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4.

ロヴィーサに話しかけられたこともあってか、それまでミルカを遠巻きにしていた高位貴族の子息令嬢たちも数人話しかけてくれ、魔法学園の初日は上々の滑り出しを見せた。これから同じクラスでやっていく以上、クラスメイト達との関係は良好なほうがいい。同じクラスの悪役令嬢からの当たりが強めなのは気がかりだけれど、学年が一つ上のロヴィーサの寄り子になっていれば表立って何かしてくるということもないだろう。ミルカはようやく肩の力を抜き、教室をあとにした。


入寮の手続きを終え、部屋で荷物を確かめてから、監督生の先輩への挨拶もそこそこにミルカは寮を出た。今日はダールアイアー侯爵家への顔見せを兼ねた夕食会があるのだ。入学前に侯爵とは会っているが、入学準備を優先せよとのことで家族との対面は入学式の夜までずれ込んだのである。このあたりはゲームの事情と同じであり、ミルカが焦ることも特になかった。

寮の前にはすでに迎えの馬車が来ており、朝も迎えに来てくれた御者が同じように出迎えてくれた。

「お待ちしておりました。どうぞお乗りください」

エスコートを受けて馬車に乗ると、朝と違って車内にはメイドが乗っていた。ミルカに頭を下げ、

「お初にお目にかかります、ミルカ様。ダールアイアー家メイドのアリスです。ミルカ様の身の回りのお世話を担当いたします」

と名乗った。

「早速ですがお召し物を変えさせていただきますね」

馬車には魔法がかかっているのだろう、動いていてもほとんど揺れることはない。ミルカはアリスに手伝ってもらいながら、貴族が着る重たいドレスに着替え、顔にも華やかなメイクをされた。


魔法学園に通う生徒はほとんどが貴族の子女である関係から、学園は貴族街の外れにある。馬車は王宮に向かって走り、ほどなくしてダールアイアー家のタウンハウスに到着した。

御者にエスコートされながら馬車を降りたミルカを、家令が出迎えてくれる。

「ミルカ様、ダールアイアー家にようこそいらっしゃいました。皆様お待ちでございます」

「ありがとう。えぇっと…」

「申し遅れました、私は家令を務めておりますバルトルトと申します」

「ありがとう、バルトルト。これからよろしくお願いします」

平民相手だからか少し態度がくだけているような気がするが、ミルカは目をつぶってバルトルトの案内のもとタウンハウスに入った。


廊下を歩いていると、向こうから若い男性が歩いてくるのが見えた。ミルカは背筋をまっすぐ伸ばすよう意識して歩く。男性はそのまま近づいてきて、バルトルトに話しかけた。

「バルトルト、その娘が例の?」

「はい、こちらがミルカ様でございます。ミルカ様、こちらは長男のディートリヒ様でございます。ご挨拶を」

家の中で家令に挨拶を促された場合は、相手が名乗っていなくても身分が下の者から自己紹介をすることができる。バルトルトに挨拶を促されたので、ミルカは一礼して名乗った。

「ミルカと申します。本日魔法学園に入学いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」

「ダールアイアー侯爵が長男、ディートリヒだ。ミルカ、これからよろしく」

ディートリヒと名乗った男性はあまり表情を変えることなくそう言った。

ディートリヒ・ダールアイアーは攻略対象の一人である。本来のゲームではヒロインが二番目に出会うキャラである。エーミール第一王子の側近兼宰相補佐として王子の王宮における仕事と宰相である父親の仕事の補佐をしている仕事人間で、冷静沈着な雰囲気を漂わせる男だ。

「ミルカは親元を離れて我がダールアイアー家の一員となったわけだが、不安はあるか?」

おそらくミルカを案じてくれているのだろうが、ディートリヒは表情を変えることなくそう言った。

視界に選択肢が出現する。


《「いえ、ダールアイアー家の皆様がいらっしゃいますから、不安などありません」》

《「少し心細い気持ちはありますが、私は一人ではありませんから」》


特に選択肢は変色していない。ミルカは迷わず好感度アップ選択肢を選んだ。

「少し心細い気持ちはありますが、私は一人ではありませんから」

「そうか。これからは家族となるのだから、不安や悩みがあれば適宜相談するように」

「はい、ご配慮くださりありがとうございます」

ディートリヒは軽くうなずき、向こうへと歩いて行った。

(しかし、選択肢の違い、微妙なニュアンスだよなあ)

ミルカはそう思った。ゲームの際は気づかなかったが、好感度アップ選択肢とそうでない選択肢の違いはとても小さいものもある。選択肢が実際に表れているからいいものの、自分で考えて会話をしていれば微妙な表現の違いが好感度に大きく影響していたかもしれない。

攻略対象以外との会話や、攻略対象との会話でもイベント以外の会話は選択肢ではなくミルカが自分の意志で行っている。言葉の選び方には気を付けよう、と思うミルカであった。

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