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浦島太郎-後編-甘い煙の中で-

太郎が村に戻ると、目の前に広がっていたのは地獄だった。


焦げた木材、黒煙、崩れた柱――家は完全に焼け落ちていた。辺りには煤けた空気と、残り火の匂いだけが漂っていた。


「お母さん……!? おい、どこだ! 母さん!!」


叫べど返事はない。隣人の姿もない。村そのものが、まるで一夜にして消えたかのようだった。


茫然と立ち尽くした太郎の手には、乙から渡された玉手箱が残っていた。


「こんなときに、土産なんて……クソッ!」


怒りと絶望の中、太郎はついに箱の蓋を開けてしまった。


次の瞬間、


「ゴォッ!」


中から勢いよく火花が噴き出し、箱の底に仕込まれていた乾燥したキョウチクトウの束に火がついた。白く、甘ったるい煙が瞬く間に周囲を包む。


「ゲホッ……ゴホッ……な、なんだこれ……ッ」


キョウチクトウ――猛毒植物。その煙を吸い込めば、呼吸器を焼かれ、神経を蝕まれる。太郎は地面に崩れ落ち、咳き込みながら視界を白く染めていく煙の中に沈んでいった。


「お、俺が……何をした……? ただ、楽に……暮らしたかっただけなのに……」


その言葉を最後に、太郎の意識は暗転した。


……


数日後、乙は浜辺に立ち、静かに海を見つめていた。


「罪は、罰を連れてくる。偽りの正義には、真の報いを」


彼女の隣には、傷の癒えた亀吉が立っていた。二人は黙って祈りを捧げ、海へ背を向けて歩き出す。


浦島太郎の名は、やがて村から消えていった。 誰も語らず、誰も惜しまなかった。


――めでたし、めでたし。


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