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第2話 — 墓地の踊りと、心の芽生え

ツキヨは、少年に一目で心を奪われた。

彼女にとって、これまで話したことのない“誰か”は、願いを叶える新しい可能性だった。


少年が走り去ったあと、ツキヨは距離を取るのを待ち、すぐに後を追った。

そして、墓地の門近くにある壁の裏に身を潜めた。


少年はすでに仲間たちと合流していた。

彼らは笑いながら、臆病者だと彼をからかっていた。


少年は言い返そうとしながらも、何度も墓地の門を振り返っていた。

まるで、まだ近くに“誰か”が隠れて見ているような気がしていた。

理由は分からない。ただ、そう感じていた。


数分後、笑い声と罵声が収まり、彼らは帰るために背を向けた。


ツキヨは、今がチャンスだと思い、壁の上からそっと覗いた。

髪は失った片目を隠し、残った鮮やかな緑の瞳だけが、少年の視線と一瞬交差する。


驚くべきことに、少年は怯える様子を見せなかった。

彼は、誰かが墓地にいたことを理解していた。

だが、ツキヨが“理解を超えた存在”であるとは、思いもよらなかった。


少年たちが霧に包まれた道の先へと消えていく。

ツキヨは立ち上がり、墓石の間を歩き始めた。


胸に手を当て、心が高鳴る。

そして、彼女は踊り出した。墓地の中で、くるくると。


踏みしめる土が跳ね、髪が自由に風に舞う。

カラスの鳴き声が、彼女のステップに音楽を添える。


その瞬間、彼女は——

自分が“死んでいる”ことを、ほんの少しだけ忘れていた。


だが、声が彼女を現実に引き戻す。


「おい、女……もうちょっと気をつけろよ」

「俺の墓を踏んでるぞ。頭蓋骨がまた沈んじまった」


ツキヨはハッとして、立ち止まる。


「すみません、骸骨さん。ちょっと興奮しちゃって……」


骸骨は、ぼやくように言った。


「最近の若い奴は礼儀がなってないな」

「それに……あの少年。お前、まさか……いや、考えすぎか?」


彼は答えを知っていながらも、確認するように問いかけた。


ツキヨは一瞬うろたえ、動揺を隠そうとする。


「いえ、骸骨さん……えっと……ただ、ちょっと気になっただけで……」


「ふん……まあいいさ。だが、気をつけろよ」

「もし彼が、お前の正体を知ったら……きっと、お前を恐れるだろう」

「その覚悟はしておけ」


そう言って、骸骨は静かに土をかけて、自分の墓に戻っていった。


その言葉は、ツキヨの心を一瞬凍らせた。


だが、それも長くは続かなかった。


空が少しずつ明るくなり、橙と桃色の光が広がっていく。


一羽のカラスが彼女のそばに舞い降り、墓石の上に止まった。


「急げ!急げ!門番が交代したぞ!」


ツキヨは思い出す。今は交代の時間。急がなければ。


カラスに礼を言い、笑顔で走り出す。


——こんなにも心が躍るのは、いつ以来だろう。


彼女がずっと願っていたもの。

それが、今まさに叶おうとしているのかもしれない。


“生者”の世界で、誰かと“愛”を分かち合うこと——

それは、本当に可能なのだろうか?

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