監視者
「さて、まずは神の加護についてお話をしたいと思いま〜す」
「そうだな、どっちかって言うとそっちの方がわからないことが多いな」
神の加護といっても、何か意味があるのか?神からの加護と言ったらあれか?恋愛成就や学業成就、家内安全みたいな?
「みたいなじゃなくて、そんな願掛けじゃなくてちゃんと身に付くものだから。神様なめんなよこの下等生物」
「なんで上から目線?あぁ、そういえば神様だったなお前」
「忘れられてたのか!?」
あぁ〜言葉をミスったな…また、落ち込んでるし…てか、落ち込みすぎじゃね?あいつインテリジェンス(INT)かなり高かったよな…はぁ、めんどくさい。
「いや、冗談だってネイの凄さは知ってるからさ、あの…ほらさ、ネイってさなんか…すごいじゃん…な!」
「こんな心のこもって無い励まし初めてだよ!!」
おぉ、立ち直った。
「てか、心読めるの知ってるよね!それとも、知ってて心の中で罵倒してたのか!?」
「あぁ〜うん、そうだね」
「会話のキャッチボールをしようよ!」
と、言ってきたので胸を張って言ってやった。
「無理だ!俺はドッチボールしかできないからな!」
「なんで胸張ってんの!?てか、ドッチボールってなに!?当てんのか、躱すのかどっちだよ!」
「躱しながら一方的に当てる」
「会話をしようよ!」
ネイがまだ言ってくる。
「分かったよ。もういいからさっさと加護の話に戻ろうよ」
「お…おう、急に真面目な話に戻さないでくれる?」
と、言ってくるがスルーだ。
「加護か、直訳すると(神仏が力を加え護ることby 統合辞書)だが?」
「なんか君って地味にボケてくるよね。まぁいいや、そうだねその認識でだいたい合ってるよ。正確には護るのは神じゃなくて加護を受けた本人だけどね」
「ん?どういう事だ?」
「つまり、身を守れる力をやるから自分の身は自分で守れと、いうことだ」
「身もふたもないな」
「そうだな、だが加護自体は凄いものがあるんだぞ…その逆もあるが」
「逆?」
「ツッコミが鋭くなる加護とか、顎が長く鋭くなる加護とかね」
「なにそれ、呪い?」
そんな加護を受けてどうしろと?ツッコミを鋭くして相方を殺せと?顎を伸ばして相手を刺せと?
「まぁこんなのは、神様が遊びで作った様な加護だから、十中八九貰わないさ」
「そうだな、そんなの貰ったら4階の窓からI can flyしたくなるな」
いや、一度くらいなら凶器として活用したいような、ないような…うん、ないな。
「それでだ、普通の加護はな…あぁ、見た方が早いな、ちょっとステータスプレートを見てみ?」
俺は胸ポケットに入れてあったプレートを見た。
小鳥遊 遥 (17)
種族 人族
職業 高校生
神の加護
統制の加護···INTに大幅な補正、鼻が無くなる
HP 179/179
SP 70/70
MP 300/300
STR 174
DEF 62
INT 636(500up)
DEX 69
AGI 176
LUC -15
スキル
【閲覧10/10】
称号
神に殺された男 神の遊ばれる男
……まず確認したあことがある。俺は近場にあった鏡台に駆け寄った。そこには、黒い長髪をひとつに結び、目つきが悪く、そこそこ整った…鼻の無い顔が写っていた。
「…ふぅ」
「…ププッ…うっ、ハァハァ…ふふふ、くっ!あっはははははっ!ひぃ〜ぃっ!あ〜腹いて〜、何その顔おかしあわ!あははは!例のあの人かよ、ハリポタか!くすす」
…とりあえず笑うか。俺が満面の笑みを浮かべるとネイの顔が凍った。
「さてさてさて、ネイくん君は何のためにこんなことをしたのかな?(ニコニコ)」
「あぁ〜そのですね、ちょっとしたお茶目と申しますか。そのぉ〜ですね。あのぁ〜はるちゃん?目が笑ってないよ?あはは…」
「…(ニコニコ)」
「いや〜ねっ?これだけ分かり易い方法もないでしょ?それともなに?顎の方が良かっ…た?すいませんほんとすいません」
「…(ニコニコ)」
ピロンピロン♪
頭の中で音が聞こえた。
「一定以上の殺気を確認、【威圧10/8】を習得しました。
凶器の生成法に一定以上の知識を確認【生成魔法(武器)10/7】を習得しました。
一定以上の怒りの感情の昂りを確認【炎魔法10/10】を獲得しました。
感情・表情・仕草・魔力の隠蔽を確認【完全隠蔽10/10】を習得しました。
感情・魔力のコントロールを確認【完全操作10/10】を習得しました。
称号 復讐する者 炎の賢者 人間武器庫 魔を司るもの スニーキング・ストーカー を入手しました」
と、抑揚のない声で流れると同時に、膨大な知識が流れ出した。
「…なるほどな、【我、無から有を作り、われの知識は凶器なり】」
そう唱えると、俺の手にはイメージどうりの真っ黒なメスが収まっていた。そのメスからは赤黒い靄が垂れていた。
「ちょっとまて、それはやばい、ホントにヤバイって、てかなに、心が読めなくなったんたけど…」
「…さて、つぎは、【我、求めるは爆炎、全てを灰へと還せ】」
「ちょっ…すとっ…まってって!」
ボガンッ!ズドンッ!バギッ!
