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「おい、見ろよ」
「うわ、汚ねぇ髪」
遠くの方でそんな声がする
夕暮れの光
廊下を通る少年少女が、そんな言葉を吐き捨ててゆく
校内
教室の中
複数人の生徒の輪の中
黙って蹲っている少女を、周りは次々にはやし立てた
そして少し離れた場所に、自分
開いたままの口が乾いてゆく
目の前の光景を見て、理解して、傍観している
少女の肩が、微かに震えていることを、僕は知っている
少女が世界で独りきりであることを、僕は知っている
少女が笑顔で口にした言葉を、僕は知っている
――――――半沢君は、私の―――――――
手の中の紙束がくしゃりと鳴った
僕は何をしているんだ
僕は
僕は
僕は――――――