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年末年始がバタバタすぎて異世界のことを考える余裕がなかったので、現代物で息抜きに書いてみました。
本日12時、21時にも更新します。
すこしでもお楽しみいただければ幸いです。
「その髪すごく似合ってるね。短い髪の女の子って俺好きだな……」
生まれつきだという明るい茶色の髪を短く整え、日に焼けた健康的な頬をうっすらと染めた隣の席の彼は人好きのする笑顔を浮かべてそう言った。
窓から吹き込んだ風が昨夜、姉に切ってもらったばかりの髪を揺らして頬をくすぐる。
わたしは思わず赤くなった頬を隠したくて髪を払う振りをして手で顔を隠した――。
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「俺にそんなこと言うの、お前ぐらいだ……変な奴」
人より高い身長と恵まれた体格に見合った大きな手がわたしの頭に乗せられた。少しだけ力のこもったその手に従いうつむくけど、気になって視線を上げれば、彼は照れたような、困ったような顔でこちらを見下ろしていた。その目は初対面では鋭い目で睨むばかりだったのに、今ではとても優しい。
その耳がほんのりと赤く染まっているのを見て、なんだか見てはいけないものを見てしまったような、彼の弱さを改めて見てしまったような気がして頬が熱くなる――。
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「俺を本気にさせたこと、後悔しても遅いよ」
甘い顔立ちにかかる眺めの金髪をかき上げた手がそのままこちらへ伸びてくる。言葉は少し乱暴なのに、わたしの頬に触れる手は少し震えていた。
女の子に触れるのなんて慣れているはずの彼が、こんなに指先を冷たくして。緊張がその手から伝わってくるようだった。
ああ、この人はきっとどこまでも純粋で、まじめな人なんだと再確認をしながら、その手に自分の手を重ねてほほ笑んだ――。
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「君には情けないところばかり見られているな。……いや、君にだから見せられるのか」
シルバーフレームの眼鏡を押し上げた指先が困ったように怜悧な顎をなぞる。
彼がなにか考えるときのその癖を知っているのは、きっと片手の数にも満たない。
学校での立場や、ご両親からの期待、何かと忙しい彼の思考が今だけはわたしでいっぱいになっている証拠。
嬉しくて、幸せで、どんな彼だって受け入れてみせる、そう改めて思った――。
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「ねぇ先輩、僕のこともっと可愛がって? あなただけの僕なんだから」
ミルクティーみたいな柔らかな髪を揺らして首をかしげる。可愛らし顔に甘えたような表情を浮かべているけれど、その目はまっすぐにわたしを射抜いていた。
まるで拒否することなんて許さないとばかりの視線に、思わず苦笑が浮かんでしまって彼はむっと眉を寄せた。
そんな顔で、そんなことを言わなくても、離れたりなんてしないのに――。
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「頑張ってる君を見ると、俺も頑張らなきゃって思うんだ。だから、これは君のおかげ」
そう言って見せてくれた合格証を奇麗にしまい直し、改めて向き合った彼はいつも通り穏やかで優しい笑顔を浮かべているけれど、その頬がいつもより少し強張っていた。緊張している?
大人で何事もスマートにこなす彼には珍しい表情。まるで内緒話みたいにわたしの耳元でその理由を教えてくれた彼が、苦笑しながら赤くなった頬をかいた。自分の頬もきっと同じ色に染まっている――。
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えっ、背中痒い。