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二十四、青い閃光

 ミルキィは異常な身体の重さを耐えられず、両手に地面をたて必死にその重さを支えた。


「これがあなたの覚醒能力……!」


 ミルキィはその重さに耐えられず、地面に倒れこんだ。


 倒れこんだミルキィはステインを見上げる、しかしミルキィは重くなる頭部を支えきれず再び地面にめり込んだ。

 昨夜から朝にかけてひり続いた大雨によりぬかるんだ地面がミルキィの身体を沈み込ませる。

 ぬかるんだ地面に伏せたことにより、ミルキィの身体は泥にまみれた。


「そうだ、これが私の覚醒能力。常識を超えるゴーレムのお前と言えど、その重さには身動きひとつとれまい」

「信じられない事ですが、これが覚醒能力というモノなのですね」


 ミルキィは立ち上がろうとするも、その身体は計り知れない重さにより全く身動きが取れなかった。

 しかしミルキィはその動きを止めようとせず、ステインに右手を伸ばしはじめた。


 その動きは非常にのろく幾度となく地面をついた。


「ギルバインの街で見せたという指を飛ばす攻撃か。そうはさせん」


 ステインは両手剣を構え、ミルキィの右手を両断した。切り離されたミルキィの右手をステインは蹴り飛ばし、ミルキィの身体から遠ざけた。


「ミルキィ!」


 ミルキィを見守っていたセリカはたまらず叫んだ。


「所詮ゴーレムだな、私に敵うと思っていたのか」


 ステインはミルキィの左手側にも歩み寄り、残る左手も切断した。ステインはそれも蹴り飛ばし、ミルキィから遠ざけた。


「安心しろ、すぐお前のマスターもあの世に送ってやる」

「セリカ……様……!」


 ミルキィは失った両腕を使い、立ち上がろうとした。しかし短くなった両腕ではその巨体を支える事が出来ず、再び地面に倒れこんだ。


「無様だなゴーレム、お前は素直に魔王軍の一部となれば良かったのだ」


 ステインはミルキィを蹴り上げ、仰向けにさせる。


「とどめだ」


 ミルキィの重いボディに足をかけ、ステインは両手剣をミルキィの頭部目掛けそれを構えた。


「助かりました。仰向けでないと、これが出来ませんでしたので」

「な……なに……?」


 ミルキィの頭部に位置していた、球体の中心が青く光った。青く光るそれは球体に吸い込まれていく。


 刹那、細く青い閃光がステインの右手を貫いた。


 右手を貫いた閃光はステインの兜をも貫き、兜を破壊した。


 放たれた光はステインの右手を貫き、ステインが悲鳴をあげる。


「ぐ!」


 ステインはたまらず剣を落とした。手から零れ落ちた両手剣がぬかるんだ地面に沈む。ステインの右手からは鮮血が飛び散った。飛び散った鮮血はあたりを赤く染め、地面を彩った。


「右手を貫きました。これであなたは剣を握る事は出来ません」


 ミルキィは静かに立ち上がり、ステインを見下ろす。


「あなたの能力の解除が確認出来ました。あなたの能力はその手で触れたモノを重くする能力のようです」

「ぐ……それがわかったと事で私に勝ったつもりか……」


 ステインは右手の痛みに苦しみながら蹲った。


「はい、あなたにこれ以上の戦闘行為は不可能と分析します。私のトライニウムビームによってあなたの右手を貫きました。手には無数の動脈が存在します。早く手当てをしなければ失血死に至ります」


 その証拠にステインの右手からは夥しい量の血が滴り落ちる。左手で止血を試みるも滴り落ちる血の量は変わらない。

 ステインは痛みに耐えながら、ミルキィを見上げた。


 ミルキィの閃光に破壊された兜が、割れステインの素顔が現れた。


「やはり、ステインあなたは女性だったのですね」


 割れた兜が地面に落ちる、兜か現れたのは銀髪の女性だった。

 長く伸びた耳、風に靡く長い銀の髪、その表情は苦痛に歪んでいるものの、切れ長の眼に筋の通った鼻、薄紅色の唇からは吐息が漏れる。


 兜を破壊する際に、ミルキィのビームはステインの額も掠めていた、その額からは血が流れていた。


「兵を連れて撤退してください、手当てをすれば助かる命です」

「私を愚弄する気か。止めをさせ!」

「ステイン様……!」


 ステインとミルキィの戦闘をただ見ていただけの騎兵の一人がステインに駆け寄る。


「これ以上無駄な血を流す事もありません。あなたは馬車の中でセリカ様への侮辱を心から嫌っておられました。そんなあなたが何故魔王軍に加担するのかはわかりませんが、私にはあなたが悪人だと思えません」


 ステインは目を見開き、ミルキィを見た。


「わ、私が悪人じゃない……だと」

「はい」

「貴様、正気か……」

「はい」


 ミルキィはステインを見つめ、不思議そうに首をチョコンと傾げた。


「ふふ……ははは!」


 ステインは空を見上げ笑った。そして騎兵に目をやり、冷たい目で言った。


「――帰還する!」


 騎兵はステインの身体を支え、馬へ乗せた。ステインは苦痛に歪むその目でミルキィを見た。


「レプロスはアーデルハイド公国の特級技師。覚醒者の研究をしていた人物だ。未覚醒の人間を強制的に覚醒させる実験を行っていた」

「アーデルハイド公国の特級技師、覚醒者の実験」

「そうだ、レプロスはその実験の総責任者だった人間だったと聞いている。しかし実験は失敗に終わり、レプロスとその研究は闇に葬られた。十年以上前の話だ。今生きていれば相当な高齢だろう。私が知っているのは、ここまでだ」


 ステインはミルキィの姿を見て、少し笑った。


「覚醒者の研究をしていた人間が、お前のようなゴーレムを造るとは、一体どういう風の吹き回しだ」


 馬は静かに森へと歩みを進める、傍に居た騎兵はステインを支えながら歩いた。

 周りに居た騎兵もそれに続き、巨大な狼たちもステインに続くようにゆっくりと歩いていく。


 次第に森はその姿を隠していった。


この度はお読み頂き、本当にありがとうございますm(*_ _)m


ブックマーク、レビューやいいね、ご評価、ご感想等頂けますと大変励みになります。


レビューや感想が面倒であれば、いいねや評価だけでも作者は大喜びで部屋を走り回ります笑


皆様が面白いと思える物語に仕上げて参りますので、これからもどうぞよろしくお願い致します。

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