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第二十九話

それは何気のない日常。


俺は好きという気持ちをあらわにしてそれを言葉にしてその初めて意識した


好きな人に思いを打ち上げ本懐を遂げそのまま結婚に至ったという話。


相手は小林でいつも朝には味噌汁とご飯とおまけに総菜もつけてくれる。


「あなたと初めてエッチなことしたときのことはよく覚えているわ。


あああの時ほどアドレナリンが出たことはないわ」


対面の席に座り朝食を食べているものに向かって妻は何を言い出すかと思えば


「なんだい突然」


「いやね、本当にあそこであなたが私に手を出さなかったら何も起きてなかったんじゃないかって」


「ああ、あの祭りでの神社で水タオルで体をふくときのことか。俺もその時は自制心がなかった」


「いや、それでよかったのよ。そうでもなかったら私やすやすと男の人に裸を見せるもんですか」


「ふふ、まあね。それもそうだな」


「でしょう?そうなのよ。あなたがあそこで私の体に興味を示してくれなかったら


全く今日に至るまでのこの結婚生活はなかったわ」


「そうかな、あの後の花火での告白が決め手だったんじゃないか?」


「いえいえ、あそこではもう確定していたというものだから話は別よ」


「ふーん、そんなものかな」


何を話しているのか、というかここはどこなのかと俺はとまどいつつも


朝食の味噌汁を飲もうとしたらそこにはイケメンが映っていた。


・・・・・誰だこいつ。


俺、、、じゃないな。


こんな凛々しい顔つきにして仲睦まじく食卓を囲んでるやつは・・・


「それはね、巨乳に気を取られなかったあんたの未来よ」


なんていきなり目の前で小林が豹変したかと思えば俺の姿も元に戻っていた。


小林は泣きながらにしてその眉根は中央に寄せ硬くそれをほどきはしなかった。


「誠一が私の体に興味を示さなかったから!うわあああん!」


なんていいながらにして襲い掛かってきた途端にこれは夢だっ!


なんて思いながらにしてばっと目を覚ましてみると


「・・・え?」


俺と小林は二人で手をつないで山の上の有名な自殺スポットである崖の上に位置していた。


「起きた?」


なんて満面の笑みで問うてくる小林。


なんだかサイコパスめいていてとても怖かった。


びゅーびゅーと高い所であるが故風が俺の顔を撫でてくる。


なんでこんなところに・・・・


しかしそんなことを一言でも発せば途端に隣にいるやつが発狂しそうだったので


やめた。


どーんどーんといまだに花火は出続けていた。


高い所から見るそれはまさに絶景だった。


これを見るためにここにいるんだな。


俺はもはやそう思い込むしかなくなっていた。


目下の崖に目を背けながら。


「きれいだね」


と小林。


ちらっと見てくるので答えざるを得なかった。


手は汗ばんでいる。


それははたして俺の者なのかはたまた・・・


「そうだな」


「もうすぐで私たちもあそこにいくんだよ」


「・・・」


「あのね、別に君が悪いって事じゃないんだよ。


ただ運命のめぐりあわせが悪かったってだけ。


だからね、もう一度リセットしよう」


「・・・」


「あの邪魔な牛乳女はもういないことを願いながら来世ではラブラブ結婚しようね」


「・・・」


「もう今のままじゃ私たちは穢れに満ちた関係でどうしても純粋な付き合いができないの。


しょうがないね、じゃあいくよ」


「・・・」


途端に俺の足場が地面から切って切り離される。


というのも傍らにいる女の言っていることが何一つ理解ができず


その情報処理に頭がいっぱいだったからだ。


引っ張られる手。


追随して落ちていく体。


花火はもう終わっていた。


祭りの灯ももう消えていた。


そして落ちながらにして重なる唇は冷え切っていて


下から上へと落ちてくる涙はまた温かく


そのぬくもりをもってようやく俺は己のした行動を恥じ


そして彼女の体を強く抱きしめた。


「すまない」


この四文字が辞世の句になるなんてことがどこで想像されよう。


全くにして人生というものは摩訶不思議なものだった。


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