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暉郷の皇國  作者: 74式
第壱章 戰線狂曏
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第陸話 杳として振られる『ウ号』

 今次勃発シタ戦争ヲ『大東亜戦争』ト称ス。

 本大戦ノ意義ハ、亜細亜太平洋地域ヲ欧■諸国カラ開放シ、新秩序『大東亜共栄圏』ノ建設ニアル。

 我々ハ皇國ノ名ノ下、確実ニ遂行セネバナラナイ。

 東亜ノ新秩序建設ハ我ガ皇國ニ課セラレタ使命デアリ、国民ハ皇國ノ為ニ心身ヲ捧ゲテ、戦地ニ赴ク勇敢ナ国軍等ハ命ヲ悔ヤマズ敵ヲ駆逐セヨ。

 偉大ナル皇國ニ栄光アレ。

 

 昭令三十九年 一九六四年 三月八日 明朝四時四十二分。

 ハイトル(ハイマートルレム)のとあるキャンプ地にて、大規模な侵攻作戦の用意が進められていた。


「各員、揃ったな? それではこれより説明を開始する」


 咩畑目みはため中将の声に、場の雰囲気に緊張が走る。


「まず、第三十三師団がハイトルからキササキーチャー・サリー・サバクの南部へ進軍し敵を引き付ける。その後、第三十一師団が北部の街フヌカバドバスへ進軍、第三十一師団がフヌカバドバスを制圧したら我々第十五師団がキササへ一気になだれ込む。その際、我々の隊にはシヴァー・チュロストロ・ゴードン率いる自由拂国(バラード)軍が随伴する。そして、この作戦は所要日数二十日となった。個々の奮戦に期待している」


 そして腕の時計を見た咩畑目中将は、側近に何かを聞いた後、


「現時刻を以て、本作戦を“ウ号作戦”とする! 我々第十五師団は今から三十分後に作戦を開始する。各員、満を持して持ち場に着け!」


 ● ● ●


 あの後俺は、作戦の為に裏でこっそりと準備をしていた。


「おぉ、こんなところにいたのか」

「赤松中佐!」

「熱心に何を……って、それ、九五式野砲じゃないの!? 勝手に触って何を!?」

「今回の作戦では、なるべく人の足で進む事になるので歩兵に随伴出来る砲兵連隊を編成した方が良いかと思いまして、これは九五式野砲を元に今回の作戦用に最大限の軽量化とそれに対する限界レベルの威力維持を施した改九五式野砲です」

「お、おぉ……この十一門全部したのか?」

「はい。恐らく実戦でも問題なく運用出来る筈です」

「なんて奴だ……もし勝手な行動がバレれば大変な事になるぞ」

「そうなる前に! 俺はこの戦いの勝率を少しでも上げれるよう、出来る事を尽くしたいんです!」


 俺は少し覇気の籠もった声で言う。

 そうだ、俺に出来る事があるのならば全身全霊で取り組みたい。此処の日本の為に。


「なんだ? 騒がしいぞ」

「あ、上官!」

「坦大佐! 申し訳ありません、失礼しました」

「おお、何も無いならいい。それより早く来い、野砲なんて必要無いだろう」

「っ! 待って下さい! 今回の作戦では砲兵を編成した方が良いと思います!」

「お? 何故だ、新入り。今回の道はかなり悪路で泥濘ぬかるみも多いんだぞ? そんなもの、ただの足手まといにしかならんぞ」


 不味いな、ここで食い下がる訳にはッ!


「大丈夫です! 俺が工夫を――」

「必要無いもんは無い! だから――」

「坦大佐、私からもお願いです」


 そのまま後を去ろうとした上官を止めたのは、なんと赤松中佐だった。


「私からも、砲兵の編成をお願いしたいです」

「何故だ、さっきも言ったが道が――」

「彼が工夫を施しました。確かに今回の作戦では御荷物になるかもしれませんが我々は進軍側、相手も我が軍が近いことを理解しているでしょうから榴弾砲等を用いた砲撃による防衛をしてくることが予想されます」

「だが……」

「前の奇襲を退けれたのも彼のお陰です。私の感ですが、ここは彼を信じてみましょう」

「……はぁ、分かった。お前の感はよく当たることで有名だしな。咩畑目中将に進言はしといてやる。だが、それ以上は知らんぞ」

「はっ、有難う御座います」


 良かった……なんとか砲兵は編成出来そうだ。


「しかし、本当に大丈夫なのか?」

「はい、恐らくですが……」


 今回の作戦ルートはかなりボコボコしていて進軍の妨げになるのが予想されている。それに作戦所要日数はおよそ二十日、これはこの地域……ハイトル及び振国ブルビッシュでは、俺の推理が正しければ向こうと同じ四月頃から雨季になるはず、衛生環境が更に悪化して最悪の事態になることが考えられる。ならば……。


「ちょっと、何処に行くんだい!?」


 俺は赤松中佐を後にしてとある所に向かった。


「咩畑目中将!」

「な、何だね君は!?」

「中将に、作戦の提案を申し上げたく思いまして」


 やはり、自分から直接動く方が歴史を変えれる筈!


「なんだいその提案とは」

「まず、牛や羊といった動物を引き連れるのは止めた方が良いと思います」


 そうだ、向こうでの失敗の原因の一つ、動物等の足の遅さによる進軍速度の低下。車両による運搬もあったけど、人の言葉が通じない動物を従えて進軍するのは厳しい部分がある。


「それは無理だな」

「いや、今回の作戦ルートはかなりの悪路なだけでなく、高低差も激しいです! そんな中人語の通じない動物を引き連れるのは流石に困難です!」

「今回はただ運搬に使う訳じゃない。いざという時の食料になるからな」

「ですが――」

「今回装甲師団を減らしてまでこうしてるのはさっき君が述べた理由と今私が述べた理由があるからで、我々はひと月以内に作戦を終わらせなければならない。その為なら、どんな無駄も省いて作戦を遂行するのだ!」


 力強く言う中将に少し呆れてしまう。でも、それじゃ作戦は失敗してしまう!


「で、でも……」

「これ以上口出しするなら隊から追い出すぞ」

「うぐ……」

「分かったなら早くやることをやれ!」


 やはり自分一人じゃ厳しいか……。


 ● ● ●


 同日五時二十五分


「皆の者よ! よく聞け! これより我が師団は、振国のキササに進軍する! 用意はいいか!」

「「「「「おおおぉぉ!!!」」」」」


 侵攻が、始まる。かつて帝国史上稀に見る大敗を期した“ウ号作戦”が。

 俺は早速しくじった、改良案を受け入れてもらえなかった……が挫けるにはまだ早い。

 俺はいわば『ほぼ』未来人! やりようは幾らでもある。

 ウ号作戦を成功させるには……


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