あって困らないもの
「...ハル?」
「お?やっと起きたか」
「...おはよう」
「おはよう。ネリィ」
ネリィは少し戸惑っていたが笑って挨拶をしてくてた。
「ずっと起きてたの?」
「そうだか?」
「...そう」
そう言うとネリィは顔を赤くして俯いてしまった。
「?それじゃあ朝食にするか」
「...うん...顔洗ってくる」
「あいよ、じゃあ用意しておくよ」
ハルは食料庫に行き朝食に必要な食材と、コーヒー豆を持ってキッチンに行った。そこにはもうネリィが来ており、エプロンをつけている。
「どったん?」
「手伝う」
「ネリィ...料理できたの?」
「ハル程じゃないけど...ママの手伝いしてた」
「...そうか、じゃあ手伝ってもらおうかな」
まあ、朝食は目玉焼きサラダにしようと思ってたし。危ないこともないだろう。
「それじゃ作るかネリィ目玉焼き...卵焼いたことある?」
「...ない」
「それじゃあ、卵を割って鍋に入れてくれ。そのあいだにコーヒー作ってるから」
「...わかった」
値りぃが卵を手際よく割り鍋に入れ焼いていく。
(これなら大丈夫そうだな)
「そういえば、ネリィは苦いもの飲めるか?」
「あんまり飲んだことないけど..多分飲める」
「そっか」
(コーヒーミルクにしておくか)
こうして朝食ができ、リビングへ持っていった。
「「いただきます」」
「軽めに作ったからそんなに量ないけどいいか?」
「むぅ..そんなに大食いじゃない」
「ふふ、そうだったな」
そう言いながら、目玉焼きを箸でつつく。目玉焼きはいつも醤油だったのだが倉庫には見当たらなかったので、コショウで味付けしてある。卵は鶏のよりもかなり大きく目玉焼きよりスクランブルエッグにすればよかったと後悔している。だが、食べてみるとそんなこと気にならないほどに濃厚で半熟に焼いた黄身はとろりと広がる。主食はご飯だったがやっぱりパンの方が良かった...だがさすがに倉庫にはなかったのでパンはなかったので小麦粉から作るしかないだろう。そして、昨日のようにもうすでに食べをこちらを見ている。
「食べる?」
苦笑いしながらそう言うと。
「むぅ..ハル食べなさすぎ。だからそんなに細い」
「うぐ..人が気にしてることを..いいんだよ。俺はコーヒー飲んでれば何とでもなるから」
「水分で人は生きられない」
「んな正論は求めてないよ..わかった、ネリィは食べないんだね」
皿をこっちに戻そうとすると
「食べないとは言ってない」
皿をひったくられてしまった。コーヒーを飲みながらネリィが食べ終わるのを待つ。うーん、味は似てるんだけどちょっと甘いかな?そんなことを考えているとネリィはもう食べ終わりコーヒーミルクを飲んでいた
。
「食べるの早いよな」
「?」
理解できないようだ。
「とりあえず今日は、街に行って色々と見たいと思うんだが」
「...一緒に行く」
「まぁそうなるよな」
「この屋敷にいくらぐらいお金あったけ?」
「倉庫に行けばわかると思う」
「行ってみるか」
リビングを出て脱衣所の前の倉庫に行く、倉庫の中は広くて石鹸やタオルもここにあった。ちなみにパジャマなどの服は自室に置いてあった..てかこれ、サイズぴったりだったしネリィのサイズもあったけどネイの野郎こうなるてわかってたのか?..怖いな。倉庫の中の手前に大きな袋が二つ置いてあった。中を覗くと金貨がたくさん..あの神俺らに働くなというのかね?
