表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四天王録  作者: Shaketsu Murima
変動の道 — すべてを変える者
1/8

ダンジョンが現れた日

こんにちは、みなさん! これを読んでくれてありがとうございます。これはこの物語の第1章です。 ウィンドウシステムやダンジョンなど、ファンタジー小説に登場するような要素にとてもインスピレーションを受けて、この作品を作りました。 そういった仕組みがとても面白くて好きなんです。 読んでくれて本当にありがとう。 これからも読んでくれたら嬉しいです!

## 第1章:ダンジョンが現れた日


ダンジョンが現れたその日、世界は「安全」という幻想をやめた。

警告も、説明もなかった。

ただ――それは現れた。現実を裂くようにそびえ立つ、黒曜石の巨大な門が。


その門は、誰にも解析できないエネルギーを脈動させていた。

そして、そこから溢れ出したのは、人類が見たこともない「存在」だった。

肉と骨がねじれた獣。

悪夢がそのまま形を得たような怪物。


政府は崩壊し、都市は落ち、恐怖は怪物よりも早く広がっていった。

――そして、人々は「覚醒」した。


ある者はそれを「進化」と呼び、

ある者は「神の介入」と呼んだ。

理由はどうあれ、人間たちは突如として“力”を手に入れたのだ。

炎、氷、念動、治癒、召喚――常識も物理法則も無視する異能。

世界は、一夜にして変わった。


ダンジョンは次々と出現し、

英雄たちは次々と立ち上がった。

だが、その均衡が保たれることは、一度もなかった。


---


二年後。

韓国という国は、もはや存在しなかった。

そこは「戦場」と化していた。


Sランクのダンジョンが群を成すように現れ、

一つとして安全な場所はない。

州全体が放棄され、生存者は避難。

残った者たちは――もう、いない。


国際社会は韓国を「レッドゾーン」と呼んだ。

飛行禁止。立入禁止。救助もなし。


それでも――一人の少年が逃げ延びた。


---


2026年、日本・渋谷。


冷たい雨が、金属のような匂いを街に落とす。

ネオンの光が水たまりに揺れ、車が水煙を上げて走り抜ける。

無数の傘が、幽霊のように行き交っていた。


その中を、一人の少年が歩いていた。

木淵きぶちシュウヤ。十六歳。

日本と韓国のハーフ。

家なし。家族なし。頼れる者なし。


彼は、火の中から逃げてきた。

着の身着のまま――そして、焼け落ちる家族の記憶だけを抱えて。

あの日、家族を飲み込んだダンジョンは、まだ誰にも攻略されていない。

名さえついていない。

ただ現れ、すべてを喰らった。


叫び声。熱。

そして――その後に訪れた静寂を、彼は今でも覚えている。


今、彼は渋谷の街角で生きている。

雨除けの下で眠り、盗めるものを食い、必要なら拳を使う。


だが今日は違った。

今日は――学校に行く日だった。


勉強のためではない。

未来のためでもない。

今日は「評価の日」だからだ。


---


日本では、十六歳になると全員が“スキャン”される。

政府が全国の学校に設置した評価装置――

無機質な音を立て、静かに唸るその機械は、人間の「潜在力」を測るという。


ランク、能力、戦闘適性。

それらを一瞬で判定する。


ある者は即座に覚醒し、

ある者は時間を要し、

そしてごく一部は――最後まで何も得られない。


シュウヤには、自分がどれに当てはまるのか分からなかった。

だが、彼が“望むもの”だけははっきりしていた。


---


雨が弱まるころ、彼は学校の門をくぐった。

服は濡れ、息は白く、足音だけが響く。

通り過ぎる生徒たちは彼を見た。

好奇、嘲笑、嫌悪――いろんな視線が交錯する。


彼は気にも留めなかった。


校舎の前で、上級生のグループが一人の新入生を囲んでいた。

小柄な少年が震え、鞄を盾のように抱えている。

上級生の一人が拳を振り上げた、その瞬間――


シュウヤが踏み出した。

拳を掴み、空中で止める。


「消えろ。」

低く、静かな声。

「俺が本気出す前にな。」


上級生が目を細める。

「誰だ、お前。」

「新入生だよ。」シュウヤは答えた。「そこの奴と同じ。」


「じゃあ、関係ねぇだろ。」

「……関係ある。」


上級生がもう一度拳を振り上げる。

だが、動いたのはシュウヤの方が早かった。


合気道――派手さはないが、確実に相手を制す技。

彼は腕を捻り、重心をずらし、一瞬で相手を地面に沈めた。


他の三人が動けずに固まる。

そして、次の瞬間――彼らは能力を発動させた。


炎。水。土。

三人の上級生、三つの異能。


シュウヤは――何も持っていなかった。

それでも、戦った。


---


その戦いは公平ではなかった。

むしろ、一方的だった。


炎がシャツを焼き、

水の衝撃で身体が地面に叩きつけられ、

岩が肋骨を砕いた。


それでも彼は、誰もが想像したより長く立っていた。

――だが、最後には倒れた。


---


二時間後。

廊下を歩く彼の姿は痛々しかった。

焦げたシャツ。濡れた髪。

左足を引きずり、全身に打撲と切り傷、乾いた血。


守った新入生が「ありがとう」と言おうとしたが、

シュウヤは何も答えなかった。


彼は教室に入り、目の前の“評価装置”を見つめた。

無言で立ち尽くすそれは、まるで神殿の石碑のように重々しく、

低い音を響かせていた。


誰も、その仕組みを知らない。

「魂を読む」と言う者。

「才能を裁く」と言う者。

中には「ダンジョンと繋がっている」と信じる者もいた。


シュウヤは拳を握りしめ、

一歩、前に出た。


装置が光を放つ。

柔らかな光が彼の全身を包み――


その奥底で、何かが目を覚ました。


---


**第1章 終わり**


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
この第1章の構成は完璧だと思います!特に敗北から評価装置へ向かう静かな流れと、そこで初めて能力が目覚める展開は読者を引きつけますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