目の前が一気に真っ赤に染まった…爆風も半端ではないが、俺にはその余波が全くきていない。そうイメージしたからだ。そして予想通り5秒後に爆炎は収まり一人そこに立っている人影へ肉薄した。
「げほっげほっ!…ヴぁ〜ゲホッ!…あ〜、畜生、肺炎になったらどうしてくれんだ…っ!」
ネイがむせ込んでいる隙に、思い切り頭へメスを水平に薙いだ、…だが
「っ!と、甘い甘い、一応言うけど俺ってば神様だよ」
俺の薙いだ右腕を掴んでドヤ顔で言ってくる。その脳天に右手に持っていたメスが刺さった。魔力で糸を作ってメスに繋いでおいたのだ、その糸を魔力で操り先に繋いであるメスを動かしたのだ。
「ざまぁ」
俺はそう言うと、倒れていくネイの体を受け止め、もう一本のメスを取り出した。ネイには【肉体修正10/10】のスキルが有ったので30秒もしないうちに再生するだろう、目を覚ます前に…こいつの髪を刈る!
どこか、小さい男だった。ちなみに言うと脳にメスを刺しただけでは、死ななかったので、脳幹と大脳を中心にぐちゃぐちゃにしておいた。
・・・・・・・・・・・・・・・
「うっ…う〜ん、あぁ〜死んだ、死んだ。はぁ〜これで分かったか?俺は殺せないぞいくらお前でもな」
そう言って、頭を掻こうとしたら…あるはずのものがなかった。
「へ?…あれ?おかしいな?俺の頭にあったあのフサフサはどこに?」
そしてネイは気付いた、遥の目的に。
「そうか、お前の目的はこれか…俺を殺せないことが分かっていながら攻撃した理由は」
ネイは瞳に涙を蓄えながらこちらを見てそう言った。
だから、俺は
「その頭似合ってるぜ!d('∀'*)」
「ふっ…なくなっちまったぜ…なにもかもよ…」
「そして、ネイは真っ白になって動かなくなった…完」
「勝手に話を終わらすなっ!」
「あれ、まだ元気じゃないか?まぁいいさ、俺の気は晴れたからな!」
「そうか、それはなによりで…」
「だが、この加護は外してもうぞ」
「分かった、また暴れられても困るからな…もう失うものもないがな」
ネイがそう言うと、体から何かが抜けていく感覚があった。そして、鼻を触ってみた…よし、ちゃんとあるな。
「あぁ〜疲れた。えぇっと?あぁそうだ、加護のことはもういいよな?」
「そうだな、加護がその神の気分で変わるということもよくわかった」
「そうか、では次が最後だな監視者のことだな」
監視者…正直これが一番分からない。神様が審判役として送り込むくらいだ。神族関連のやつではないと思う。
「監視者は簡単に言えば元人間だ」
「元人間?」
「そう、生物としての生を終えた時にある条件を満たした生物が監視者…もとい、神の従者になるんだ」
「聞きたいことはいくつかあるが、生物ということは人ではない可能性も?」
「あるぞ、だがさっきの言った条件を満たすためには、ある程度の賢さが必要になる。よって、知性のない生物は従者になれないんだ」
「条件ね、神というと信仰とかか?」
「そうだ、生前信仰していた神のもとに従者として迎えられる。しかし、信仰心が高いこと、生前で凄惨な不幸があり死んでしまった人、生涯をかけて信仰をしてきた人、というのが条件だ」
信仰心か、てことは、従者が少ない神もいるのか…ん?待てよ?
「ネイ、お前の従者はどんなのだ?」
俺は、意地の悪い顔で聞いた。
「…おまえ、分かっていて聞いてるだろ?…まぁいい、答えてやろう、俺に従者は確かにいる。だが、お前が想像しての通りホントに数人、数匹だ。というか、俺自体、本来存在しない神だからなこんなにいるだけでも嬉しいことだ!」
と、胸を張って言っていた…だが、目尻には涙が溜まっているのを俺は見逃さなかった。ふむ、流石に悪いことを言ったかな?
