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第二十五話

「偉大なる裁判官様からの判決よ。謹んでお受けしなさい」


女子高生にしてディルドをもってガシガシとやっているあいつのどこが


偉大なのか。


しかししてもう稲村姉もいってしまった以上熱中症で倒れていたやつを一人ぼっちにする


のもなんだか心が引けるので俺に退路はないということであり


だがしてその倒れたというのも過去の話で今現在動けるなら一人で自分を介抱できる


というもので


「なあ、そこまでして動けるんだったら自分でやれるんじゃないか?」


ともいえる。そして実際に俺はそう口に出す。


するとくいっくいっと指でこちらへこいとの合図ともとれる動作をさせてみせるので


「なんだよ」


とお望み通り近づいてやると


「おでこ、ん」


こつん、なんて小気味のいい響きを鳴らして小林は俺の額に自分の額を合わせに来た。


今時、こんな計り方をするやつを初めて見た。


しかしして確かに高熱というということは伝わり、またその熱い汗もこちらへ伝ってくる。


なるほど、汗を出しているのにもかかわらず気化作用でそんなに冷えないということは


やはり重体だということがわかる。


だがエアコンも効いてきていることからもう既にこの部屋は快適そのもので


むしろ俺が介抱してしまうと人間の体温により余計に熱を持ってしまうのではと


いうのも少し俺の考えとしてある。


そう思いながらうーんと腕を交差させ悩んでいると


「なによ、そんなに気にするならクラスメイトじゃないじゃない。」


同じ言葉が続くと日本語としてあまり響きがよくないものだが


はたしてその不機嫌な語調をプラスしたことにより余計に耳障りな一言へと昇華した。


「ん、別に気にしてなんてねえよ。ただお前のわがままに気を悶えていただけだ」


「わがままをいう権利が私にはあるわ」


と突然何を言うかと思えば


「言ってみろ」


「あんたがね、寝ている間異常なほどまでにくっついたから熱くなっちゃって私が


今困難になってるんだから責任取ってよね!」


「んん~~?ああーー」


確かに寝ている間はくっついていたかもしれない。


ったく、ああいえばこういう減らず口な奴め。


「はいはいわかったよ、タオルで体拭いてやるからとりあえずこの水を飲め。


冷たいぞ」


「ん、ありがと」


もうちゃっかりと座れるまでには元気を取り戻している小林。


何をもってこんな俺にタオルで体を拭いてもらいたいのだろうか。


「というかクーラーききすぎてないか?俺としては少し寒いくらいなんだが」


「ん、丁度良いわ」


話している間は別にそこまで嫌悪感はないようだ。


今だってほほ笑みながら返答してくれたことだし。


・・・なるほど、そういうことか。


俺は一つひらめいたことがあったので、小林の頭を撫でながら


「なるほど、わかったよ」


といった。


撫でられながらにして振りほど間ともしない小林はちびちびと水を飲みながら


上目遣いで問うてくる。


「な、なにがよ」


「お前の気持ちってやつが」


するとぼんっと途端に顔が真っ赤になる小林。


やはり当たっているようだ。


「わ、私の気持ちって・・・な、なによ」


テンパっているのがそのグラスを持つ手により明確に分かる。


だが別にそこまで恥ずかしいものだろうか。


誰にでもある感情だし俺だってある。


もう全人類があわせもっているという代物なのにどうしてわかられたら


恥ずかしいのか。


まあ脇に団扇を扇いだだけで怒るような奴だからデリケートなだけかもしれない。


俺は答えた。


「それは・・・あれだな。そう風邪の時にお母さんに甘えたくなるようなやつだ。


それがたまたま今日ずっと距離が縮まって仲良くなった俺に矛先が向いたってわけ・・・


違うか?」


水を持つ手が止まり、そしてぽかんと目を丸にして聞き入る小林。


図星か、なんて思っていたら途端にぐいっとグラスの中の水を飲み干したかと思えば


ぷはっーと息をつき


「違うわよ!ばかっ!」


と一言。


じゃあ今までの反応は何だったのかと俺は思ったが、どうしてどうして機嫌を損ねた


小林の耳にはそれは通らぬものとして聞き入れられなかった。


どこまでもめんどくさいやつだ。


しかしして下手に病気を患ってる分そう酷くいいづらいのがまたミソというもので・・・


