ラプンツェル-第3部-商品価値、失墜のキス-
ある日、森を気ままに散歩していた王子が、偶然その光景を目撃しました。「えー、何あれ?マジックショー?」王子は世継ぎの重圧から逃れるため、毎日のように城を抜け出しては森で遊んでいる、典型的な現実逃避型の若者でした。
好奇心に駆られた王子は、女の真似をして地面と木を叩いてみました。すると本当に隠し扉が現れたのです。「うわー!これヤバくない!?秘密基地みたい!超カッコイイ!」
塔に上がった王子は、美しいラプンツェルを見て目を輝かせました。「うわっ!マジで美人!これって運命じゃない?すっげー、まるで物語みたい!」
ラプンツェルは驚いて振り向きました。「だ、誰?どうやって入ってきたの?」
「偶然見ちゃってさー、あの仕掛け。マジでスゲーよ!君、ここで暮らしてるの?本気で?なんか、すっげー面白い生活してるじゃん!」
「私は…ママにここで守られてるの…」
「ママって、あの怖い女?うわー、あれがママなの?えー、なんかもっと優しそうな人想像してたわ。でも君、めっちゃ可愛いよね!」
ラプンツェルは生まれて初めて聞く軽薄な言葉に、なぜか心が軽くなるのを感じました。「あなた、変わった人ね…」
「よく言われる!オレ、実は王子なんだけど、世継ぎとか超面倒だから逃げてきたんだよね。でもさ、こんなに可愛い子が塔に住んでるなんて、これ絶対運命だって!」
王子は毎夜のように塔を訪れるようになりました。「愛してる」「君は特別だ」「一緒に逃げよう」そんな軽薄な言葉を次々と口にしながら、ラプンツェルに愛を囁きました。
商品として育てられ、愛を知らなかった少女は、初めて触れる優しさに心を奪われました。「私も…私もあなたを愛してる…」
しかし、ラプンツェルの体に変化が起きていることに、人買いの女はすぐに気づきました。腹部のわずかなふくらみ、床に落ちた血の染み。女の顔が怒りで歪みました。
「お前…まさか…」
「…っ」
「このバカが!自分から商品価値を無くしやがって!何年かけて育てたと思ってるんだ!」
手のひらがラプンツェルの頬を打ち、白い壁に血が飛び散りました。女は狂ったように叫びました。「どうして!どうして!なぜ私の計画を台無しにする!」
「ごめんなさい…でも私は…愛したの…」
「愛!?何が愛よ!お前は『夢』を売るためだけに育てられたんだ!処女性という最高の商品価値を、なぜ自分で捨てるんだ!」




