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殺人鬼の更正転移  作者: Iria
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まさかのギルマスと報酬

天を仰ぎ、両腕を広げて言ってくるガスマスクの男。


(ここでとる行動は一つだ)


そう遥は結論づけると、扉を静かに閉めようとした…だが、仮面の男がテーブルを飛び越えて扉の間に指と足を挟んで止めた。


「なぜだ同士よ!なぜ入ってこない!」

「すみません間違えました。だから手をどけて扉を閉めさせてくれ!」

「ふははは!そんな要求が通ると思っているのかね!?さぁおいで、一緒に仮面についてじっくり…ねっとり…ぬっちょりと語り合おうではないか!」

「そんな音がする語り合いなんか誰がするか!」

「ははは!冗談だ、ちょっとした冗談だよ!3割がたは冗談さ!」

「半分以上本気じゃねぇか!」


そんなやり取りをしていると、後ろから足音が聞こえた。


「…何やってるんですか?」

「いいところに!シーンさん!この変態止めてくれ!」

「変態とは失礼な!私は人よりちょっと趣味が特殊なだけだ!」

「それを変態と言わずに何と言う!」

「私にはどちらも変態に見えますけどねぇ」

「君たち失礼だな!私は変態じゃない!強いて言うならば…紳士…かな?」


目もとまでかかる前髪を左手でかきあげる変態。美形なら絵になる仕草だが、残念ながらガスマスクの変態がやっても残念なだけだ。


「というかお二人とも、そろそろ本題に入りたいのですが?」

「…本題?仮面について語り合うことかい?」

「違います。そちらのもう一人の変態さんのことで、です」

「おい、変態って俺のことじゃないだろうな!」

「ほう、同士が何かをやらかしたのかね」

「えぇ、詳しくは中で」

「おい、無視か!お〜い」


どうやらシーンは徹底的に無視するつもりらしい。


「では、中で話しをするとしようか。紅茶と珈琲どっちがいいかね」

「私は紅茶で」

「…珈琲で」

「…君たち…合わせるってことを知らないのかい」

「「知りません」」

「…そうかい。とりあえず、淹れるまで待っていてくれ」


いまだに扉の隙間から話していたマスクは扉を開き中へと引き入れる。


「そういえばハルさん、その首に巻いているのって生き物ですか?」

「あぁ、そう言えば忘れてたな。ほらラン起きろよ」


ランの頭をこずくと、数回身をよじって遥の頭に登っていく。


「なぜそこに登る」

「キュウ?」


と、頭をひねる。


「見たことのない生き物ですね」

「ほぅ、珍しいものを連れてるな同士よ」


珈琲と紅茶を持ってきたギルマスはランのことを知っているように話す。


「ん?こいつを知ってるのか?」

「まぁ、その子と言うよりはなんなのか知っている。と言ったところかな」

「へぇ、なんなんですか?」

「この子はねアヤカシと呼ばれる生き物さ」

「アヤカシだと」


妖という単語自体は地球にいた頃にもあった。が、地球では妖というのは空想上の生き物だった。


「そう、アヤカシ。この大陸ではなくリースの大陸に住む生き物だよ。本来はあまり外には出ないんだかね」

「さっきの言い方だと、アヤカシと魔物は違うのか?」

「あぁ、生まれ方が違うんだ。まず、魔物は空気中にあるある一定以上の魔力だまりから生まれるんだ。その魔力だまりの大きさに応じて魔物の強さが変わるのさ」

「魔力だまりとは?」

「魔力だまりは魔法の行使、生物の死などによって発生するものさ」

「ん?それなら魔物は減らないのか?」


魔物を生み出す魔力だまりの発現が、魔法・生物の死なら、魔物を殺すことによって増え、結果的に減らないことになる。


「そうなるね。そのためのぎるどでもあるんだけどね。」

「イタチごっこだな」

「そうなるね。それに対してアヤカシは、人が強く想像し、それが形となった生物さ。正直な所全く分かってないってのが現状だね」

「出現条件は?」

「それもランダム、まばらさ」


全く解明されてねぇな…。


「それはともかく、そろそろ自己紹介でもしますか」

「そうだな、じゃあシーンギルマスの紹介をしてくれ」

「なんで私が…はぁ、この人はギルドマスターのゲルト・シューイン…マースにその人ありと言われたほどの人です」

「おやおや、随分と持ち上げてくれるねぇ…改めて、私の名前はゲルト・シューインだよ。よろしく同士よ」

「だから同士じゃねぇし、てか、強そうに見えないけどギルマスなら強いのか?」

「この人は性格はともかく元Sランカーの槍使いで大陸屈指の強さです。まるで柳のように攻撃を躱し、その痩身から繰り出される槍は神速とまで言われる生きた伝説の人です」

「まぁ、その…うん、そろそろいいんじゃないかな?」

「さらにですよ!ギルマスはかの100年前に召喚された勇者とともに旅をした騎士の孫!まさにサラブレッドなのです!」

「やめて!そんな親の七光りみたいに言わないで!」


ゲルトは両手を顔に当てて床を転げ回っている。


「まぁ、実際に見てみないと分からんけどな。俺はハルカ…ハルって呼んでくれ。ランクはFだ」

「よろしく、同士ハルよ。…にしてもFランクにしてもう問題を起こしたのか」

「そのことについてお話しますので、ゲルトさん早く座ってください」

「私が上司なのに厳しいよね君」