「そうか…大丈夫だ、転移先でお前のことを広めてやるよ」
と、肩に手を乗せて笑ってやった。
「おまえ…人の髪を刈ったり、人の家で爆炎を起こしたりしてたけど…実はいいやつなのか?」
いや、全体的に俺で遊んだお前が悪いだろ。
「まぁいいさ、俺言ったことは守る男だからな」
「そうか…そうだな!うん、ありがとうな遥!」
「おう!」
男どうしの間に謎の信頼感が生まれた時だった。
「さて、そうと決まったら監視者のことだな!お前に同行する監視者を呼んであるから、そいつに詳しくは聞いてくれて」
「呼んであるって、何処に…(コンコン)?」
魔法で荒れ果てた部屋の入り口の扉からノック音が聞こえた。
「入っていいいぞ」
ネイがいつの間にか玉座に座り直していた...格好だけでもしっかりしたいんだな。でも、この部屋の惨状を見たら意味がないだろ...
「...失礼します」
扉を開けたのは、背の低い少女だった。
「遥、この子がお前の監視者として同行する...」
「ネリィ=アルファン...です」
「...よろしく」
覚悟はしていたが、やっぱり慣れない、ネイは最初から慣れ慣れしかったからあんまり意識せずに済んんだけれども...これはダメだ。とりあえず、(スキル【閲覧】発動)
ネリィ=アルファン (10)
種族 神人族
職業 従者
神の加護
統制の加護...精神、魔力の安定.幸福の訪れ
女神の加護...LUCの向上.災厄を寄せ付けない
知識の加護...INT・MPに大幅な補正.魔法スキルの付与
HP 75/75
SP 40/40
MP 540/540
STR 50
DFE 40
INT 405
DEX 120
AGI 60
LUC 150
スキル
【閲覧10/5】【審判10/10】【炎魔法10/8】【水魔法10/6】【土魔法10/3】【風魔法10/7】【光魔法10/6】【闇魔法10/9】【魔力操作10/8】【無詠唱10/6】
称号
耐え抜いた少女 統制者の従者 女神の寵愛を受けるもの 知識神の友人 After Happy Life
ネリィは、身長が120~130くらいで、顔はまだまだ子供のあどけない顔だ、瞳の色が真っ赤で銀色の髪を肩口で揃えている。服はローブを着ていて分からないが、ここの世界では、ローブが正装なのか?ネイも着ているし?ステータスは魔法関連は高いな…加護のせいか?
「どうだ?普通の人よりもかなり強いだろ?まぁ高いと言っても元人間だからな」
「そうだな、魔法に関してはかなりだな、あっちち転移すればレベルも上がるしこれ以上強くなるな」
だが、他が結構低い、たしかに10歳の少女のステータスは見たことがないがそれでも低いことはわかる。
「まぁ戦闘をさせるわけでもないし、大丈夫だろう」
「ネイはやっぱり心配か?」
「そりゃあな、でもな、俺と女神がネリィに与えた加護はその人を幸福へと導く加護だ、どう転んでも悪いことは起きないのさ、それに知識神に魔法を習ってたみたいだしな」
なんだその加護…ある意味能力値が馬鹿みたいに高いよりも高性能じゃないか。
「てか、そんな加護があるなら俺にもくれよ」
「わかってるわかってる、そうするつもりだ」
「…あの」
「ん?なんだ?」
ネリィが服を引っ張ってくる。
「あなたが…私の…対象?」
「ん?あぁそうだ、俺の名前は小鳥遊 遥…ハルでいい」
「ハル…わかった、これから…よろしく」
ネリィが頭を下げてくる。
「これから一緒に生きていくのに頭なんか下げんな」
「分かった…じゃあ、ひとつ聞きたい…」
「なんだ?」
「なんで?…目を見ないの?」
「うっ!」
何故に今その質問?てかネイ、てめぇ笑ってんじゃねーよ!
「ねぇ、…なんで?」
「うぐっ」
ネリィが目を合わせようと距離を詰めてくる。
「…私の…こと、嫌い?」
上擦った声でそう聞いてくる。…はぁ〜観念するか。
「いや、そうじゃなくてな…俺な、実は対人恐怖症なんだよ…」
「たいじん…きょうふしょう?」
そう、俺は人と目を合わせることができない…最も酷かったのは3歳の頃だった、あの頃は視覚、嗅覚、聴覚から人と感じるもの全てに恐怖していた…。だが、いまは、人と話すなら大丈夫だ、しかし目を合わせることだけは出来なかった。いつの間にか昔を思い出していた俺は、すこし、視界が滲んでいた。
「…ごめん…な…さい」
「!?」
ネリィをみると…泣いていた…
「ちょっ!えっ!なんで泣いてるの?」
「私は…ハルに…辛い…ことを、思い出させた」
「…はぁ。気にすんなよ…俺は大丈夫だ、だからな?泣き止みな。俺は怒ってないから」
嗚咽が止まないネリィの頭を撫でた。すると、ネリィが抱きついてきた、このとき、俺はどうしようもなく、頭を撫で続け(服がびしょびしょになったな)と考えていた。
少し長くなってしまいましたが、やっとヒロイン登場です┏( ^o^)┛次の話では転移をする予定ですので、ご期待下さい。