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二、私の名前はミルキィ

「おはようございます」


 球体が突然喋りだした。驚きを隠せない三人。


特にセリカはその球体を手に持っていた。

正直今でも放り投げたい気分だが、何が起こるかわからないため、身体を固くなっている。

 

 人語を喋る球体?セリカは混乱した、このランデベル大陸でも生まれ育ったエルフィ大陸でもこんな物体を見たことはない。何か新しい魔法か何か。

 混乱しつつもセリカはゴードンとガガオに目をやる。ゴードンはポカンと口を開いたまま小さな目でセリカが持つ球体を凝視している。一方のガガオは相変わらずかなり離れた距離で顔だけを出しこちらの様子を伺っている。

 

「私、どうすればいい?どうしたらいいの?喋る機械なんて聞いたことないよ、これは魔王軍のモンスターか何か? いや、それだったら呑気に挨拶なんてしてこないよね。何何、何なのこれ!」

 

 セリカはまくしたてるように独り言を呟いた。


 ゴードンに目で助けを呼ぶ、しかしゴードンは変わらず唖然としている。とてもじゃないが助けてくれそうにないとセリカは思う。

 ガガオ…、あいつじゃダメだ…。見えない程遠い、とても助けてと呼んでも絶対に来ない気がするとセリカは思った。


「リトルミス、ではありませんね。どちら様でしょうか」


 混乱するセリカを無視するかのように、再び球体がセリカに話しかけて来た。


 長い沈黙、時間が止まったかのような感覚、時間にしてほんの何秒でもないが当の本人たちにはかなり長く感じたことだろう。


「セリカ……私はセリカ」


 セリカは勇気を振り絞り、球体に向かって自分の名前を言った。


「これは失礼しました、私の名前はミルキィ。ミルキィと申します。ここはどこでしょうか」


 喋る球体に驚きを隠せないものの、盗掘どころではない三人はとりあえず廃墟を後にすることにした。

その間もミルキィと名乗る球体は質問を投げかけてくるものの、喋る球体に受け答えをすることもなく、ただ黙って街道までの森を歩いた。


「レプロス博士はどちらでしょうか」


「リトルミス、マーリーはどこへ行かれたのでしょうか」


と質問攻めにあったため、セリカは慌てて球体のスイッチを切った。



 ミルキィと名乗る球体を持ちセリカは一人歩く、スイッチは切っているためまた喋りだすことはない。少し離れてゴードンとガガオがついてくる。ガガオは訝しげな表情でゴードンに話しかけた。


「なあ、おっさん。何だいあれは。喋るモンスターか何か?」

「いや、わしもあんなもの見たことも聞いたこともない。長年ランデベル大陸とワーファ大陸を行き来しているから大概のものじゃ驚かない自信はあったがあれには驚いた」


 ゴードンは歩きながら口元から伸びた髭を撫でる。


「ありゃもしかしたら、相当レアなものかもしれない。何度もゴーレムやホムンクルスなどの類は見たことある。しかし奴らは命令に従うだけだ。自分から喋ったりはしなかった。片言なら喋るやつも見たが、あくまでも命令の繰り返しだ、本当に簡単な単語だけ。近所に住むガキの方が頭いいくらいだ。あそこまで流暢に喋るものは見たことない。いやしかしさっき言ったレプロス博士……どこかで……」


 ゴードンはうーんと首を傾げながら必死に思い出そうとしているようだ。


 さしものゴードンですらわからないとなると自分の知識なんて役に立たない、ガガオはそう思った。ドワーフはエルフと並んで長命の種族、ヒューマンである自分よりも遥かに長い時間を生きている。もしかしたらそのレプロス博士という人間?に出会っていたのかもしれない。そこでガガオは考えるのを止めた。


 しかしゴードンは考える、ギルバインの市内でもない、鉱山からかなりの距離がある。近い道といえば鉱山から市内へ続く街道だが、そこからもかなりの距離がある、こんな森深くまで足を運ぶ奴そういない。