「私のことはいいですから、とりあえず問題なのは彼のほうです。これを見てください」


シーンはゲルトにメモリープレートを渡す。


「ほぅ…これは…ハルくん、君はFランクだったよね」

「そうだが」

「どうやって狩ってきたんだい?それもこんなに大量に」

「なにか問題でもあったのか?」

「そうだね、あるといえばあるけどね。まぁ、この際は魔物が減ったということでいいだろう。それよりも問題なのはランクに見合わない討伐数だよ」

「ほぅ…つまり、ランクFの俺があれだけの魔物を殺すと周りの人間も真似し出すということか?」

「その通り。だからこそ討伐方法と君の実力を知りたいのさ」

「なるほどねぇ」


方法は教えても別にいい、だが、


「実力とは実際何をするんだ?」

「ぶっちゃけ証明できることをしてくれたらいいよ」

「…ここでのことは外にもれないか?」

「私はこれでもギルマスだからね」

「私もそんなことをしたらクビになりますから」

「そっか、じゃあ方法を教えるからゲルトは部屋の外に行ってくれ。あと、扉は開けっ放しでな」

「はいはい」


大儀そうに腰を上げて部屋の外まで歩いていき、出たあとにこっちを向く。


「これでいい?」

「あぁ、ちょっと待っててくれ」


遥は【魔糸】をクモの巣の数倍、粘着質に500本作り出し、部屋の入口に張り巡らす。


「よし!入っていいぞ」

「まったく、なんだっていうっ!?」

「へ?」


ゲルトの足は部屋に入る前に止まり挙句の果てには体まで止まってしまった。遥は【魔糸】の性質を変え荒縄のようにして、ゲルトに巻き付かせた。


「へ!?おぐっ!」


急に開放され足がもつれたのかこけて顎を打つゲルト。


「どう?これで分かった?」


ゲルトを天井から逆さに吊るし聞く。


「いや、分かったけどさ、ここまでやる必要性ってあった?」

「ところでハルさん。これでは拘束はできても討伐をするのに時間がかかるのでは?」

「あぁ、それはだな…」

「え〜私のことは無視ですかそうですか…」


ごちゃごちゃと言っているゲルトは放って置き、一本の【魔糸】を作る、性質はピアノ線より鋭く。


「こうやったんだよ!」


思いっきり【魔糸】を振り下ろし、テーブルの角を斬り飛ばす。それを見ていたシーンは絶句し、ゲルトは顔を青くしていた。


「これはね、いまゲルトを縛っているやつと同じで、俺の考えしだいで性質が変わるんだよ」

「え?ま…じ、てかそんな危ないので縛らないでよ!」

「なる…ほど、これなら容易いですね。ちなみに、どのくらい出せるのですか?」

「そうだなぁ、大体、万単位では出せるかな」

「…はぁ」


呆れたのかシーンが溜息を吐いた。


「ねぇ、そろそろ降ろしてよォ」

「…そうだな」


【魔糸】を消しゲルトを自由落下させる。重力に従い床に落ちたゲルトは顔面を強打して転げ回っている。


「あとは何かあるかな?」

「いいえ、後は報酬を渡して、ランクに関しては後日、追って連絡します。それでは、報酬を持ってきますので少々お待ちを」

「へいへい」


シーンが出ていき後ろ手に扉を閉める。部屋の中には仮面を被った男が二人残った。


「なぁ、ゲルト。聞きたいことがあるんだけど」

「あれだけやっておいてよく平然と聞けるね…で?何?」


御託は並べても話は聞くようだ。


「お前、なんで仮面をかぶってんの」

「…言わなかったっけ?趣味だよ」

「…それ、嘘だろ」


ゲルトの動きが目に見えて固まった。


「…なんでそう思うの?」

「声の発した時の震えと間、そして挙動かな」

「ふふっ…面白い子だね君は」

「子って年でもないさ…で?合ってたのかな?」

「そうだね、ちょっとした理由があるのは確かだね…でもまあ、半分は趣味だよ」


おどけたように肩をすくませ話してくる。


「にしても、私にとっては君の方がなんなのか気になるところだけどね」

「俺は…ただの冒険者さ」


遥がそう言うと同士に扉が開いた。


「ハルさん、こちらが報酬になります」

「へいよ」

「今回はゴブリンが248体で銀貨7枚と銅貨2枚。キラーアントが82体で銀貨2枚。キラービーが159体で銀貨7枚と銅貨5枚。オークが53体で金貨2枚と銅貨8枚。合計、金貨3枚と銀貨7枚、銅貨5枚になります。御確認下さい」

「いや、いいよ」


遥はそう言って袋を担ぐ。


「調べなくていいのかい?」

「まぁ、シーンさんを信じているってことで」


実際は【閲覧】をかけて袋の中身ごと確認したのだ。


「そうかい。それはともかく、それだけあれば半年は何もせずに済むね」

「家族もいるので働くさ」

「そっか…」


ゲルトの見えない顔が一瞬、陰ったように感じたがすぐに戻っていた。


「それじゃあ、そろそろ行くな。連れも待たせてるし」

「あぁ、またすぐに会うと思うけど。さようならハル」

「じゃあな」


ゲルトに返事を返しながら部屋を出て行く。シーンはまだ用事があるのか、部屋に残っていた。


(はぁ、少し時間が過ぎたか…まぁ、ミーチェのところだし大丈夫かな)


遥はそう考えながら一階へと降りていく。

昨日、上書きを忘れて4.000文字くらい消えてポカーンとしてました。それはともかく、次回はヒロインズの方にスポットライトを当てる予定です。MINTIA美味しいよね

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