やれやれ、と俺は首をふる。


そしてお嬢さんに使える執事さながらにしてそのご命令を聞き入れることに決める。


「じゃあ脱いでくれ」


俺は単刀直入に言った。


すると急にしどろもどろに体をくねらせまた目もおぼつかない様子で


かつ口元はゆるゆると一貫の感情が見えない程にて


「え、ん・・・んっんー。いやあのね、ちょっといきなりすぎるっていうか・・・


こっちにもこっちの事情があるわけだし・・・」


と全くにして俺に非がないのにもかかわらずいちゃもんを付ける始末。


これには令和の紳士こと、田中誠一も憤慨。


「・・・なぁ、お前がやれって言ったんだよな?それでもってなんだ、命令主が


いざとなったら日和るのか。それはそれはこっちとしても負担が減っていいことだよ


全く。最初からその気がないならいわなきゃよかっただろ」


「だ、だって・・・あんたには少し間ってもんの理解が足りてないというか・・・その・・・」


なーにが、「間」だよ。


と、ぎろっとその言い訳がましい女の風体を見るとなるほど合点がいった。


「なるほどな」


俺は腕組をしていった。そして続けて


「やっぱり裸見られるのは恥ずかしい、と。いやそりゃそうだ、いくらなんでも


男に素肌を見られてなんともないなんて女はいない。


俺だって女だったら気にするかもしれない、うん」


うんうん、とうなずきながらそういってみせると


「そ、そうでしょ?そうなのよ!女には準備の時間が必要ってもんで・・・」


と乗っかる馬鹿が一人。


そこで俺は隙を漏らさず言った。


「でもお前さっき何も気にしてないって言ってたよな?


やっぱり気にしてるんじゃないか!なんだよ、気にしてながらにして


俺に裸を見られたかったのか?痴女!この痴女め!」


「っっっ~~~!?!?!」


まーるで罠だと意識せずに嵌められた!なんて顔をする痴女さん。


というか俺が知りあう女性に少し性へ壁が薄い人が多すぎやしまいか・・・


なーんて思いながらにして余裕の笑みを上から目線でその男の前で


開放的な姿になりたい同じ学校のクラスメイトの女子を見つめる。


たまらなくなったのか目からも汗を流して見せる小林。


「うう、ひどいよぉ、ひどいよぉ・・・」


だなんてめそめそとレスポンス対決を放棄したことを表明し始める彼女。


やれやれ・・・これだから・・・


なんて思ってたらそれは数日前の記憶、突然脳裏にかすめる宗助の言葉があった。


これは確かこの世のすべての惰性感を敷き詰めたともいえるそんな雰囲気の


放課後の学校の教室で宗助と二人で話していた時のことだ。



「・・・でもよ、誠一。そんな長文、女子は聞いちゃくれないぜ?やっぱり簡潔に


言わないとロジハラとか言われちゃうぞ」


となんらかの話をしている最中だった。


確か俺のモテ具合についてどうのこうのという会話の途中だった気がする。


問題はこの後だ。


「ん、なんだそのロジハラって?」


と俺は問うた。そのあとの宗助の言葉である。


「おいおい、お前今のご時世なんでもハラスメントなんだぞ?


知らなかったなら今知っとけ。


ロジハラっていうのはな、ロジックハラスメントの略で論理で詰めて


相手を困らせたり、というか論破してねじ伏せたりすると


これはもう心に傷をおったということでちゃんと話していてもよくないものとして


受け取られるというものだ」


・・・つまり俺は今まさにもてない男のやるロジハラというものをしてしまっている!?!?


これは・・・まずい。


前言撤回しなければ!


確かに稲村とのディルドにより押し問答の時もこんな風に言葉にて詰め寄った


ような気もしなくもない。


なるほど、ロジハラ、か。


俺はそこが原因でずっともてないのかもしれない。


宗助の言っていたことは少なからずも当たっていたということだ。


現に結果として小林が泣いている以上それは正しい。


ならばどうするべきか、そんなことは決まっている。


今ようやくにして気づいた段階でそれをとりやめる。


一重にその行動をとって見せるのみだ。


だからと言って小林の涙腺が緩まるわけではなくそして当たり障りのない


謝罪をしてもこの場は収めきれない。


はたしてはたして俺はロジハラ気味の数秒前の自分を呪いつつ


この場を交わす方法について頭をひねらすのだった。





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