朝、目が覚めると...
朝が来たのだろう...カーテンから陽の光が漏れ顔に当たる。昨日の夜、久しぶりに泣いたせいかまだ体が重い。ネリィとランには悪いが、もう少しだけ眠らせてもらおう。と、優雅な二度寝を始めたとき
ガチャ...ドタドタドタ
誰かが部屋に入ってきたようだ、と言ってもネリィしかいないだろう。随分と焦ったようにこっちへ近づいて来る。
「ハル...ハル」
揺さぶりながら起こされるが二度寝を始めたばかりだまだまだ眠い...ネリィに抵抗するように温かなランの体を引き寄せようと手を伸ばす。
ふにっ
ふに?ランの温かい毛並みに指が埋まることはなく、柔らかなものに指が沈んだ。
「ハルっ!」
「ごふっ!」
ネリィが腹に思いっきりのしかかってきた。いくら軽くても横っ腹に勢いをつけてのしかかられてはいくらなんでもきつい。仕方なく、すっかり目が覚めてしまった遥は目を開けネリィの顔を見る。...そこには、まるで汚いものを見るよう目でこっちを見下ろしていた。
「ネリィどうしたんだ?」
「ハル...申し開きはある?」
「申し開きも何も俺は何もしてないし...心当たりがないんだが」
「...じゃあそれは?」
ネリィは俺のさっき手を伸ばした先を指さした。そこには抱き寄せたはずのランではなく...裸で布団にくるまっている赤毛の少女がいた。
「...待てネリィ、俺は無実だ」
「この状況で?」
「当たり前だ、俺は潔白だ」
「なら誰?」
「う~ん、赤毛の子か...まさかな」
「ところで猫は?」
「なぁ、ネリィまさかとはおも「ふぁぁ~」...」
俺がネリィにひとつの推測を言おうと思ったら、隣で寝ていた少女が起きた。そして目を擦りながらあくびをしてる。よく見てみると頭に猫耳が生えているその右耳には傷が...
「おはよう...遥」
「お前..やっぱりラン...か?」
「やっと話せたね...」
チュッ
少女...ランが頬にキスをしてきた。猫の時とは違う、生きている少女のような温もり。
(一体何故獣人族のような姿になったんだ?)
などと考えいた。横からの冷気...いや、妖気を感じるまでは
「...ネリィさん...なんでそんなに怒っているのですか..」
「..ハル」
肩をわなわなと震わせ赤くなった顔で睨みつけてくる。
「な..なんでしょう」
「言い残すことは?」
「...え?ちょ..待っ!」
「【審判】..GUILTY!」
「ガハッ」
横っ面を鈍器で殴り飛ばされたような痛みが走り、ベット横にあったクローゼットへ頭を突っ込んだ。というかこれはHPが減らないのか?と思いステータスを覗いてみる。
小鳥遊 遥 (17) Lv.3
種族 人族
職業 冒険者
神の加護
統制の加護 女神の加護 知識の加護 死神の加護
HP 8470/7530
SP 6050/6050
MP 5400/5400
STR 3200
DEF 0
INT 3700
DEX 0
AGI 2650
LUC ‐‐
スキル 変更点のみ記載
【テイム10/3】
称号 変更点のみ記載
優しき者 ランの主人
...増えてるっ!いや、減ってるっ!...てか、無くなってる...。スキルの【テイム】やら称号の優しき者も入手する要因があったか?てか、ランの主人?
「わけわからん...」
もう疲れたよ...このステータスはどこに向かってるんだ...
「遥っ!大丈夫!?」
ランが心配したようにこちらへと走ってきて、俺のことを腕で抱える。
「俺は..もうダメなようだ。ぐふっ...お前だけでも..生きるんだ..ぞ」
がく..と体から力を抜く...
「やだ、嫌だよぉ..遥..遥ッ!」
ノリなのか本気なのかわからないテンションでランが合わせてくる。ちらっとネリィの方を見てみると...青くなった顔でこちらに走ってきた。
「う..そ。ハル!?」
(やりすぎたかね...)
