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桃太郎─第1部:正義という名の暴力─

むかしむかし、ある村の川を、巨大な桃が流れてきました。おじいさんとおばあさんが桃を割ると、中から美しい赤子が現れました。桃のように赤らんだ頬のその子は、「桃太郎」と名付けられ、夫婦に大切に育てられました。


桃太郎は普通の子どもとは違いました。生まれながらにして並外れた力を持ち、三歳で大人の男性を軽々と投げ飛ばし、五歳で巨石を素手で砕くほどでした。村人たちは最初こそ驚嘆していましたが、やがてその力を恐れるようになりました。


しかし、桃太郎が本当に恐ろしいのは腕力ではありませんでした。彼の心に宿る「正義」への異常な執着こそが、真の脅威だったのです。


七歳の時、村の子どもたちがいたずらをしているのを見つけた桃太郎は、容赦なく「制裁」を加えました。「悪いことをした者は罰を受けなければならない」そう言いながら、相手が泣いて謝っても一切手を緩めませんでした。


「正義は情けをかけてはいけないんだ。悪は徹底的に排除しなければならない」


十歳になる頃には、桃太郎の「正義」はさらに苛烈になっていました。嘘をついた子どもの口を縄で縛り、盗みをした少年の手を折り、大人たちでさえ彼の「裁き」を恐れるようになりました。


「桃太郎、そんなことをしてはいけません」おばあさんが諭そうとすると、桃太郎は冷たい目で答えました。


「おばあさん、悪を庇うのも悪なんですよ。僕は正しいことをしているだけです」


村人たちは桃太郎の行動を「正義感が強すぎる」と表現しましたが、実際には彼の正義は既に暴力と化していました。力こそが正義を実現する手段であり、従わない者は悪として断罪されるべき存在なのです。


おじいさんとおばあさんは、愛する桃太郎の変化に心を痛めました。しかし、彼らにも止める術はありませんでした。桃太郎の力は既に人間の域を超えており、何より彼自身が自分の行いを「正義」だと確信していたからです。


「正義のためなら、どんな犠牲も厭わない。それが僕の使命なんだ」


桃太郎はそう言いながら、村の平和を守るという名目で、ますます厳しい統制を敷いていきました。彼の正義は、もはや誰にも止められない暴力の化身となっていたのです。


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