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暉郷の皇國  作者: 74式
第壱章 戰線狂曏
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第伍話 時来る晨け

**********


昭令二十六年 十二月八日 午前七時


「帝国陸海軍ハ今八日未明、西太平洋ニオイテ●英軍ト戦闘状態ニ入レリ」


**********


同日午前十一時五十分


「我軍ハ陸海緊密なる共同ノ下、本八日、■■半島方面ノ奇襲上陸作戦ヲ敢行シ、着々戦果ヲ拡張中ナリ」


 

「う゛、あ゛、頭いでぇ」


 翌朝、俺は二日酔いになっていた。あれからどれだけ飲んだか見当がつかない。


「うぐ、う゛お゛、う゛え゛え゛え゛」


 危ない! 危うく吐くところだっt


「う゛お゛え゛え゛え゛ぇ゙ぇ゙ぇ゙」


 † † †


「……い。おーい」

「うぶ、おえ、げっほっ! げほっ!」

「おぉ大丈夫か?」

「うぅ、えーっと……赤松……中佐? どうして此処に……?」

「いや、物凄い唸り声が聞こえてきたから……一体どうしたんだい?」

「いやー昨晩あれから大佐に見つかって……振り回されてました……」

「そうか……もしよかったら大和葉君の休みをくれるよう進言してくるよ」

「あ、有難う御座います」


 今にも死にそうな体であのハードな訓練をこなすのは流石に無理があるからなぁ。こりゃ有り難い。

 ていうかこの感じだと上官は元気そうだな……流石現役軍人! 格が違いますわ。

 ……俺が年老いただけ? ――分からん。


「うっぷ…………ブクブクブクブクブクブク――」


 ● ● ●


「――きろ……」


「お…きろ……!」


「起きろつってんだろ新入り! いくら戦果を挙げたからからって戦場を抜け出すのは許されんぞ!」

「え、じょ、上官!?」


 その怒鳴り声で起きてしまった。人が頭いてぇって言ってんだろ静かにしろクソジジi


「えっと……な、なんですか?」


 すぐ後ろに、申し訳無さそうな顔をしている赤松中佐の姿があった。分かります、説得失敗したんですね。大丈夫ですよ責任感じなくても。


「緊急の会議だ、全員集合だからお前も早く来い! 師団長が来てるんだ」

「え、ま、マジすか」

「いいから早く来い! 行くぞ、赤松中佐」

「ええ。大和葉君、肩を貸しましょう。ほら、こちらへ」

「あ、有難う御座います」


 そのまま俺等はその広場まで足を運んだ。

 到着すると、沢山の兵士がズラーっと並んでいる。そんな中、先頭に頭一つ飛び出ている隊員を発見した。よく見るとその隊員は、なんか格式の高そうな服装をしていた。あれは――確か金鵄勲章きんしくんしょうだっけ?

 上官が位置に着き、さっと手を挙げてその隊員に合図を送ると話が始まった。


「皆の者、よく集まってくれた。まずは自己紹介からだな……ん゛ん゛、私の名前は咩畑目みはため達也たつや中将だ。これから此処第十五師団の師団長を務めるから、よろしく」


 おお、っと広場の皆が反応した。中将かぁ……余計なことしたらさぞかし切腹案件なんだろうなぁ。


「今回集まってもらったのは、これから重要な発表があるからなんだ」


 そこで周囲が一気にざわつきだす。発表ってなんなんだろう……?


「これより我々第十五師団は、第三十一、三十三師団と共に英領(エンスクウェア領)振国ブルビッシュへ侵攻を開始する!」


 その瞬間、一気にざわつきが加速した。ついでに俺の頭も一気に冴えた。

 侵攻を開始……つまり、英領振国を攻略するということ……あわよくば自由拂国バラード軍による振国開放もあるけど――


「中将! 流石に無理ではありませんか?」「英軍(エンスクウェア軍)の戦力は我々の三倍以上ですよ!?」「まだ準備不足ですよ!」「無謀だ!」


 そうだろうなぁ。俺は転生者だから生前の記憶、その過去の歴史を知っているからこそはっきり言えるがかなり厳しいだろう。

 此処での英はエンスクウェア、生前のイギリス。振国ブルビッシュは向こうで言うところの印国インド。そして現在地は確かハイトル……ハイマートルレムだっけ? がービルマだったはず。

 この作戦は、早期に終わったビルマ戦から一気に英領印国を攻略してしまおうという感じの作戦……史実では大敗したこの作戦、恐らくこの人が言っているのは生前で言う“インパール作戦”だろう。


「静まれ! これは昨晩の御前会議で決定した事だ。我々はこの作戦で、振国の独立軍自由拂国バラード軍と連携して英国植民地を連合国から脱落させることによって英国を屈服させ、戦争を早期終結に導くのだ!」


 もしこの世界が、俺が知っている世界と異なる部分があろうと生前の歴史と似たような歴史を辿るのなら、この侵攻作戦は失敗する可能性が高いだろう。

 けど、俺は世界感は違えどある程度の歴史を知ってこの世界に転生した。色々知っているし、当たり前だけどこんな経験次死んでも無いだろうから折角なら祖国日本を救いたいと考えた……まぁかなり無理があると思うけど。

 しかし流石かの大日本帝国軍だ。中将があれこれ言うと、段々と兵士達が作戦に頷き始めた。帝国陸軍というか、日本人はすぐ上司の言いなりになったり全体に同調してしまう。これはどうしようもない国民性だな。


「明朝五時に開始する。各員それまでに準備しておくように、解散!」


 ● ● ●


 その日の夜、俺は生前の“ミリオタ”だった事を活かして情報を整理していた。ちなみに赤松中佐から鉛筆と紙を貰った際に色々有益な情報を教えてもらった。

 現在の時は、昭令三十九年 一九六四年 三月七日。世界情勢を見る感じ、生前の昭和十九年 一九四四年頃だろうという目星は付いた。西暦や和暦は約二十年程ずれているって訳か……なんで? 

 ちなみにこの世界線でも日中戦争にあたる戦いがあるらしく、それは一九四七年から始まっているそうなのでおよそ十七年間も戦争を続けている計算になる……此処の帝国(日本)はバケモンかよ……。

 でも聞いた話によると此処の帝国の歩みは俺が知る史実とほぼ同じだった。一部の戦いで、史実では負けていた戦いで勝利していたりと、今のところ大きな敗北は無いといった違いもあるけど、赤松中佐曰く、流石に疲弊してきているそうでこの振国侵攻にかなりの不安を持っているらしい。

 ……これはそろそろ異世界転生者ミリオタとしての本領発揮する時かな〜!

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