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殺人鬼の更正転移  作者: Iria
13/19

後悔と懺悔…そして…

side 過去のはなし


あの時...そう、父に猫を殺された日。猫とはその数日前から会っていた...


最初に会ったのは俺が両親の虐待から逃げるために中にはの端で丸くなっていた時だった。あの時は虐待に耐えられなくなり頭の隅で自殺を考えていた時だ、会ったこともない黒い猫が目の前に立っていた。


「どうしたの?猫さん」

「ニャー」


ひと鳴きすると猫がこっちにやってきた。


「ダメだよ...僕と関わったら君に良くないことが起こるよ?」

「…わかんないよね...」


猫が俺の制止も聞かずに、体を俺の腕の間にねじ込んでくる。


「だから...来ちゃダメって言ってるのに」

「ニャー」


猫は撫でろと言わんばかりに頭を擦り付けてくる。


「...仕方ないなぁ」

「にゃ~」


結局、猫の魅了には逆らえなかった。頭を撫でてやると気持ちよさそうに目を細め、膝の上で丸くなってしまった。


「綺麗な毛並みしてるね猫さん」

「...」

「あらら、寝ちゃったか」


寝ている猫の背を撫でながら猫の体を観察していた。痩せた体に綺麗な黒の毛並みがアンバランスに映えている。顔は幼く、まだ子猫のようだ。目の色が透き通った空のような水色、とても綺麗な猫だ。だが、右耳には切れたような傷が入っている。


「...君も大変だったんだね。大丈夫だよ今は寝てても」

「...にゃあ」

「ふふ」


そして、この猫は毎日のように俺が中庭にいると決まったように来るようになった。痩せていたのが気になったのでパンを少しくすねて猫にあげたりしながら、いつの間にか俺の心の支えとなっていた...


(明日はどうしようかなぁ...そうだ!名前をつけてあげよう。喜ぶかな?ふふ、楽しみだなぁ...)


そして...あの日が来た...


side out


(なんで、あの猫が...いや、まずは助けることが先だ!)


猫の周りには6匹のゴブリン、5匹が棍棒を持ち、1匹だけが剣を持っていた。


(あれが、隊長格のやつかな?...まぁ関係ないけどな。さっさと殺してしまおう)


まずは【魔糸】を性質をピアノ線のように細く鋭くした、それを60本作り出した。


「さぁ...ゴミ掃除の時間だ」


遥は両手を振り手のひらから伸びた【魔糸】を振り回し【魔力操作】と併行して操った。すべてのゴブリンを【魔糸】でぐるぐる巻きにした遥は、アルクルの世界の魔王べエルたちの時とは違い一気に引いた。


ゴブリン6匹の体が一度にずり落ちた。断裂面から生き物特有の生臭く、嫌悪感を抱くような匂いが立ち込める。だが、遥は気にしたような様子もなく邪魔な肉片だけを炎で焼いた。そのまま猫を抱き寄せる


「やっぱり...あの猫だよな」

「...」


返事はない、気絶をしてしまったようだ。


「ハ...ル...どう..したの?」


ネリィが息を切らしながらもこっちまで走ってきた。


「ゴメンな、置いていって」

「いい...ハルも無事でよかった」


考えてみれば夜の森に女の子を放置するとういのは、いくらネリィでも危ないことだ。夜では目も効かない、動物ほど鼻もきかない、もしも危険な魔物にあったら魔法特化のネリィでは危険だ。


「ああ、お詫びに今度何か買おうか?」

「気にしなくていい...ところでそれ」


猫に指を目を向け怪訝な顔でこちらを見てくる。


「猫だが?」

「魔物?...尻尾が2本ある」

「わからないが...見てみればわかるか」


【閲覧】を使い猫のステータスを見る


‐‐‐‐ (0) Lv.1


種族 猫又

職業 ‐‐

神の加護

統制の加護…再会・AGIの向上


HP 20/03

SP 45/00

MP 10/10

STR 30

DEF 25

MAT 15

DEX 25

AGI 125

LUC 100


スキル

【迅速10/7】


称号

転生者 速き物


また、ネイかよ。...いや、今回はお礼を言ったほうがいいな。


「どうやら、猫又っていう魔物らしい」

「...助けるの?」

「あぁ...俺の..大事な友達なんだ」


腕の中で眠っている猫を見てそう呟いた。ネリィが少し心配げな視線を向けるが、俺の目を見て頷いてくれた。


「...わかった」

「ありがとうネリィ」

「気にしない、屋敷に戻る?」

「そうだな、早く帰ろう」


ここから家までの距離は遠くない。歩いて2分ぐらいだ、遥たちは急ぎ足で屋敷へと帰っていった。


屋敷へ着くとまず、遥は料理、ネリィは風呂の用意と猫の世話をすることになった。世話と言っても病気ではないので寝かせているだけだ。晩ご飯はご飯と唐揚げ豚汁に付け合せのサラダを作った。もちろん猫用のご飯は別でだ。