 あの球体、レプロス博士、マーリーという名の女、何か秘密が隠されている、ゴードンにはそんな予感がする。しかも飛び切り危険な。


 ゴードンは早めに売りさばいて金にした方が良さそうだと考えた。


「よう、おっさん。さっきから黙り込んで柄に似合わず静かじゃねぇか。あの石ころの話、なんか思い出したのか。」

「いや、思い出せん。しかし……」

「しかし?」

「ガガオよ、お前さんはどう思うね。あれ」

「俺かい?」


 ガガオも首を傾げた。


「その筋のコレクターなら高値で売れそうだ。しっかし気色悪いもんだ。喋る機械ってのは。古代文明の何かなのかね」

 

 古代文明、このランデベル大陸だけではない、隣り合わせのワーファ大陸、エルフが住むエルフィ大陸にも古い遺跡が存在する。過去の古代文明があったとされる。


 古代人はその発明した超科学でお互い滅んだとされている、それが古代戦争。

 何千年もしくは何万年前の出来事なのか、殆どその機能は失われ近年は魔王軍の出現により遺跡は魔王軍の居城になったものも存在しているため、各国が立ち入り禁止区域に指定している。


 古代戦争の遺産。

 それがゴードンの頭を過った。



 街道へ出た三人はギルバイン市内へ続く道を歩き出した。時折セリカが喋りかけて来たものの生返事で返すゴードン。

 生返事を繰り返すゴードンに呆れたセリカは、ガガオとまたくだらない口論をし出した。いつもの風景。


 そして市内に入り宿に着いたときにはすでに日が暮れていた。


 街道は夜でも賑わいを隠さず、冒険者仲間と出会う事もあった。


 ギルバイン鉱山までの護衛。セリカたちが受けた今回の依頼だった。街道を馬車と一緒に歩くだけで実に簡単な依頼だった。


 その帰り道、不思議な球体を拾う事になった。


 エルフのセリカをリーダーとする冒険者パーティ、力自慢と商人ギルドに顔が広いゴードン、口八丁で陽気な弓使いガガオ、回復魔法や補助魔法はないものの、そんな危険な依頼は受けられない。結成してもう一年になった。しかしCランク冒険者から抜け出す功績が得られず今に至っている。




 魔王ギデオンが現れたのは十年前、突如として現れた魔王ギデオンは世界各国へ宣戦布告。ギデオンは手始めにワーファ大陸にある小国エブレールを陥落させた。

 エブレールは小国ではあったものの、古代遺産が多く存在する古代文明遺跡に構えた軍事国家だった。各国の中でも強力な軍事力を持ち、それを抑止力にした強国であった。


 宣戦布告から数日でエブレールが落ちた。それはゼレントに住む人間のすべてが恐怖する結果だった。魔王ギデオンはそこからもランデベル大陸、エルフィ大陸の遺跡を中心に構える国家を陥落させていった。


 世界各国も黙ってみている訳でも無かった。ランデベル大陸に構えるアーデルハイド公国は各国と協定を結びギデオンの居城エブレールに進軍した。しかし結果は大敗。魔王ギデオンは戦力の差は歴然としアーデルハイド公国とその各国に対し割譲を求めた。しかし各国はこれを拒否。世界連合軍と魔王ギデオンとの交戦は十年経った今でも続いている。


 三つの大陸の各所に存在した遺跡、それらを魔王ギデオンは居城とした。ランデベル大陸には四天王が二人、ワーファとエルフィに一人ずついる。何百人もの冒険者が魔王ギデオンとその四天王に立ち向かった。しかしいずれも倒したという話が出ることはなかった。


 魔王ギデオン出現から早十年、現在は膠着状態が続くも、世界は静かにそして確実に魔王ギデオンの手は忍び寄っていた。


この度は私の物語をお読み頂き、本当にありがとうございますm(*_ _)m


レビューやいいね、ご評価頂き、またご感想等頂けますと大変励みになります。


レビューや感想が面倒であれば、いいねや評価だけでも作者は大喜びで部屋を走り回ります笑


皆様が面白いと思える物語に仕上げて参りますので、これからもどうぞよろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 都市や国家のネーミングセンスが良いので同じ創作者として、物凄く参考になりました! 国家間の説明や流れる戦略も良き……。
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