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俺の目的



 異世界のお約束とばかりに絡んできた冒険者と思われる男を俺はとりあえずスルーすることにした。

 声の主に見向きもせず受付の方へ向かうとやはり声の主は怒ったようで


「何無視してんだ!」


 と俺の肩を掴もうとしてきた。だが……その手が俺の方を掴むことは無かった。なぜならその手は攻撃とみなされたようで己スキルである物理無効化が発動したからだ。

 ……そういやこのスキル切ってなかったな。と俺が忘れていたことを思い出しているのを他所に件の男は俺の事をつかもうと何回も手を伸ばす。だが掴むことは出来ない。やがてそのことに対してもイラついてきたのか


「てめぇどういうことだ!」


 と手でできないなら言葉でとでも言うように再び大声で言ってきた。


「どういうことだと言われてもただ貴方が弱いだけでは?」


 と煽るように言うとブチ切れ始めた。

 そしてその騒ぎを見ていた冒険者たちも


「おう!やれやれ!」「またやってんのか!」


 などと野次を飛ばしている。だが場が温まってきたのであれば必然とこの騒ぎは建物の奥まで聞こえるのだろう。一人のやけにガタイのいい男が出てきて


「てめぇらうるせぇぞ!」


 と建物中に聞こえるような声でそう言ってきた。すると今まで野次を飛ばしていた冒険者たちが一瞬で静まり返りまるで最初から何も無かったかのように元通りになっていった。だが元通りになったのは周りだけであり、俺とイチャモンをつけてきた男はそのままだ。


 そのことに気づいた男はこちらへ顔を向けると


「この騒ぎの中心はお前らか?」


 と聞いてきた。イチャモン男の方は驚いているのか恐れているのか何も答えないので俺が


「ええ、そうですけど。」


 と答える。するとガタイのいい男が


「そうか。ならお前らちょっとこっち来い。」


 と奥の部屋へ案内されることになった。


 ―

 ――

 ―――

 ――――



 その後俺とイチャモン男(ゲイルと言うらしい)の主張を聞いた男は


「ゲイル!てめぇは1ヶ月間冒険者権限はく奪な!」


 と伝えた。それを聞いて項垂れるゲイルを男はさっさと部屋の外に追い出し、今現在部屋には俺と男の二人だけとなった。


「まずはうちの冒険者が迷惑をかけたな。」


 そう言いながら男は俺に向かって頭を下げた。


「いえいえ、あんなの迷惑のうちには入りませんよ。…それで、あなたは?」


「自己紹介がまだだったな。俺はこのギルドのギルド長をしているガスパングだ。」


「ガスパングさんですね。俺はハーゲンダンツと申します。ハーゲンと呼んでください。」


「わかった。んでハーゲン。お前さんがここに来た理由はなんだ。冒険者登録か?」


「いえ、ただ魔物の素材を売ろうとしに来ただけです。登録はするつもりはありません。」


「そうか。あのゲイルをが手も足も出ないんだ。お前さんが強いのはわかる。それ故に少し残念だな。

 ……買取に関しては今回の迷惑料の分少し上乗せして払うことにしよう。それでいいか?」


「大丈夫ですよ。」


「わかった。なら早速この場でお前さんが売ろうとしてた素材を出してくれ。いちいち下に戻るより効率がいいからな。」


 ということでお言葉に甘えて俺は売ろうとしてた素材を出すことにした。だがさすがに手持ちの全てを出す訳には行かない。いきなり強めの魔物の素材を出して変に疑われたら面倒だしな。


 そして俺は結局倉庫番として置いていたホーンラビットの角やオーク肉、そして圧の意味も込めてグリフォンの羽を売ることにした。


「お前さんグリフォンも倒せんのか。」


「そうですね。グリフォンくらいなら余裕ですね。」


「ギルドに入らないのがますます惜しいな…。それで買取だな。ここまでの量だと金額を決めるまでに結構時間がかかる。今日はもうおせぇしまた明日来てくれないか?」


「明日ですか。」


「何かあるのか?」


「いえ、特にはないんですけど…お金が無いので宿に泊まれなくて。」


「なるほどな。それなら今日の分の宿屋代は先に渡しておこう。最終的な買取金額の分からそれを引くってことでどうだ?」


 「それでお願いします。」


「それじゃ……ほらよ。」


 とガスパングからお金が入っているであろう袋を渡された。


「ありがとうございます。」


「元はお前さんのお金だ。それじゃまた明日ここに来てくれ。今日はすまんかったな。」


 そう言われ俺はギルド長に見送られながらギルドを後にした。




 ギルドから出た俺は街に来た目的でもある奴隷商を探すことにした。


 とは言っても性奴隷という目的では無い。どちらかと言うと怪我や病気などで命が尽きそうな奴隷を求めている。

 その理由として俺のスキル構成が関係しているのだ。俺のスキルは魔術師の中でもとりわけ死霊系統に特化させている。ゲームではプレイヤー以外の死亡判定の敵をレベル関係なく、アンデッドとして蘇生が出来るスキルを持っている。

 そのスキルの名は「死者の軍団(アンデスアーミー)」と言う。このスキルは死人族になり、職業を魔術師にした上で100レベルまであげると獲得出来る康スキルだ。

 ちなみにこのスキルはゲーム内で俺しか使えない。


 さて、スキルのことは一旦置いておくとしてなぜ死にかけの奴隷が欲しいかはわかったと思う。

 あくまで奴隷の意思を尊重しつつ死んでしまった奴隷をこのスキルでアンデッドとして蘇生をして配下にしたいのだ。


 俺はこの世界でもゲームでやっていたように魔王ロールプレイをするつもりだ。魔王と言っても人間にガチ敵対をする気は今のところない。ただ死人族という人ならざるものになった影響なのかは知らないが盗賊を殺した時も罪悪感より快感が勝った。なのでもし人間たちが俺に敵対的な行動をとったら………。


 ただ、ロールプレイをするにしても独りだと格好がつかない。そのために言うことの聞く配下が欲しいのだ。



 ということで俺はその目的を果たすためにも奴隷商の所へ向かうことにしたというわけだ。


 

死者の軍団は死んだ直後の相手をアンデッドとして蘇生するスキルでありこの効果は相手のレベルや抵抗を無視して機能する。そして蘇生された者は主であるハーゲンに絶対服従となる。

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