一発屋
未来は、笑い声よりも銃声のほうが多い時代になってもうた。
空はドローンで埋まり、街は瓦礫でできた迷路。
そんな世界のど真ん中で、俺は今日もリボルバーを回してる。
「ほな、いくで〜!一発芸!」
昔はこれでウケてた。
テレビの中で、スポットライト浴びて、観客がドッと笑ってくれてた。
――あの頃はな。
今は違う。
引き金を引く。乾いた音がひとつだけ鳴る。
それでしまいや。
敵は倒れる。必ず、一発で。
「……はい、決まり〜」
誰も笑わん。当たり前や。
ここは舞台やない、戦場やからな。
俺は元芸人やった。
“一発屋”って呼ばれてた。
一瞬だけ売れて、そのあとスーッと消えてくタイプ。
まあ、せやな。自覚あるで。
同じネタしかできへんし、器用でもない。
でもな。
ここに来て、初めて褒められたんや。
「お前すごいぞ!銃器の命中率は90%を超えてるぞ!」
……なんやそれ。
笑わせる才能はすぐ枯れたのに、
こんな才能、埋もれててよかったのに。
なにを今さら。。
仲間が言う。
「お前への弾丸の支給は少なくてもええかもな!ガハハハッ」
「弾を無駄にしないのは正義だ」
正義、ねえ。
昔は「おもろい」って言ってくれてたのにな。
今は「効率がいい」や。
えらい違いやでほんま。
ある日、目の前に敵が現れた。
まだ若い顔やった。
俺の一回りは小さい餓鬼。
震えとる。そらそうや。ここは地獄みたいな場所やしな。
俺は、いつも通り構えた。
リボルバーをくるっと回す。
昔のクセや。「一発芸、いきまーす」
相手はポカンとしてた。
そらそうや。意味わからんもんな。
ちょっとだけ、間があった。
その一瞬で思ってもうたんや。
――こいつ、笑う顔、どんなんやろ。
引き金を引いた。
「ドンッ」
音は、いつもと同じやった。俺は一人、立ち尽くしてた。
手は震えてへん。むしろ、妙にしっくりきてる。
ああ、そうか。
俺、これ向いてたんやな。
笑いは一発で終わらせられへんかったのに、
これは、ちゃんと終わらせられる。
完璧に。
一発で。
夕焼けみたいに赤い空を見上げて、俺は笑った。
昔みたいな、軽いノリで。
「俺は一発屋だからなあ!……」
少しだけ、声が掠れた。
「……ただ、笑顔であってほしかったな、わはわはわは」
笑い声は、誰にも届かへんまま、空に溶けていった。
まるでウケなくなったネタみたいに。




