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三十八、ペンダント


 大地を揺らす轟音と共にセリカは目を覚ました。

 突然の地揺れに身体を縮め、状況が全くわからず身体を縮めこませた。

 セリカは恐怖に怯えながらも思考を巡らす。昨夜、賢者シャルロットが言った言葉が頭をよぎった。


 まさかそれが可能な覚醒者が魔王軍に居るなんて。


 激しい揺れが収まった。しかし小さな揺れが続いている。

 セリカはベッドから飛び出し急いで身支度を整えた。

 部屋は小さく揺れ、家具などが今も揺れている。しかし今は恐怖に怯えている場合ではない。セリカは勇気を振り絞り、部屋から出た。


 隣で寝ているであろう、ガガオとゴードンに声をかける。


「ゴードン、ガガオ! 起きてる?」


 セリカは返事も聞かず、二階廊下にある窓を目指した。

 セリカの目の前にいつもと変わらない青空、しかしその目には異質なモノが映っていた。


「魔人……キュルプクス……!」


 セリカが窓からそれを確認した時には、既に街は混乱状態になっていた。

 

 通りを行き交う人々は異形なその姿に恐れおののき、悲鳴と逃げ惑う声でかき消されたギルバインの平穏な朝。

 まだ早朝と言ってもギルバインの朝は早い、既に多くの人々が通りを歩いていた。

 しかし突然現れた魔人キュルプクスによって地面は激しく揺れ、その異形の姿を目撃した人々は、ただその異形な者から逃げ惑うしかなかった。

 買い物途中なのか女性は手に持った籠を落とし拾うことなく魔人から逃げ、馬が暴れそれをいさめる事無く逃げ出す商人、近所で遊んでいた子供はその恐怖にただ固まっていた。


 高い城壁に囲まれたギルバインの街。

 しかしその壁をも超える魔人の姿、これに恐怖しない者は居ない。


 セリカもその一人だった。しかしセリカは事前に魔人キュルプクスの存在を知っていた。それだけが救いと言える。

 セリカは昨日、ミルキィから渡された小さなペンダントをポケットから取り出しそれに話かける。


「ミルキィ、聞こえる?」

「はい、セリカ様。現れましたか」


 ペンダントからミルキィの声が聞こえる。

 セリカはミルキィとの会話が可能な事を確認し、ペンダントを首からかけた。

 ミルキィから渡されたペンダントには小さな青い魔石がはめ込まれており、その魔石の効力で互いの会話が可能となっている。


「ええ、昨日シャルロットさんが言っていたAランク冒険者のフィリザードさんの予測通りになったわ。ミルキィは今どこに居るの?」

「私は今ザーハ様のところに居ます」

「そう、それも予定通りね」

「はい、フィリザード様とお会い出来ましたら、ペンダントを差し上げてください」

「わかったわ」


 セリカはそういうと、窓の向こうに見える魔人キュルプクスを睨みつけた。

そんな矢先、ガガオとゴードンが部屋から出て来た。


「ガガオ、ゴードン。昨日シャルロットさんが言っていた通りになっている」

「ああ、まさか昨日の今日来るとは思わなかったぜ」

「全くだ。深酒しなくて正解じゃった」

「ミルキィからもらったペンダントはあるね?」


 セリカのその言葉に、二人は頷いた。

 二人はポケットから小さなペンダントを取り出し、首からかける。


「ミルキィ、俺がガガオだ」

「ゴードンじゃ」

「はい、お二人ともありがとうございます」


 ペンダントを通じてミルキィの声が聞こえる。

 その間も小さな揺れが続いている。


「畜生……魔王軍め……俺らの街を好きにさせねえぞ」


 ガガオは窓から魔人キュルプクスを見上げた。

 魔人キュルプクスはゆっくりとギルバインの街に近づいてくる。その巨体さからか距離感がわからない程。

 セリカはガガオのその力強い言葉に不思議と笑顔が零れた。


「昨日の及び腰は一体どこへ行ったのやら」

「馬鹿、俺だってこの街で何年も生きて来たんだ。俺の弓の技、見せてやる」

「では、各自昨日の打ち合わせ通りにお願いします」

「わかったわ。ミルキィはどうするの?」

「私は、魔人キュルプクスの足を止めます。これ以上魔王軍の好きにはさせません」


 ペンダントからミルキィの力強い声が聞こえた。

 三人はそれぞれの顔を見合わせ、それに答えるように強く頷いた。


この度はお読み頂き、本当にありがとうございますm(*_ _)m


ブックマーク、レビューやいいね、ご評価、ご感想等頂けますと大変励みになります。


レビューや感想が面倒であれば、いいねや評価だけでも作者は大喜びで部屋を走り回ります笑


皆様が面白いと思える物語に仕上げて参りますので、これからもどうぞよろしくお願い致します。

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