特進の少年は元恋人の編集者になりたい
特進の少年は夢を叶えたい。
「2学期の期末テストの範囲を言います」
僕は筆箱から赤色のペンを取り出す。
「ま、プリントで既に知ってると思うけど。えっと」
理科の先生は範囲を教える。
それを聞きながら、僕たち13人の生徒は教科書に印をつける。
「宿題もきちんとあるから、きちんとするように。
特進なので、頑張ってください」
授業後、席から立ち上がる人はいない。
皆、参考書を解く。
特進だから、いつもの光景。
県でトップクラスの高校だし、期末テストも近いから。
まだ、1年生なんだけどなー。
僕はついていくのに必死、何とか食らいついている。
好きな本もなかなか読めない。
でも、僕には夢があるし。
勿論、7時限目が終わっても、家で勉強。
「塾じゃないか」て?
宿題が大量にあるから塾に通ってたら留年確定なんだよなあ、特進だから。
そして、日曜日の朝。
「うーん。
いい目覚め」
背を伸ばし、僕は言う。
「休みだーっ」
そう、休み、本当の休み。
土曜日は、宿題と予習復習で1日潰れるから。
まあ、夢のためだから。
叶えたい夢、誓った夢。
「本読もう」
好きな本。
「好きな人が書いた、好きな本」
日曜日は、いつもそれにつかう。
『私、高校に入らないでプロとして生きていく』
『そっか』
『だから、キミとも別れないといけない』
『うん、新人だし、作家って生きていくだけでも大変そう。しかも、大企業じゃん。頑張らないと』
『今まで、ありがとう。本当にありがとう』
『…いやいや、こっちこそ。作品をいつも読ませてくれて、ありがたかったよ』
中3の春、学校で進路を決めた日の帰り道、僕は言われた。
元恋人になるか、別れたから。ケンカして別れた訳ではないんだけど。
「僕は、編集者になる」
元恋人の編集者になって、支えたいから。
約束はしていないけど、好きだったし、頑張る姿が。迷惑かもしれないけど。
「そのためには、食らいついて、いい大学に入らないと」
平凡だったけど、なんとか県でトップクラスの高校に合格できた。
そして、特進、特別進学クラス、東大とか、早稲田とか、そういう大学に絶対入りたい人のクラスに、入れた。
「最終目標は、あの子と世界一。
そのために、あの大企業。
いい大学に入らないと。
まずは、期末テストを。
はあ」
大変だけど、僕は心の中で誓ったから。
あの子の出した本を日曜日に読み、また明日から頑張ろうって思うんだ、いつも。
ありがとうございました。