微妙に居心地が悪くなりながらも。裸で泣いている少女と青い顔で泣いている少女に抱き抱えられているという。カオスな状況から脱することとする。
「すまんすまん。冗談だから泣き止んでくれ」
謝罪の意味をふまえて二人の頭を撫でる。二人がポカーンとした顔でこちらを見上げ呆けていた。
「とりあえずご飯にするから、ランは服を着て、ネリィはランの手伝いをしておいてよ。俺は朝食の用意をしておくからさ」
と言うと、ランは真っ赤になり、ネリィはキョトンとしてしまった。とりあえずランとネリィを抱えベットに乗せて手を振りながらその場を去っていった。
「ハル!」「遥!」
屋敷中にそんな声がこだましたような気がしたがスルースルー。早く朝食を作ってしまおう。
今日の朝食はご飯に味噌汁、野菜炒めに生姜焼きだ。俺にとってはかなり重い朝食だが、二人にとっては全く関係ないらしい。朝食とは思えない量を数分で平らげ二人はココアとミルクを飲んでいる。ランの方は熱かったのか口をつけては離して冷ましを繰り返している。コーヒーを中程まで飲んだ遥は口を開いた。
「で、なんでランは人の姿になったんだ?」
ランは今ネリィが初めに着ていたような白のワンピースを着ている。身長はネリィより少し大きいくらいだ。
「昨日の夜、遥が寝る前に名前を付けてくれた時に何か温かいものが流れ込んできて...気づいたらこの姿になってて。遥に言おうと思ったら寝てるし」
ランが頬をふくらませ潤んだ目でこちらを見てくる。
「悪かったよ。で、なにか体調に変わりはないか?」
「ないよ~。むしろ、前よりいいくらい」
「それは良かったな」
ラン (0) Lv.1
種族 猫又
職業 ‐‐
神の加護
統制の加護
HP 650/650
SP 830/830
MP 50/50
STR 650
DEF 70
MAT 30
DEX 20
AGI 500
LUC 100
スキル
【迅速10/7】【鋭い爪10/5】【残影10/6】【第六感10/8】【炎魔法10/3】【人化】
称号
転生者 速き者 遥の従魔 癒す者
【迅速】…AGIを瞬間的に2倍にする。レベルにより時間の増加
【鋭い爪】…動物系専用スキル。爪を鋭くし極めれば鉱石をも切断する。レベルにより変化
【残影】…影を残し移動し、相手の注意を逸らす。レベルでクオリティ・数が倍増する
【第六感】…勘が鋭くなり五感が強化される。レベルにより向上
【人化】…魔物専用スキル。人に変化できる。
転生者…世界をまたいで魂を転生した者。この世界には何人かいるから、探してみるのもいいかもね。
速き者…成長によってAGIがもっと伸びる者
遥の従魔…遥かによって【テイム】された魔物。知らないままで名前を付けるとかwww
癒す者…見ている者を癒し和ませる。癒し系いいよね癒し系!
(安定のウザさだなネイの野郎...まぁいい、その打ち会いに行く予定だしな、その時に一言...いや、一発入れてやろう)
ランのステータスはだいたいネリィの真逆のようなパラメーターだ。だが、これから冒険者になるとすると...見られたらまずいものは隠しておくか。
「ほれラン」
「ん?これなに?」
「ステータスプレートっていう能力値が見れる道具だよ」
「ハル、どうやって作ったの?」
「そりゃあ【生成魔法】で」
「...そう」
ネリィが言葉に詰まったのは、普通ステータスプレートというのは複数人の魔術師によって作られ街などに流されるからだ。それを一瞬で作り出すのは、まさに化け物である。
「ちょっと隠してあるスキルとかもあるからみたいと思えば見れるぞ」
隠した内容は、猫又・人化・遥の従魔といった魔物とバレそうなものだけだ。種族は猫人族となっている。
「本当?どれどれ...おぉ、遥の従魔って称号があるね」
「そうだな、どうやら名付けた時に【テイム】が発動したらしい...すまんな」
「気にしないでいいよ...むしろ嬉しいから」
「そっか。じゃあ今日はランの冒険者登録とミーチェの店に行って、時間があれば依頼を受けようか」
「私は...それでいい」
「異議なーし」
「よし、じゃあ用意をしていくぞ」
遥とネリィが着替え、街へ移動した。
ステータスの向上についてはだいたい10%アップぐらいとなっています。スキルや称号は変更がないものは記載しないこととしようと思いますが。したほうがいいかしないほうがいいかご意見をお願いいたします。進行スピードは遅いですが、着実に進めていますのでどうかご容赦を...この小説はヒロインが多めで登場しますので、予めご了承ください。次回は依頼を受けて、ドン引きという話をしてみたいですね