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魔王を復活させた教団の教祖に転生してしまった。  作者: いかめし123
1章魔王を復活させた教団の教祖に転生してしまった。
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アーティファクトと魔王

アリスが少しずつ拠点の生活に慣れてきたとはいえ、暇を持て余している時間はまだ多かった。

泥団子や手作りの遊びだけでは限界があるし、かといって外へ自由に連れ出せる状況でもない。


せめて、部屋の中で触って遊べるものが何かあればいいのだが――。


そう思った俺は、廊下で出くわしたリーネを呼び止めた。


「リーネ。少し聞きたいことがある」


「はい、教祖様。何でしょうか」


「アリスに、何か手遊びに使えるようなものはないか。危なくなくて、部屋の中で触って遊べるようなものだ」


リーネは一瞬だけ意外そうに目を瞬かせたが、すぐに小さく頷いた。


「……左様でございましたか。でしたら、古い宝物庫なら何か見つかるかもしれません」


「宝物庫?」


「ええ。もっとも、現在あそこに保管されているのは、先代様が集められた古いアーティファクトばかりですが」


俺は思わず眉をひそめる。


「アーティファクトって、危ないものじゃないのか」


するとリーネは、わずかに苦笑した。


「本来はそうです。ですが、ご安心ください。古い宝物庫に移されたものは、すでに魔力が枯渇して、ただの置物と化したものばかりです。今では起動すらしない、言ってしまえばガラクタの山ですよ」


「……それなら、まあ」


完全に安心はできないが、リーネがそう言うなら、少なくともいきなり爆発するような代物は置いていないのだろう。


隣で話を聞いていたアリスが、俺のローブの端をくいっと引いた。


「……たからもの?」


「昔の道具らしい。触って遊べるものがあるかもしれないって話だ」


「……きれいなの、ある?」


「あるかもしれないな」


そう答えると、アリスは少しだけ目を輝かせた。


リーネに案内され、俺たちは拠点の最下層に近い石室へと足を踏み入れた。


「……教祖様、こちらが古い宝物庫です。長年放置されておりますので、足元にはご注意ください」


扉が開いた瞬間、冷えた空気とカビ臭い埃がふわりと舞う。

石室の中には木箱や棚が雑然と並び、薄暗い中に錆びた金属や曇ったガラスがぼんやり浮かんで見えた。


アリスは俺のローブの端をぎゅっと掴みながらも、物珍しそうに周囲を見渡している。


「……先ほど申し上げた通り、ここにあるのは先代様が収集されたガラクタばかりですよ。。大半は魔力が枯渇して、ただの置物と化したアーティファクトです」


リーネがそう言って、山積みになった木箱の一つを開けた。

中には、錆びついた真鍮の歯車や、曇りきった水晶が乱雑に詰め込まれていた。


「……これ、きれい」


アリスが恐る恐る、箱の中から「青い石が埋め込まれた銀の手鏡」を手に取った。

鏡面はひび割れ、本来の魔力は失われているはずだが、アリスが触れると、わずかに表面が淡く光った。


「ああ、それは『星霜の鏡』と呼ばれていたものです。かつては遠く離れた場所の景色を映し出したそうですが……今はもう、こうしてぼんやりと光るだけ。でも、アリス様の小さな明かりには丁度いいかもしれませんね」


「……ひかってる。おほしさまみたい」


アリスは嬉しそうに鏡を振って、暗い石室の壁に光の粒を飛ばして遊んでいる。

俺はその横で、他にも安全そうなものはないかと別の箱を検分していた。


「こちらは『無音の鈴』ですね。振っても音は鳴りませんが、代わりに綺麗な色の煙が出る仕組みでした。……今は、ただの鈴の形をした鉄の塊ですが」


リーネが解説を交えながら、ガラクタを一つずつ手に取って見せる。

アリスは「へぇー」と目を輝かせ、動かない鈴を振ってみたり、奇妙な形をしたゼンマイ仕掛けの人形を触ってみたりと、まるで宝探しでもしているかのように楽しんでいた。


この時の俺は、彼女のそんな無邪気な姿を見て、心底安心していたんだ。

(……よかった。ここなら危ないものもないし、アリスも楽しそうだ)


だが、その安心が、最大の油断だった。


「……ん? これ、なぁに?」


アリスが、俺の手元をすり抜けて、一番奥の棚に置かれていた「金属製の立方体」を手に取った。

それは手のひらに収まるサイズで、表面には精巧な幾何学模様が刻まれている。一見すると、ただの古びたパズルボックスに見えた。


「あれ?そんなアーティファクトここにありましたっけ?」


リーネが怪訝そうな声を上がる。

その言葉を聞き、不安に駆られアリスに、それを手放すように言おうとしたところだった。


カチッ、と。

本来なら膨大な魔力供給がなければ動かないはずの歯車が、何の抵抗もなく軽やかにスライドした。


「……え?」


瞬間、立方体の隙間から、どす黒い網目状の光が溢れ出した。

それは光というより、空間そのものに空いた「穴」のようだった。


「アリスッ! 離せ!!」


俺が叫んで手を伸ばした時には、もう手遅れだった。

黒い光は一瞬でアリスの小さな体を飲み込み、周囲の空間を捻じ曲げる。


「――ぁ、きょう……っ!!」


アリスの手が空を切る。

視線が合ったのは、ほんの一瞬。

直後、爆発的な衝撃波が俺を吹き飛ばし、目を開けた時には、そこにアリスの姿はなかった。


床に転がっていたのは、真っ二つに割れた立方体の残骸だけだ。さっきまでアリスが遊んでいた鏡や鈴が、虚しく散乱している。


「アリス!? アリス!!」


俺の声が、虚しく宝物庫に反響する。

騒ぎを聞きつけたガルドとルキアスが、すぐさま部屋に飛び込んできた。


「教祖様! 今の衝撃は……ッ、アリス様はどこに!?」


「アリスが……棚の奥にあった立方体を触ったら、急に光って……消えたんだ!」



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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