表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

一発屋

作者: 水向
掲載日:2026/03/29

未来は、笑い声よりも銃声のほうが多い時代になってもうた。

空はドローンで埋まり、街は瓦礫でできた迷路。

そんな世界のど真ん中で、俺は今日もリボルバーを回してる。

「ほな、いくで〜!一発芸!」

昔はこれでウケてた。

テレビの中で、スポットライト浴びて、観客がドッと笑ってくれてた。

――あの頃はな。

今は違う。

引き金を引く。乾いた音がひとつだけ鳴る。

それでしまいや。

敵は倒れる。必ず、一発で。

「……はい、決まり〜」

誰も笑わん。当たり前や。

ここは舞台やない、戦場やからな。

俺は元芸人やった。

“一発屋”って呼ばれてた。

一瞬だけ売れて、そのあとスーッと消えてくタイプ。

まあ、せやな。自覚あるで。

同じネタしかできへんし、器用でもない。

でもな。

ここに来て、初めて褒められたんや。

「お前すごいぞ!銃器の命中率は90%を超えてるぞ!」

……なんやそれ。

笑わせる才能はすぐ枯れたのに、

こんな才能、埋もれててよかったのに。

なにを今さら。。

仲間が言う。

「お前への弾丸の支給は少なくてもええかもな!ガハハハッ」

「弾を無駄にしないのは正義だ」

正義、ねえ。

昔は「おもろい」って言ってくれてたのにな。

今は「効率がいい」や。

えらい違いやでほんま。

ある日、目の前に敵が現れた。

まだ若い顔やった。

俺の一回りは小さい餓鬼。

震えとる。そらそうや。ここは地獄みたいな場所やしな。

俺は、いつも通り構えた。

リボルバーをくるっと回す。

昔のクセや。「一発芸、いきまーす」

相手はポカンとしてた。

そらそうや。意味わからんもんな。

ちょっとだけ、間があった。

その一瞬で思ってもうたんや。

――こいつ、笑う顔、どんなんやろ。

引き金を引いた。

「ドンッ」

音は、いつもと同じやった。俺は一人、立ち尽くしてた。

手は震えてへん。むしろ、妙にしっくりきてる。


ああ、そうか。

俺、これ向いてたんやな。

笑いは一発で終わらせられへんかったのに、

これは、ちゃんと終わらせられる。


完璧に。


一発で。


夕焼けみたいに赤い空を見上げて、俺は笑った。

昔みたいな、軽いノリで。

「俺は一発屋だからなあ!……」

少しだけ、声が掠れた。

「……ただ、笑顔であってほしかったな、わはわはわは」

笑い声は、誰にも届かへんまま、空に溶けていった。

まるでウケなくなったネタみたいに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