子供のためのおとぎ話
むかしむかし、あるところに美しい娘がおりました。
困っているものを放っておけない、そんな心根のよい娘でしたので、全ての人から愛されておりました。
誰からも愛される娘は幸せでした。
娘へと注がれる愛はそれだけに留まりません。
人ならざる者たちも娘を大切に思っておりました。
というのも、心優しい娘のこと。
困っているものが草花であろうと動物であろうと分け隔てなく助け、また愛していたからです。
そんな娘が怪我をしたうさぎを見つけたなんて状況に立ち会えば、当然助けようとすことが予想できます。
予想にたがわず、娘はうさぎを助けてあげました。
それからしばらくのことです。
毎日、毎日、娘の家へ贈り物が届けられるようになりました。
最初は木の実。続いて、小さな花、きのこ、山菜と贈り物はどんどん増えていきます。
娘は毎日見えない誰かに頭を下げて、贈り物を大切そうに抱えて家の中に入っていきました。
長い間、贈り物は続きました。
娘は見えない誰かに会いたくなりました。
目を見て、手を握って、伝える時が来たのです。
娘は家の前で見えない誰かを待ち続けました。
ずっと待ち続けて、待ち続けて、ようやく姿を現したのはいつかのうさぎ。
「あぁ、あなたが」
娘は小さなうさぎを優しく抱き上げました。
「いつも贈り物をありがとう」
娘は涙を流しておりました。
それをうさぎは優しく拭って、言いました。
「あぁ、清らかな娘さん」
いつの間にか娘は抱きしめられておりました。
うさぎは美しい男の姿になり、娘を見つめておりました。
「お察しの通り、私はあなたに助けてもらったうさぎです」
男は穏やかに微笑んでおりました。
「私はあれ以来、片時も貴方を忘れることができませんでした」
男は続けます。
「どうか、どうか、私の花嫁になってください」
娘は男の眼を見上げ微笑みました。
男の真摯な目に心を奪われてしまったのです。
娘と美しい男との結婚は瞬く間に村中に知れ渡り、祝福されました。
村の女達は娘のために白無垢を縫い、着せてやりました。
村の男達は物入りだろうと、家具を持たせてやりました。
村の人々の見送りを背に、二人は山へと帰って行きました。
その後、娘と男を見たものはおりませんが、山が華やぎ、村が栄えたことから、きっと二人は幸せに暮らしたのでしょう。
『子供のためのおとぎ話』を一幕として全三幕の構成予定です。
期間内にupできるか、時間との戦いです……。
感想、漢字訂正、アドバイスなどあればよろしくお願い致します。