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暉郷の皇國  作者: 74式
第壱章 戰線狂曏
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第弐話 キャンプジンギスカン

 ■■二十六年 十二月三日 

 帝国、●国に宣戦布告ス

 

 時は昔のいつか………

 俺は二次大戦真っ只中の世界に放り出されてしまったらしい。


「え、あの歴史上類を見ない大失敗をしたインパール作戦ですか!?」

「私語は(つつし)め! 馬鹿者!」

「う、も、申し訳ありませんでした!」


 目が覚めて早々これは骨が折れる。


「大体、大失敗したってなんだお前! 我ら誇り高き帝国陸軍に『失敗』『撤退』の二文字は存在しない! ……そもそもとして『インパール』など知らぬぞ」

「は、はぁ」


 なんか滅茶苦茶な事を言い散らかして何なんだよと思ってしまう……


「え、じゃ、一体何処(どこ)へ向かうのですか?」

「はぁ? 何処も向かわねぇよ。今から俺等は此処(ここ)に防衛戦を構築するんだよ! 分かったらさっさと手を動かせ間抜けめ!」

「え、ウ号作戦の主な内容はイギリス領インド帝国(英領印国)北東部の都市、インパールを攻略して援蒋ルートを断ち切る内容じゃ……」

「いんどていこくぅ? 何をぬかしおる貴様。貴様が言いたいのはエンスクウェア領(英領)ブルビッシュ帝国(振国)のことか?」

「えん……ぐる? 知りませんそんな国!」

「じゃ手を動かせ!」


 どうやら此処の日本軍は俺の知らない国と戦っているらしい。

 確信は持てないが、そこで初めて自分が死んで転生したんだって実感した。


「我々の役目は本隊が来るまでの約三ヶ月間、此処ハイトル(ハイマートルレム国)にて連合国軍の進行を阻止するための防衛戦を築き、耐え凌ぐことだ!」


 なんとなく地理が分かってきた。作戦名と土地の感じからしてこの世界ではエンスクウェアなる国が生前のイギリスで、植民地であろうブルビッシュがインド、そしてはいとる? はおそらくビルマの事だろう。

 よし、なんとなく状況は掴めた。これでもミリタリー界隈ではヘビーユーザーだったからその豊富な知識でなんとか足を引っ張らないようにしなきゃ。


「くれぐれも皇國の名に泥を塗ることの無いように。各員、気を引き締めて取り掛かれ!」


 指揮官らしき人がそう言うと、隊員達はてきぱきと自分の仕事に取り掛かった。


 ● ● ●


 あれから夜。防衛線はある程度構築され訓練に入る隊員もいる中、俺は要領が悪く半日程(しご)かれてようやく自由になったとこだ。にしてもピリピリし過ぎなんじゃないですかぁ?


「お、あの若造じゃん!」

「あ、ど、ドウモ」


 急に声掛けられた思たら食事を摂っていた隊員が俺を呼んでいた。なんか怖いなぁ。


「? なんだよ固まって、ほら来いよ。お前上官に怒られてまだなんも食ってないだろ」

「え、えぇ、まぁ」

「ほらこれ、お前の分だ。美味いぞ〜」


 そんな感じで手渡されたのは肉の入ったスープ。


「ジンギスカンスープだよ。歯ごたえがあって腹を満たすには丁度良いもんだ」


 そう食べながら説明してくれるその隊員の横に腰を下ろす。


「い、いただきます……」


 そして早速肉を一口。


「どうだ、美味いだろ」

「は、はい! とても美味しいです!」


 思ったよりも美味しいそのスープからは、とても戦場とは思えない家庭的な味がした。


「ガハハハハ! そんなに美味かったか若造よ」

「ぐっ、ぐっ、ぷはー。は、はい! とても美味しかったです! ……そのーおかわりって頂けるんですか?」

「それは無理だなぁ。一人あたりの配当が決まっとるからぁ……」

「そ、そうですか……」

「あ、でも明日の夜も同じだからそんときな」

「は、はい!」

「それじゃ、明日も頑張れよ、若造」


 うんうん、案外悪くないと思った自分がいる。確かにまだまだ覚えないといけない事は山積みだが、あんな風な楽しみがあるならやっていけそうだ。


「指揮官の言ってた事を脳内で振り返って実戦に間に合うようにする……よし、やれる! 大和葉は出来る!」

「ゴラッ! 何時だと思っている! うるさいと敵が来るだろう!」

「ヒエッ、す、スイマセン!」


 そうして、この一日は終わった。


 ● ● ●


 翌日……


「へこたれるな! 立て!」

「も、申し訳ありません!」

「そこ! 何を休んでいる! 頭をブチ抜かれたいのか!」

「す、すいません!」


 早朝からとてもハードな訓練に音を上げる隊員が多い。そりゃそうだろ今朝の四時ぐらいだぞ。


「おいそこの新入り、何ボケーっとしとる!」

「は、も、申し訳ありません」

「お前、昨日もそんなんだったよな。一回根性焼き直してやる」

「え、え?」


 上官がむちを持って近づいてくる。え、嘘やんヤバいってそれは。


「ちょ、上官殿! 大変申し訳ありません! ど、どうかお許しを――」

「駄目だ、これは決定事項だ。教育の一環だ、我慢しろ。嫌ならせいぜいこれから頑張るんだな」


 ひえーこの人目がマジだよ、殺す気でいるよ〜!

 イヤァーヤメテーギャァァァ――


「緊急! 緊急!」

「んだ、何事だ」

「敵襲! 敵襲! 八時の方向より機動車一、牽引式軽砲二、歩兵数千の編隊を確認! こちらに到着するまで十分と予想です!」


 すると、殺る気だった上官の目がガラリと変わって。


「何だと! 情報からの予想より随分早い……総員、戦闘用意!」

「「「「了解!」」」」

「おい新入り、今日は実戦で許してやる……と言いたいところだが……まだ経験がお前には足らん、だから今日は守ってやる。だからせいぜい他の隊員や俺を見て習うんだな」

「りょ、了解しました!」

「各員、なんとしてもハイトル戦線を守り抜け!」

「「「「おおお!!!」」」」

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