「ネリィ、出来たぞ。起きろ」

「ん〜」


ソファでネリィと猫が丸くなって一緒に寝ていた。


「ほれ、早く食べて、風呂入ってから寝な」

「あい」


眠たそうに目を擦りながら舌の回らない状態でそういった。


「はいはい、猫もこっちに来な」

「ふにゃあ」


猫もあくびをしてキッチンの方にあるテーブルへとついてくる。猫のご飯もテーブルの上に置いてある。猫をテーブルへ乗っけるために腕に抱いて、テーブルに乗せた。床で食べさせない理由としては、テーブルが結構広いのと、なんか可愛そうだったからだ。


「そんじゃあ…「いただきます」」

「ニャー」


今回の唐揚げはこの前に食べたレッドバードの亜種、ブラックバードという鶏肉を使った。味はレッドバードとは違い筋っぽくもなく、かなり柔らかい。豚汁にはムイという豚肉、後は似た形の野菜を入れてみたが。


(うん、問題ないな)


唐揚げは山のように作ったのだがもう既に3合あたりまで崩されている。


「なぁネリィ」

「ん?」

「作っておいて言うのもなんだが、あんまり食べると太るぞ」

「…大丈夫」

「その根拠のない自信はどこから来るんだ…」


そんな話をしながらも唐揚げを食べきり(4/3はネリィが食べた)、豚汁もお代わりして満足のようだ。猫はというと、早々に食べ終わり俺の膝の上で丸くなっている。2本の尻尾を掴みたい衝動に駆られるが我慢だ。


「「ごちそうさまでした」」

「美味しかったか?」

「ハルが作ったならなんでも美味しい」

「それはそれは、過剰な評価だな…さて、片付けて風呂に行くか」

「私も片付ける」

「先に風呂に入ってきなよ」

「…一緒がいい」

「…さいでか」


そこまで赤くなるんだったらやめておけばいいのに。


「…猫も入れてやるか」


そう呟いた。いくら毛並みがよくてもゴブリンに襲われていたせいで、ところどころ汚くなっている。ちなみに、傷は大したことがなかったので治癒魔法で屋敷に来る前に治した。


「さて、じゃあ行くか」

「…行く」

「にゃ?」


右手にタオルと服、左手に猫を抱え逃がさないようにがっちり掴む。


「さあさあ猫さん。楽しいお風呂の時間だよ」

「ニャニャニャ!」


左腕の中で暴れ回るが俺のSTRに勝てるわけもなく、抵抗も虚しく連行されていった。


結果から言おう、めちゃくちゃ疲れた。服を脱いでいる間は逃げ回り、浴場に連れて行くと逃げ回り、挙句の果てに洗われていると逃げ回る。…え?それが普通だって?そんなこと気にしちゃいけない。


「あぁ〜疲れた」


風呂から上がった俺いま大部屋で傷だらけになった腕を眺めて呟いた。猫が申し訳なさげにこっちを見上げてくる。


「気にすんな、こうなる気はしてたしな」

「にゃう」


頭を撫でてやると腕にすっぽりと収まってくる。今、この部屋には俺と猫しかいない。ネリィは今日は別の部屋…向い部屋で眠っている。


「なぁ猫。なんで転生なんてしたんだ?」

「ニャー」


ベットに横になりながら猫と話す。まるであの時のように…


「お前は…あの時の猫なんだよな?」

「ニャッニャ」


肯定しているのか俺の鼻を舐めてくる。ザラザラとした舌がこそばゆい。


「俺と会ったこと…後悔してるか?」

「ニャーン」


頭を頬にぐりぐりしてくる。頭を撫でろってことか…変わってないな。


「ありがとな…猫」

「にゃうん」

「俺はな…お前に会ったことを後悔してたんだ…」

「にゃ?」


いつの間にか目から涙が流れ落ちた。


「あの時会わなければお前は死ぬことはなかったし、俺が生きているとこもなかった。何度も何度も後悔した…でも、未練がましく生きていた。ひとつの後悔を抱いて」

「にゃー」

「ずっと…あの時から心に刺さってたんだ…猫…俺を恨んでるか?」

「にゃ?」

「…やっぱりずるいよな…言葉の通じない相手に許しを乞うても…」

「ニャッ!」


猫が横になっている俺の頬に肉球を落としてくる。


「…猫?」

「ニャ!」

「言葉…分かるのか?」

「ニャー」


「そうだ」とでも言わんばかりに首を振ってくる。


「そっか…分かるのか…なら聞いてもいいか。…俺のことを恨んでいるか?」

「…」


猫は何も言わずに近寄って来て…腕の間へ体をねじ込んだ。


「…そっか。ごめんな守れなくて、ごめんな気付いてやれなくて…そして、ありがとう。俺を許してくれて…」

「にゃう」

「ありがとう…本当に…ありがとう」

「にゃあ」


止めどなく流れ落ちる涙を猫が舐めていく。


(あぁ、子供みたいだな…情けない。でも、今だけは…)


あの時から溜め込んでいたものを吐き出すように涙を流し、止まった頃に口を開いた。


「…なぁ、名前…付けてもいいかな?」

「にゃー!」

「いいのか?」

「にゃ!」

「そっか、なら…」



あの時からの考えていた…でも、言えなかった名前…


…ラン


そう口にすると体から暖かいものが抜けていき…意識を手放した。

この回は、この小説を作る前から考えていました。作者的にはお気に入りなのですが。皆さんはどうでしたか?ご意見・ご感想をお待ちしております。

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