リア充爆発しろ byギルマス
ゲルトとの話を終えて、遥は一階へと降りていく。
(にしても、金貨3枚ぐらいで半年か...400枚もあったら3人で4〜50年は過ごせるな)
屋敷(今は【空間魔法】の中だが)には金貨400枚、銀貨250枚、銅貨150枚ある。全大陸共通で同じ硬貨なのはありがたい。元の世界のようにいろいろな貨幣があると換金が面倒だ。
(なんにせよ、ネリィたちを迎えにいかないとな。もうすぐ3時間だ)
そんなことを考えながら一階の扉を開ける。部屋に入った時と同じく、昼間っから飲んだくれている人、掲示板の前でウロウロしている人がいた。しかし、ギルドの入り口にネリィがいた。目元を真っ赤に泣き腫らし、誰かを探していた。なにかあったのか?
「ネリィ、どうしたんだ?」
「!...ハル!」
ネリィに声をかけると涙を流しながら遥の元まで走ってくる。遥の近くまで来たネリィは遥に飛びついた。
「おっ...と、なんだ?なにかあったのか?」
「うぅ...ひっぐ...」
「あのぉ...ネリィさん?」
泣きじゃくるだけで何も話さないネリィの頭を撫でながら聞く。
「ネリィ...落ち着いて」
「...ハル?」
「泣いてちゃ分かんないからさ...な?」
「...うん」
遥のお腹あたりに顔をうずめ腰に手を回して抱きついているネリィ、そんなネリィの頭を撫でながら泣き止むのを待つ遥。周りの人達はそんなカオスな状況を混乱しながらも羨ましげに見ていた。
(唯一これ以上大変なことにならないのが救いだな)
そう思った瞬間、ギルドの扉が勢い良く開かれた。開いた人物を見て思った。
(...なんでこのタイミングで)
そう、扉を開いたのはランだった。
「いた!遥!」
「次はランか!」
ミーチェに服を選んでもらったのかよく似合っている服に着替えたランが恐ろしい速さでネリィの隣に抱きついてきた。混乱していた人達は扉の音で正気に戻り、遥に嫉妬の眼差しを向ける。どうしてこうなった。
「お〜い、ラン、何があったんだ?」
「なにがって...なにも?」
「なぜに疑問系...てか、何もないなら店で待ってろよ」
「え〜...だって...」
ネリィの方をチラチラと見ながら目で訴えてくる。ネリィはまだ泣き止んでいなかったので頭を撫でている状態だ。そして、ランの羨ましげな目から察するに。
「...はぁ」
「!...えへへ」
ランの頭も撫でると、ランは猫のように目を細めさらに抱きついてきた。だが、まだ一人...いや、一匹いたのを忘れていた。
「キュイ!」
「いてっ!おいリン!頭をかじるな!」
「キュウ!」
リンが避難げな鳴き声を発する。しかし、両手は使っているのでどうすることもできない。二人の子供に抱きつかれ、狐に頬をかじられ、周囲からは嫉妬と羨望の目で見られる。
(誰か!助けてくれ!)
心の中でそう叫ぶと、後ろから扉が開く音がした。
「...何してるんですか」
「女神よ!」
出てきたのはさっきまで一緒にいたシーンだ。
「えっと...あ、忘れ物をしてしまいました」
「ストープッ!待って、話があるんです!」
「...話?なんですか?」
「こっちの子を冒険者登録したいんです」
ドアノブに手をかけていたシーンを呼び止めランの話をする。
「登録ですか。...仕方ないですね、仕事ですし。では、ランさんこちらへ」
「分かりました、行こう、遥」
「ん?そうだな、ネリィは歩けるか?」
「...うん」
正気に戻ったのか、俯きながら下がっていく。こういう時はそっとしておいた方がいいはずだ。
「それでは行きましょうか」
シーンは扉の奥へと戻り遥たちを招いた。
冒険者の登録は滞りなく進み、ランは晴れて冒険者になった。
「これで終了です。出来上がるまで少々お待ちください」
「へいへい、いくぞ二人とも」
「はーい」
「うん」
部屋から出た遙たちはギルドの受付近くの席に腰をおろし上書きが終了するまで待つことにした。
「そうだ遥!どう?この服」
ランがその場でクルッと周り服を見せてくる。活発なランらしい動きやすそうなデサインだ。
「うん、とってもよく似合ってるよ。ランらしいね」
「えへへ、ありがと!」
ランが抱き着いてくるが片手でいなし、話題を変える。
「そう言えば、二人とも。その紙袋はなんだ?ミーチェの所にあったやつだよな?」
そう聞くと目に見えてビクッと驚き、二人で目を合わせて、笑いながらこちらを見る。
「「秘密!」」
「...そうか」
二人の気迫に気圧されながらも、遥は肩をすくめミーチェに聞くことにした。そして、十分後にシーンがランのステータスプレートを持ってきた。
「ランさんこちらをお返しします」
「は〜い、これでみんなと一緒だね」
「はいはい、そうだね」
「ぶ〜、反応が薄い!」
