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ラプンツェル-第4部-価値のないふたり-

その夜、ラプンツェルは地獄を味わいました。舌を裂かれ、喉に煮えたぎる油を流し込まれ、声を奪われました。悲鳴を上げることもできず、ただ涙を流すしかありませんでした。


「もう売り物にならないお前に、価値はない」女は冷たく言い放ち、手下に命じてラプンツェルを塔から突き落としました。そして、切り落とした長い金髪を窓辺に結び、王子を待ちました。


数日後、軽い気持ちで「迎えに来たよ」と塔にやってきた王子。しかし、入った瞬間に背後から襲われ、縄でぐるぐる巻きに縛られました。


「え?何?何これ?ちょっと、やめてよ!」まだ状況が理解できない王子は、軽い調子で抗議しました。


部屋の中央に座る女が、静かに口を開きます。「よく来たわね。お前の『愛』の代償を、きちんと払ってもらうからね」


「は?代償って何?オレ、何もしてないよ?ただ愛し合っただけじゃん!」


「愛し合った?お前が台無しにしたのは、十二年間かけて育てた私の商品よ。その損失を、お前の体で償ってもらう」


王子の顔が青ざめました。「ちょっと待って!話し合おうよ!オレ、王子だから、お金とか払えるから!」


しかし女は容赦しませんでした。刃物が王子の右目に突き立てられます。「ぎゃああああああ!」今まで聞いたことのない絶叫が響きました。


「やめて!やめてください!もう二度としません!もう彼女には近づきません!」お気楽だった王子の声は、恐怖で震え上がりました。


「遅いのよ。お前のせいでラプンツェルは…私の可愛いラプンツェルは…」


左目にも刃が刺さります。「ぎゃああああ!いやだ!もう許して!お願いします!何でもします!」


「何でもする?じゃあ、これも我慢しなさい」


ナイフが王子の下腹部に振り下ろされました。男性としての尊厳を完全に破壊する、残酷な一撃でした。王子の絶叫は、もはや人間の声ではありませんでした。


「ぎゃああああああ!殺して!殺してください!もう…もう…」


「死なせるものですか。お前には、この苦痛を一生背負って生きてもらう」


その後、王子は塔の窓から突き落とされました。全身を骨折し、血まみれになって地面に叩きつけられました。


数週間後、森の奥で二つの影が出会いました。声を失い、腹の子を流し、心を壊されたラプンツェル。目を失い、男性としての機能を奪われ、絶望の底に突き落とされた王子。


二人は泥の中を這いながら、互いの存在に気づきました。言葉を交わすことはできませんでしたが、同じ地獄を味わった者同士、何かを感じ取ったのかもしれません。


やがて、二人の指先が触れ合いました。そこには、もう愛も希望もありませんでした。ただ、同じ絶望を共有する者同士の、静かな共感だけがありました。


森の夜は、何も見ていませんでした。二人は言葉もなく、ただ寄り添い合って、冷たい地面に沈んでいきました。


夢も、愛も、声も、光も、ここにはもう何もありませんでした。


めでたし、めでたし。


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