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暉郷の皇國  作者: 74式
第壱章 戰線狂曏
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第拾壱話 次号会談

 司令官マチャソ・ラキオーラを捕えた俺達一行はそのまま地上へ戻り、同地キササの戦後処理を行っていた。しかしながら一息ついている暇も無い。勝利したとは言え部隊は疲弊しているし南北に展開していた部隊に至っては敗走している為、予断を許さない状況が続いている。


「大和葉君、今手空いてますか? 少し作業を手伝って欲しくて」

「ああ了解です」


 時刻は既に辺りが暗い二十時頃。この日はまだ何も口に入れてなかったからか、腹が鳴ってしゃーない。


「暫くはこの地に留まることになるでしょう。勝利したとはいえ部隊はかなり疲弊しています……もし、次に敵の攻勢があれば一瞬にして同地を取り返されてしまうぐらいには余力がありませんからね……」

「南北の部隊が負けたって聞きましたしねぇ……最悪挟み撃ちにされる可能性もあるのか……」

「正直かなり厳しい状況になってしまいました……そんな中、新兵で最前線を五体満足で生き残る君は凄いですよ」


 まぁそれはそうだと思う。ぶっちゃけ只のミリオタサラリーマンがこんな大戦で生き延びれるとは思ってなかった。なんならこの作戦で死ぬとさえ思ってた程。先の戦いの記憶がなんか霞んで見えるし。


「いや、運が良かっただけですよ多分」

「いや、そんなことも無いぞ新入り!」

「うお、びっくりしたー」


 赤松中佐と話していたら後ろから急に坦大佐が肩を組んできた。

 てかクセェ! 酒くせぇんだがまた飲んでるのかこの人は。


「大佐……また飲みましたか。いい加減戦闘後に飲む癖止めてください、そろそろ上層から言われますよ」

「知ったこっちゃねぇよんなもん。それよりいいか新入り、運も戦場では重要な要素になるんだよ」

「は、はぁ」

「運はな、大和魂を操れる前段階になるんや。お前がその心に大和魂を宿した時、晴れて一人前の日本男児に成るっちゅう訳や。ハッハッハ」


 うーん全く以て訳分からん根性論だ。そんな無茶苦茶な論理が罷り通るならこの戦争も既に終わってそうなものなんだがな。

 取り敢えず腹が減り過ぎて倒れそうなので、さっさと手伝いを済ませてこの場を離れたい。


 ● ● ●


「ありがとう、大和葉君。もう戻ってもらって構わない」

「はー疲れた。お疲れ様です」

「よぉく休んどけよ~新入り」


 私……赤松蓮は、坦大佐と共に作業を手伝ってくれていた大和葉君と別れた。


「なぁ赤松、彼奴の事どう思う」

「急ですね……んーそうですねぇ、私が部隊の人間全員を把握出来てるわけでは無いので一概には言えませんが、少なくとも最近の人間にしては骨があるように思えます。まぁ運もあるのかもしれませんが」

「そうだ、確かに運もあるかもしれんが彼奴は屈強な精神力がある。地下で戦闘した時の事覚えてるか?」

「あー必死だったのであまり」

「あの時、彼奴の目には煮え滾るような炎が宿っとったんや。あの力が恐怖からか敵への憎悪からなんかは分からんが、あれは相当な覚悟をもった腹の括り方をせんと出せん形相やと、俺は思った」


 確かに、部隊の人間からもちょくちょく彼の活躍が耳に入っていたし、私自身もその姿を何度も目撃していた。

 しかしながら最近は疑問も生まれるようになった。何故あれ程の逸材がここにきて頭角を現し始めたのか、一体いつこの隊に配属されたのか……あるいは敵の諜報員か?!

 考えれば考える程分からなくなってくる。まぁ今は何も無いから気にしなくてもいいのかもしれないが。


「期待の新人って事で可愛がってあげたらいいんじゃないんですかね」

「そうだなぁ、今はたーんと可愛がってやろうか。ハッハッハ」

「冗談です真面目に指導してあげてください、期待の新人なんですし。てかいい加減酒飲むの止めてください」

「そんなん言うならお前が指導しろよ、仲良さそうだし」

「お言葉ですが坦大佐、私一旦本土に戻る予定でして」

「おお、そうなのか。えー俺の右腕としてもう少し居てくれよ~」

「あー残れたらね、残りますよ。でも私も私でやらなければならない事があるんで」

「まぁならしゃーないかぁ」

「そういうことなんで、一旦本部に電報を送ってきます」

「おうよー」


 ● ● ●


「上官! 振国(ブルビッシュ)の方から再度入電! 赤松中佐からです」

「赤松か、なんと?」

「――……」

「……またか、何度言えば分かるんだ一体…………そう言えば、あの例の人間が所属していたのも赤松の部隊だったか?」

「あーどうでしたっけ」

「そうだな……ふむ、赤松に電報を送れ」


 ● ● ●


 三月二十八日 五時頃。


「大和葉君? 大和葉君は居ますか?」

「あ、はい! どうされましたか? 赤松中佐」


 早朝、日記を書いていたところに赤松中佐がやって来た。


「すいませんね突然、急ではあるんですが我々二人本土に戻ることになったんですよ」

「ほ、本土に?」

「ええ、私は用事があるんですが大和葉君はどうやら呼び出されてるみたいで」

「よ、呼び出しぃ?」


 えぇ、なんか怖いなぁ。なんかやらかしたっけな? 


「この後直ぐに車で東の方に移動した後、飛行場で輸送機に乗り換えるので。準備の方お願いしますね」

「ああ、りょ、了解です」

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