「これ何枚くらいあると思う?」
「...百枚以上..」
「だよな」
もうひとつの袋の中には銀貨と銅貨が同じくらい入っていた。その上には紙が一枚置いてあった。
親愛なる小鳥遊 遥へ これ全てで金貨450枚、銀貨250枚、銅貨200枚あるよ。やったねこれで働かずに済むよ。でもどうせ世界中歩き回りたいとか思ってたんでしょ?だったたらこれぐらい必要だよ?...まぁこんなにいらないか。でもある分には困らないしありがたく受け取っておきなよ。byネイ=アルス
と書いてあり。あいつって神だったんだな。
「やったなネリィこれで働かずに済むな」
「だけど働いたほうがいい」
「なんで?」
「この世界に無職はないから..ステータスプレートに職業が書かれてないと怪しまれる」
「そうか...なら冒険者にでもなっておくか」
「それが無難」
そうと決まれば街へ向けてLet's Goだな。
「ネリィ、武器は何持っていく?」
「必要ない」
「いらないのか?」
「武器を持つには体力がないし魔法を使うにための杖も必要ない」
「杖?」
「普通は魔石を通して魔力に変換して魔法を使うけど..私はいらない」
「..あぁ~【魔力操作】か」
「そう、【魔力操作】を使えば直接変換できる」
じゃあ、この倉庫にある無駄に豪勢な武器は必要ないな。俺は作ればいいし。
「それじゃあちょっと待ってて、魔法試してから街に行くから」
「なんの魔法?」
「【空間魔法】の収納」
「...そう、私も行く」
「だと思ったよ、その前に一度着替えないとな」
まだパジャマのままだ、一度部屋に戻って着替えてこないと。俺はタンスに入っていた黒のフード付きのロングコートに黒いシャツ、その他もろもろ黒で固めて真っ黒だ。靴はブーツを履き、黒いグローブをつけた。外は結構暑いが肌を出すのは苦手なんだ。ネリィは水色の半袖のシャツにハーフパンツ最初に着ていた黒のローブを羽織りブーツを履いていた。
「ローブ着る必要あるか?」
「これ...アンセル様にもらったから」
「なるほどねぇ...それじゃあ庭に行くか」
「うん」
部屋から出て外への扉を開けた。街は正面入口の逆方向なのでいちいち屋敷を回っていかなければならなくなる。扉の先の庭は雑草が生い茂り屋敷の景観が台無しだ。
「さて、【空間魔法】か、イメージしづらいな」
とりあえず、庭の一部をえぐるようにイメージしてみる。すると、目の前の庭が半径2mぐらい円状にえぐれていた。隣のネリィを見ると目を真ん丸に見開いている。
「う~ん、もう少し使わないと調整が難しいな...とりあえずこれは後にして収納の方をやってみますか」
近場にあった適当な木を【想像魔法】の風で切り倒し、それを収納することにしてみた。木に手を近づけ倉庫に入れるイメージで発動する。木は目の前から消え、倉庫から取り出すイメージをすると、目の前に現れた。これは使い勝手がいいな、収納量もまだまだありそうだ。今度は硬貨を収納して。
「それじゃあ行くかネリィ」
「...うん」
いい笑顔でそう言うと。ネリィはぎこちなく頷いた。ここから街まで5~10分ぐらいだったか?転移してみてもいいんだが下手したら手やら足やらがさようならしそうだし...またにしよう。
「う~ん着くまで暇だな」
「...そうでもない」
「なんで?ずっと歩き続けるんだぞ?」
「...ハルと一緒なら楽しい」
「そっか」
それは...つまり...俺が変人だということか。いや変人なのは認めるけどさ。う~ん、納得できない。
「ん~、魔物でも出ないかね?」
「ここはマースだから強い魔物はあまりいない、ダントに近づかないとあんまり出てこない」
「そんなもんか」
結局、道中なにも出ずに街についてしまった。
「ここが、中央国の最大都市..ピースか」
高い城壁で囲まれ中にはもうひとつの層が有り、平民・商人・貴族・王族の場所で分かれており、中心には貴族と王族が集まっている。道中人に会っていなかったのだが、街の近くはやっぱり人が多い。半コミュ症の俺としては一刻も早くお家へ帰りたいところだ。ネリィも街が近づいてから俺と手を繋いでるし。
城門への行列に並び数分、やっと入れると思ったら。
「君達ここへ来るの初めてかい?」
