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四天王録  作者: Shaketsu Murima
奪還者(だっかんしゃ)の道(みち):盗(ぬす)む者(もの)
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第3章 ダンジョン・ループ

第3章 ダンジョン・ループ


ダンジョンの入口は封鎖されていた。

だが――ジェギョン・ナは、もはや法に縛られる存在ではなかった。


警備兵が二人、前に出た。

「無許可の侵入だ、止まれ!」


その声が終わる前に、空気が一度、揺らいだ。

次の瞬間、二人の体が崩れ落ちる。


ジェギョンは冷ややかな目で彼らを見下ろした。


「弱者が……強さの前に立つな。」


一歩を踏み出すたび、世界の温度が下がっていく。

石と炎だけが支配する静寂の世界。


階段が続く。

壁の松明だけが頼りの光。

その炎が彼の影を、無数の形に揺らめかせていた。


やがて階段は尽き、

代わりに黒い通路が、無限の闇へと伸びていた。


腐った息。

擦れる足音。

闇の奥から、モンスターたちが現れる。


錆びた爪。濁った瞳。

かすかな殺気が空気を裂いた。


壁の仕掛けが作動する。

矢が飛び、床が崩れる。

だが、ジェギョンは止まらない。

まるでこの地そのものが、彼の下僕であるかのように。


胸の奥――本が脈打った。

赤い光が皮膚の下を走る。


「再帰能力……試してみるか。」


指先が空を切る。

世界が一瞬、止まり――そして巻き戻った。


矢は壁に戻り、

死んだモンスターたちは、再び息を吹き返す。

落ちた石が空中で逆流し、元の場所へ戻る。


時間そのものが、逆再生していた。


ジェギョンは瞳を細め、

わずかに口角を上げる。


「なるほど……時を“書き換える”力か。」


歩くたび、ループが生まれる。

殺すたび、世界がやり直す。

そして、そのたびに彼は――強くなっていった。


モンスターを倒すたび、

その記憶、技、動きが彼の中に流れ込む。

本が呟くように、データが刻まれた。


《能力獲得:レッサー・キネティック・パルス》


また一体。

影狼の喉を掴み、捻り潰す。

赤い光が手のひらを包む。


《スキル獲得:プレデター・インスティンクト》


ループが続く。

彼は学び、修正し、最適化していく。

敗北のない戦い。

絶え間ない進化。


ダンジョンは他者にとって地獄。

だがジェギョンにとっては――鍛錬の炉だった。


最下層。

ボスルームの扉が開く。


骨の玉座。

その上に、鉄と影を纏う巨体が座っていた。

目だけが燃えるように光り、咆哮が空気を砕いた。


ジェギョンは一歩踏み出し、低く笑う。


「理想的だ。」


刃が振り下ろされる。

床が裂ける。


彼は避けない。

――ループした。


六つの残像が重なる。

六人のジェギョンが、時間の隙間を進む。

一秒の誤差もなく、六度の未来が重なり合う。


そして、最後の一人が

巨体の前に立つ。


手を伸ばし、胸に触れる。

本が真紅に輝いた。


《スキル奪取:タイタン・リインフォースメント》

《パッシブ統合:アーマー・オブ・デンシティ》


巨人の咆哮が途切れ、

その体は光の粒となって崩れ落ちた。


ダンジョンが再起動する。

だが、ジェギョンは最初には戻らない。


力は蓄積し、記憶は更新され、

彼自身がシステムの一部となっていた。


鼓動が二つ。

一つは人としての命。

もう一つは――本の鼓動。


「奪い、喰らい、書き換える……」

「それが今の俺だ。」


赤い光が瞳の奥で螺旋を描く。

彼の中の《クリムゾン・ルカウ》が、歓喜に震える。


人と遺物の境界が消え、

存在そのものが曖昧になっていく。


彼は静かに笑った。


「さあ……もっと深くへ。」


本が脈動し、

足元の空間がひび割れ、

新たな階層への階段が姿を現す。


そして、ジェギョンは闇の奥へ歩みを進めた。

光は遠ざかり、時間は再び――巻き戻る。

いつも物語を読んでくださっている皆さまへ。

毎週金曜日の更新を楽しみに待ってくださり、本当にありがとうございます。長い文章にも関わらず、最後まで読んでくださる皆さんの存在が、創作の大きな支えになっています。

物語はまだ続きますが、こうして一緒に歩んでくださることに、心から感謝しています。

これからも、少しずつ深く、少しずつ広がっていく世界を楽しんでいただけたら嬉しいです。

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