「あぁ、それとハルさん」
何か適当な依頼を受けるために掲示板の方へと向かおうとしていると、後ろから声をかけられた。
「なんですか?」
「ギルマスから伝言です」
ゲルトから?あの放任主義っぽいやつがねぇ。
「なんと?」
「(リア充爆発しろ)だそうです」
「てめぇどっかで見てんだろ!」
ギルド中にこだまするように大声で叫んだ。
「ハルさんギルド内ではお静かに」
「ハル、うるさい」
「耳がぁ〜」
「キュイ!」
怒られてしまった。...ランとリンは耳を押さえてうずくまっていたが。
「はぁ、すんません。とりあえず、依頼を受けてみるか、昼食にするかだな。...どうする?」
「...昼食」
「ごはーん!」
「キュ!」
リンは分からないがみんなお腹がすいているようだ。
「決まりだな、じゃあ一回ミーチェの店に戻るか」
「そうね...勝手に出て行ったお詫びもしないと」
「やっぱり飛び出してきたのか...」
まぁあの取り乱しようを見れば一目瞭然だ。
「それはもう、脱兎のごとく走り去っていったよ」
「なんでそんなに急いでたんだ?...て、言っても答えないよなぁ」
結局のところ、抱き着かれて泣きやんでから何を言われたわけでもない。
「...」
「...まぁいいや、それはミーチェのところで聞くとして。それじゃあ、また後でなシーン」
「ばいばい」
「まったねー」
「キュイキュイ」
「もう問題は起こさないで下さいね」
「なんのことかねぇ?」
「...はぁ」
最後にシーンのため息が聞こえたが気のせいだろう。俺は悪いことをした覚えがないしな!などと自分を正当化しつつギルドから出ていく。
ミーチェの店までは歩いてすぐの位置だ。途中で紙袋を【空間魔法】でしまっておこうか?と、聞いたが二人は断った。なぜそこまで?とも思ったが二人とも女の子だ。俺の配慮が足りなかったのだと納得した。そんなやりとりをしていると、すぐにミーチェの店に着いた。
「ミーチェいるか?」
「はいはーい、あらぁ?ハルちゃん帰ったの?」
「まぁな、ギルドに二人が飛び込んできてな」
「あらあら」
ミーチェが二人に視線を送り、二人は顔を赤くして俯いている。どんな意思疎通だよ。
「まぁなんにせよ、食事は済ましたか?」
「いいえ、まだこれからよ」
「それは良かった。良ければ一緒に食べない?」
「別にいいけど...どこに食べに行くの?」
「できらばここで食べたいんだが...」
「ここで?まだ料理は作ってないわよ?」
ミーチェが怪訝そうな顔で見てくる。それもそのはず、いま遥は何も持ってない状態だ。
「あぁ、俺が作ったやつがあるんですよ」
「...どこに?」
「ここに」
遥は大きめの包みを取り出した。
「!?」
ミーチェはよほど驚いたのか椅子から落ちた。
「そんなに驚かなくても」
「驚くわよ!なに、それ!魔法!?」
「そうだけど?」
「そうだけど...じゃないわよ!そんな魔法見たことないわよ!」
「魔法はイメージだよ?やろうと思えばできるさ」
「...はぁ」
ミーチェは呆れたようにため息をつき言った。
「あのね、今みたいな魔法を使った人がどうなったか知ってるでしょ?」
「...どうなったんだ?」
驚いたように目を見開くミーチェ。少し疑問に思ったのか分からないが逡巡した後に答えた。
「...例外無く作った魔法に取り込まれたわ。炎なら燃え尽き、水なら溺れ、さっきみたいな空間ならどこかへと飛んでいったわ」
「ふぅん」
「...興味なさげね」
「そうだな、原因も分かってないならどうしようもないからな」
まぁ、何にしても今は使えているし問題ないだろう。
「それよりも、昼食は食べるのか?」
包みを開け中身を見せる。今回は唐揚げに厚焼き玉子など、弁当のような感じで6箱用意した。
「あら、美味しそうね。ネリィが作ったの?」
「...ハル」
「ハルちゃんが!?」
「何だその驚きようは」
口にてを当て目を丸く見開いてこっちを見てくる。
「...いえ、ごめんなさいね。まさか、料理ができるとは思ってなかったから」
「遥の料理はとっても美味しんだよ!」
「うんうん」
なかなかに持ち上げてくる。
「あらあら、ならご相伴に預かろうかしらね」
「口に合うと嬉しいな」
結果からいうと、弁当は大好評だった。ミーチェとネリィが凄まじい勢いで弁当を2つ平らげた。ランは一つ半ぐらいで遥は半分だ。それもリンと半分だ。
「ハルちゃん...食べ無さすぎでしょ」
「ハル、食べないとダメ」
「遥は痩せすぎ!」
「キュイキュイ!」
「え〜...」
4人?に怒られてしまった。最近は怒られ過ぎな気がする。
最近違う小説を書いてみようかと思ってます。まぁ、あまり設定とかは変わらないのでどうなのかと思うんですけど。