「そうですが?」
「やっぱり。通行手形は持ってないかい?」
「あ〜!すいません!初めてなもので、これですよね?」
俺は懐から二枚の金属製のプレートを見せた。
「...はい、これで大丈夫ですよ。次からは見せなくても結構ですので、楽しんでいってください」
門番はそう言い、笑顔で中に入れてくれた。街の中は活気づき道行く人々が楽しそうな雰囲気で話をしている。
「ハル」
「なに?さっきのプレートかい?」
「そう」
「あれはな、お金が入っていた袋に入ってたんだ...収納したら気づいた」
「そうだっんだ」
ちなみに今のは嘘だ。本当は前にいた奴のプレートを【模倣術】で見て、【生成魔法】で作ったものだ。プレートの内容はこうなっている。
ハルカ (17)
職業 農民
ピースの観光
ネリィ (10)
職業 農民
ピースの観光
と、なっている。苗字が無いのは、この世界では苗字があるのは貴族やそれに準ずる人だけだそうだ。これは結構精巧に作ってあるので絶対にバレない。でも、ネリィの【審判】を使ったら。一発アウトだけどな。
「さてと、じゃあまずギルドを探すか。ネイの野郎地図ぐらい入れておいてくれればいいのに」
「贅沢言わない」
「しゃあないな、あの露店で適当に物を買って聞くか」
そう言って食べ物を売っている露店へ向かっていった。
「おっちゃん串焼き2本頂戴」
「あいよ!嬢ちゃん達綺麗だねぇ!サービスで半額でいいよ」
どうやら、俺を女と勘違いしているようだ。
「あんがとさん。でも俺男だから。間違えた分もう一本ただでおくれ」
「はははっ!面白いことを言うな!」
う〜ん、髪が長いせいか?
「ハルは...男の娘...だよ」
「ネリィさんネリィさん...なんかニュアンスがおかしかった気がするんだが?気のせいかね?」
「そうかそうか、男の娘だったのか。それは悪いことをしたな。ほれ、一本サービスだ!」
「おっちゃん!なぜそれで納得するんだ!」
「ありがとう...ハル、お代」
「畜生、俺のことは無視かよ...で?おいくら?」
「銅貨二枚だよ」
「へいよ、ところでギルドってどこにあるか知らん?」
「毎度あり!ギルドはここの大通りをまっすぐ行けば見えるぜ」
「そっか、あんがとなおっちゃん」
「ありがと」
「おう!冒険者になるなら死ぬんじゃねぇぞ!」
腕を後ろ手に振って俺たちはその場を去った。
「にしても何の肉だこれ?」
「レッドバードの肉...ここら辺で多く生息していて...ギルドでもゴブリン並みに発注数が多い」
「詳しいなネリィ」
「本で読んだ」
「詳しく載ってる本だ事で...ほれ、串焼き」
ネリィに串焼きを二本渡すとネリィがふくれっ面で抗議してくる。
「ハル...私は大食いキャラじゃない」
「今までの行ないを顧みてからいうんだな」
「あれは...あの料理が美味しかったから。それに、この串焼きは大きい」
実際に串焼きはネリィの顔ぐらいのサイズがあり肉一つ一つは幅8cm近くはある。たが
「大丈夫だ!ネリィならいける!」
「...なんか嬉しくない」
そんな、女の子に対して最低な言葉を吐きつつ、レッドバードの串焼きを咀嚼していく。少々硬かったがいい具合に胡椒で味付けをされていてうまかった。だが、珍しく俺が食べ終わってもネリィはまだ半分くらい残っていた。
「珍しいなネリィ」
「お腹いっぱい」
「なん...だと?」
「その反応は傷つく」
「冗談だよ。朝からそんなに入るわけないよな。一本は収納しておいて...食べきれるか?」
「食べる」
「無理するなよ?」
「じゃあ...半分食べて」
串を差し出され、串に残っているひと切れを口に運んだ。そんな事をしているとやっとギルドに着いた。見た目は3階建てのログハウスと言ったところだ。
「入るか」
「...うん」
食べきった串を収納し、ネリィと手をつないでギルドの扉を開けた。
テンプレとはなんだったんでしょう?すいませんでした予告通りに書こうと思っていましたが、時間があまり作れませんでした。orz ちなみに遥とネリィは傍からみたらラブラブですが、遥は妹のように感じているのでそういった感情はありません。ネリィは内緒で。次回はギルドの話となる予定ですのでご期待を。