」
「もう…してきた」
「そっか、じゃあやってくれネイ」
「オッケー」
そうネイが言うと、ネイの手に魔力が集まり始めた。
「じゃあ最後に言っておく、あっちに行ったあと少しの間は俺と話ができるから。わからないことがあったら言ってくれ。教会かどっかで俺を呼んでも話せるからな。」
「お前暇なんだな...」
「その哀れみに満ちた目をやめろ」
「へいへい、それじゃあ、またなネイ」
「行ってきます...アルス様」
「あぁ、またな」
ネイがそう言ったあと、ひときわ魔力が輝いた...そして、足元に穴があいた。
「は?」
「...え?」
俺たちは穴に落ちていった。
「もっと他に飛ばし方なかったのかぁ!」
俺の叫び声は届いただろうか...
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
side ネイ=アルス
遥たちが転移してからすぐあと。
「あの子達行ったの?」
後ろから若い女性の声が聞こえた。
「ん?フィアか?」
振り返れば、フィア=アンセンはネリィに加護を与えた女神だ。長い金髪を腰の辺りまで伸ばした女性がいる。瞳の色は銀色で、どこかあどけなさが残るかををしている。10にが10人振り返るほどの美女である。
「行ったよ、ハルもネリィも」
「そう...あの子..なんて言ったかしら」
「小鳥遊 遥のことか?」
「そう、その子...ネリィと一緒に行かせて大丈夫だったの?...主にネリィが」
どうやら、ネリィの心配しかしていないらしい。
「大丈夫だよ。性格は捻くれているし、おかしな性格をしているが、あの二人は似た者同士だからな」
「なんか...大丈夫じゃないような気がしてきわ」
「大丈夫だって!君と俺の加護だってあるんだし」
「...それもそうね」
フィアと俺の上げた加護は、その人が幸福を願えば絶対に叶うというチート性能だ。生半可なことでは覆せない。
「でも、あの遥って子...私もステータスを見たけどLUCがひどかったわよ」
そう、本来LUCはマイナスにはならない、マイナスなんかになった日には、まさに歩く災厄と呼ばれるほどひどいものだ。
「それに関しても、俺がLUCを引き上げる加護を与えたからな、大丈夫だ..問題ない。あいつには今度は幸せになって欲しいからな」
「そ...そう。私も加護を与えたんだけど、いらなかったかしらね?」
「いや、ある分には邪魔になることなんてないだろ。しかし、珍しなお前が加護を..しかも男に与えるなんて。どんな加護を与えたんだ?」
「な・い・しょ・よ☆」
「...そうか」
聞かないほうがいいような気がしてきた。
「ところでネイ?」
「なんだ?」
「あなた...その頭どうしたの?」
「うん?」
あっ!忘れてた!あいつにまるハゲにされていたんだった!さてどうごまかす...
「これは..あぁ~イメチェンさ!」
顔が整っているだけあって、髪がないとかなり違和感のある顔でニコッと笑ってみせた。
「そう」
フィアが素っ気ない顔で言ってくる。これはまずい
「ねぇ〜ネイ?私、今すごく下界のスイーツが食べたい気分なんだけど」
「な、なんで俺が…」
「ティファにも言っていいのかな?」
チィファとは知識神のことで、俺をパシってくるもう一人の神だ。あいつは、知識神だけあって毎日、自室の司書室にひきこもっている。だが、今はそんなことはどうでもいい、これ以上噂が広がる方が問題だ!
「分かった、すぐに行ってくるから、誰にも言うなよ?」
「分ってるわよ♪」
「ちくしょう…」
俺は、下界で使う硬貨を持って出かけた。髪が元どうりになるまで2.3日それまで耐えればいい…そう、俺の物語はまだ、これからだ!
だが、俺は失念していた…フィアが約束を守ったことなんて…ほとんど無かった事に…
ようやく神界からでました、ネイがフラグを立てていた気もしますがまぁ、いいでしょう。
次回は、きちんと異世界やるのでお許しを。